日本教育工学会論文誌
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論文
  • 保田 幸子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/18
    [早期公開] 公開日: 2021/02/22
    ジャーナル フリー

    研究成果を報告する科学論文では,「I やWe の使用は避ける」,「曖昧で冗長な表現は避ける」といったディスコースが推奨され,現在もアカデミック・ライティング授業や論文作成ガイドの中で指導されることがある.しかし,このアカデミック・ディスコースはいつどのように誕生したものなのか.なぜ特定の語られ方に権威が与えられるようになったのか.この権威は21世紀現在も変わらず固定的なものなのか.これらの問いについては国内では十分な検証が行われていない.本研究は,こうした通説を再考すべく,科学論文において客観性が求められるようになった歴史的背景とその後のパラダイムシフトを明らかにするとともに,21世紀型の科学論文において書き手がどのように読み手を導いているか,その主観性の表明技法を明らかにすることを目指す.得られた成果を元に,科学論文執筆に迫られた学習者層に対する21世紀型の高年次英語教育支援のあり方について提案する.

  • 青柳 尚朗
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 1 号 p. 15-29
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,社会的事象の本質を捉える思考の促進を目的に,中学校社会科で実験授業を実施し,その効果を検討した.学習内容を「具体的事実」「個別的本質」「普遍的本質」に構造化し,単元内に「複数の具体的事実を関連づけて共通点を探究する過程」「その社会的事象の持つ,他事象にも活用可能な性質を考察する過程」を組織した.その結果,複数の具体的事実を把握し,その共通点を探究することで個別的本質の理解が促進されること,そこで把握された個別的本質のうちのどの性質が近接領域の他事象にも適用可能かを検討することで普遍的本質の理解が促進される可能性が示された.上記の過程では,「①個人での多様な探究→②クラス全体での多様な思考の関連づけ→③そこで関連づけられた思考を生かした個人探究」という協同的・探究的な学習過程が組織され,①③で多くの情報を関連づけた生徒の中に普遍的本質の理解を達成する者が現れることが示唆された.

  • 川久保 アンソニージェイ太稀, 大島 純, 大島 律子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 1 号 p. 31-41
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/18
    ジャーナル フリー

    本研究は,知識構築活動における学習者のアイディア選択およびアイディア向上プロセスを抽出・分類し,高い学習成果に繋がる条件を明らかにすることを目的とした.PBL に参加した大学生のCSCL 環境での振り返りノートをもとに,対話の社会ネットワーク分析による名詞の次数中心性係数の推移の検討に加え,その時系列的パターンによる単語のクラスター分析を行なった.その上で,定量的分析を補完する教室での活動のビデオ記録の定性的分析を実施した.これらの結果から,学習成果を向上させる条件として,(1)アイディア選択時に発展可能性を考慮した有望性判断を行うこと,(2)一つのアイディアに固執せず複数のアイディアから選択すること,(3)アイディアとそれを裏付けるデータの整合性を取ること,が明らかになった.

  • 廣松 ちあき, 尾澤 重知
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 1 号 p. 43-65
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/18
    ジャーナル フリー

    組織業績と部下育成を両立するマネジャーを対象に,中堅社員の経験学習の促進と内省支援の把握を目的として半構造化インタビューを行い,M-GTA によって分析した.その結果,マネジャーは,仕事に関する展望と,部下育成に関する展望を統合した2~3年程度の中期的な計画にもとづき,PDCA サイクルに沿った業務マネジメントを進めていた.そして,そのマネジメントプロセスを通じて,中堅社員を組織が求める役割期待や当初の計画と,実際の行動や結果とのギャップに向き合わせていた.さらに,中堅社員の気づきが最も深まるタイミングを見逃さずに経験の意味づけを促す働きかけを行っていた.また,この働きかけは,マネジャー自身が能動的に内省し,自分のマネジメント行動の改善や育成の意味づけを深めることによって促進されていることがわかった.最後に,中堅社員の経験学習と内省支援を効果的に行うための効果的なマネジメントのあり方を考察した.

