日本教育工学会論文誌
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43 巻, 2 号
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論文
  • 佐久間 大, 高石 哲巳, 今井 智貴, 長谷川 勝久, 室田 真男
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 43 巻 2 号 p. 91-103
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,模擬授業内の出来事や状況を,実際の授業の状況に近似させることである.上記の目的を達成するため,児童生徒役である大学生の演技を補助する児童生徒のイメージカードを用いた模擬授業をデザインした.(1)これを教職志望者が参加する授業に取り入れて実践し,臨場感に対する主観的評価を得た.(2)さらに本研究でデザインした模擬授業で起こる模擬状況が,実際の授業の状況とどの程度近似していたかについて現職教員8名の評価を得た.分析の結果,本研究でデザインした模擬授業で得られる臨場感が,中位校を想定した模擬授業においては,従来型の模擬授業のそれよりも高く,実際の授業に近いものであることがわかった.また,教師役,児童役の両者にイメージカードを配布する模擬授業デザインの臨場感が,中位校を想定した模擬授業においては,児童役のみにイメージカードを配布する模擬授業デザインのそれよりも実際の授業に近いことが明らかになった.

  • 木村 充, 舘野 泰一, 松井 彩子, 中原 淳
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 43 巻 2 号 p. 105-115
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,大学の経験学習型リーダーシップ教育における学生のリーダーシップ行動尺度を開発し,尺度の信頼性・妥当性を検討することを目的とする.経験学習型リーダーシップ教育とは,経験学習を理論的基盤として行われるリーダーシップ教育のことを指す.先行研究や予備調査に基づいて54の項目案を作成し,リーダーシップ教育を国内で大規模に実施しているA 大学の学生156名(Time1)および110名(Time2)を対象に調査を実施した.因子分析の結果,リーダーシップ行動は,「率先垂範」「挑戦」「目標共有」「目標管理」「成果志向支援」「対人志向支援」の6因子によって構成された.さらに,項目を精選し,30項目からなる尺度を作成した.開発した尺度の信頼性及び妥当性の検討を行った結果,概ね良好な値が得られた.

    Editor's pick

    2020年論文賞受賞論文

  • 寺尾 香那子, 中谷 素之
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 43 巻 2 号 p. 117-125
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,学習者が教師の教育活動に対する内発的動機づけを認知することで,学習活動に対する期待を形成し,その期待が学習者自身の内発的動機づけに影響するプロセスを検討した.研究1(実験室実験)では,大学生53名を対象に,教師が知識や概念を教える学習活動を実施した.t 検定と分散分析の結果,教師が高い内発的動機づけをもつと認知した参加者は学習に対する期待を高くもち,期待を高くもつ参加者は学習内容に対する内発的動機づけが高いことが示された.研究2(短期縦断調査)では,大学生158名を対象に質問紙調査を実施した.パス解析の結果,教師の教育活動に対する内発的動機づけの認知が,学習活動に対する期待を高め,その後の学習内容に対する内発的動機づけに影響するプロセスを支持する知見が得られた.本研究から,教師の動機づけが学習者に伝達するプロセスが示唆された.

教育実践研究論文
  • 社会とキャリアの関連性に着目して
    福山 佑樹, 見舘 好隆, 藤本 徹, 浅見 智子
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 43 巻 2 号 p. 127-138
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,変化の激しい現代社会におけるキャリア形成に資するために公立大学のキャリア関連科目において,未来の仕事を創造する学習カードゲーム「ジョブスタ」を大人数講義用に改変した教材を用いた実践を行った.実践の結果,大学生が身につけるべきキャリア資質として定義した5項目のうち,「キャリアに対するプロアクティブ行動」には有意差がみられなかったが,「キャリア計画性」など4項目について実践の事前・事後において有意差が確認された.また実践では,大学生の多くみられる「やりたいこと志向」を超えて,仕事を選ぶ際に「社会的な視点」が必要であるという意識を含んだキャリア観を一部の学生に与えた可能性が示された.

  • 川上 祐子, 向後 千春
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 43 巻 2 号 p. 139-149
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    [早期公開] 公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,在宅看護論の看護過程の授業において,Team-Based Learning(TBL)の方略を用いた場合,協同作業に対する認識が批判的思考態度に与える影響を検討した.在宅看護論を受講する看護大学生170人を対象に,単元の授業開始前と授業終了時に協同作業認識尺度,批判的思考態度尺度の質問紙調査を実施したところ,「協同効用」「論理的思考への自覚」「探究心」「客観性」が向上した.また,交差遅れ効果モデルを用いて概念間の因果関係を検討したところ,受講前に「個人志向」の認識が高かった学生は,受講後に「客観性」と「証拠の重視」を高めることが示された.一方,受講前に「協同効用」に良いイメージを持っていた学生は,実際にグループワークを行っても批判的思考態度が高まらなかった.そのため,「協同効用」に良いイメージを 持っていた学生であっても,グループワークにより批判的思考態度が高まるような授業改善が必要であると示唆を得た.

  • 高校数学を対象として
    太田 絵梨子, 山野井 俊介
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 43 巻 2 号 p. 151-165
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    [早期公開] 公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    学習する際,暗記や反復のみに頼るのではなく,「なぜそうなるのか」といった意味を理解することが重要とされる.とりわけ高校数学のように複雑化した内容の場合,授業時間だけで理解するのは困難であることから,授業外学習も含めた学習サイクル全体を通じて意味理解を促す必要があるだろう.本研究の目的は,授業と連動させる形で,公式や定理が成り立つ理由の説明を促す宿題を開発し,学習成果との関連や学校現場における実行可能性について検討することである.実践にあたり,(1)各授業で理解すべきポイントの明確化,(2)授業と宿題における説明活動の連動,(3)丸暗記や丸写しを防ぐ課題設計の3点を工夫した.実践の結果,学級全体としては介入の効果が認められた一方で,一部の生徒には介入の意義が伝わらず,学習成果につながらなかったことが個別の事例から確認された.以上の結果を踏まえ,本研究の限界と今後の展望について考察した.

資料
  • 立石 力斗
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 43 巻 2 号 p. 167-173
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,知的障害のある高校生を対象として概念地図法を用いた語彙指導を行なった.知的障害のある高校生への概念地図法の効果の検討と,指導方法の違いによる学習効果の差を検討することを目的とした.指導はプレテスト−指導前期−中間テスト−指導後期−ポストテストの順に実施した.指導前期では,対象生徒と指導者が交互に単語を記述する「交互記述」を行なった.指導後期では,対象生徒が記述した単語同士を関連づける「グループ化」を行なった.各テストでは,同一のテーマによる概念地図作成を行い,記述単語数および記述形態の変容について分析を行なった.指導の結果,プレテストから中間テストでの比較から,「交互記述」には記述単語数の増加する効果が認められた.中間テストとポストテストの比較から,「グループ化」には記述形態が高次な型へ変容する効果が認められた.

  • 大学生の日常およびキャリアに対する有用性に着目して
    解良 優基, 三和 秀平
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 43 巻 2 号 p. 175-183
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    学習した知識や技能の有用性を考える有用性思考方略を測定する尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することを目的として,大学生108名に質問紙調査を行った.探索的因子分析の結果,日常生活における有用性を考える日常思考方略と職業上の有用性を考えるキャリア思考方略の2つの下位尺度が得られた.日常思考方略は日常的利用価値と,キャリア思考方略は制度的利用価値および実践的利用価値とそれぞれ高い相関が得られ,両者の弁別可能性が示された.また,有用性思考方略は自律的調整方略および精緻化方略と相関を示しており,学習内容を身近な物事と関連付けて考える方略と,動機づけを維持・促進する方略の両方の要素を含んだものであることが示唆された.さらに,有用性思考方略が利用価値認知を媒介し,興味に影響するプロセスも確認され,先行研究と整合する結果が得られた.以上より,尺度の信頼性と妥当性に関する証拠が複数の観点から確認された.

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