  • 河崎 雅人, 竹ノ谷 柊太, 松林 奈央, 森田 泰介, 林 友子, 杉本 信
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 1 号 p. 67-77
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/18
    ジャーナル フリー

    図形の大きさの比較判断にはU字型の発達曲線が見られることが指摘されているが,その理由や判断能力・判断方略の発達過程は未解明である.これまでの研究は同時期に異なる年齢の幼児を対象に調査したものであり,また,用いられている課題は2つの図形を提示し,大小を問うもので,発達過程の内実に関する知見が十分に蓄積されているとは言い難い.そこで,2017年度中に4歳になる幼児を対象に,3年間にわたって年2回,タブレット上に提示された図形より大きい・小さい図形を描く課題を用いて,判断能力・判断方略の変化を調べることにした.実施した調査から,提示された図形より大きな図形を描く課題では,横に着目し変化させるが,加齢とともに,横だけではなく縦にも着目し変化させることがわかり,U字型の発達曲線となる要因の一つとして,5歳は一方向から二方向に着目する変化の時期であることが示唆された.

教育実践研究論文
  • 米田 重和, 皆本 晃弥
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 1 号 p. 79-92
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/18
    ジャーナル フリー

    全国的に,ICT 活用教育の推進を目的とした教員研修プログラムが開発・実施されている.しかしながら,その多くは特定の教科・校種に特化したものではないため,教員自身が研修で学んだことを現場で実践できない例も見受けられる.そこで,本研究では,中学校数学におけるICT活用指導力を可能な限り明確にし,その指導力育成に向けた研修プログラムの要件を定め,その設計方法を提案した.また,これらに基づいて研修プログラムを開発・実施したところ,研修には13人の教員が参加した.そして,参加者およびその生徒へ質問紙調査を行った結果,KIRKPATRICKモデルのレベル1~4すべてにおいて,研修に対する多様な肯定的回答が得られた.実際,参加者のうち7人の教員が担当した生徒174人に対して,授業前後に質問紙調査を行った結果,学習意欲・活動の改善が見られた.これらから,本研修プログラムは中学校数学教員のICT 活用指導力を向上させる上で有用であることが示唆された.

  • 加藤 達也, 町 岳
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 1 号 p. 93-102
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,小学校4年生の社会科で,半年間にわたり単元統合型授業に学習方略活用支援を加えた授業デザインを実践したことの効果を,社会科の思考力である概念化・一般化及び,問題解決過程に合わせた学習方略活用の2点から検討した.ノートに記述された2つの大単元(4つの小単元)を貫く問いに対する答えを各単元の前後で比較した結果,3つの小単元と2つの大単元で,単元後に概念化・一般化が促進されることが示された.また,社会科の問題解決過程に合わせた学習方略を提示し,方略活用を段階的に児童に移譲したことの効果を質問紙調査と児童が立案した学習計画により検討した結果,児童が予見段階と遂行段階において学習方略を活用していることへの意識の向上や,学習計画の質の向上が示された.本研究の結果は,学習内容論に重点が置かれがちだった社会科授業研究に,新たな研究の視点を提示する可能性を示唆している.

教育システム開発論文
  • 関 陽介, 植野 美彦
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 1 号 p. 103-112
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/18
    ジャーナル フリー

    与えられた質問に機械的応答する対話システムは実用段階に達しており,大学への進学希望者を対象にした広報活動にも活用できると考えられる.しかし,ユーザ特有の問題として,初めての入試や受動的な受験等による情報収集の困難さがあり,従来の対話システムでは十分に情報が収集されない可能性がある.そこで本研究では,ユーザの潜在的な要求を喚起することで情報収集を支援する推薦型対話システムを開発する.具体的には,過去とリアルタイムの質問履歴を用いた嗜好分析の結果と,大学からのおすすめ情報により,個人属性を考慮したユーザの参考になり得る情報を質問形式で推薦する.推薦機能有無の評価と本学の進学希望者向け広報活動を対象にした導入評価を実施した結果,潜在的要求の喚起による平均質問件数の増加が確認され,ユーザの情報収集を支援できたことが示された.

資料
  • 科学への関心・意欲の多様な層のワークショップ参加を目指した試み
    後藤 崇志, 加納 圭
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 1 号 p. 113-126
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/18
    [早期公開] 公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー

    これまでの研究から,インフォーマルな科学教育が理科を学ぶ動機づけを高めることへの有効性が示される一方で,参加者層がもともと理科を学ぶ動機づけが高い人々に偏っているという問題点が指摘されていた.本研究では,商業施設において,遊びを入口とした科学ワークショップを実施することが,参加者層の偏りを解消するために有効な方策であると考えた.商業施設において,スーパーボールすくいを題材とした科学実験のワークショップを実施し,理科を学ぶ動機づけや科学への関心という観点から,参加者の人口統計学的な代表性について検討した.その結果,本研究で実施したワークショップは従来の研究で報告されていたものよりも代表性が高い参加者を集められていることが明らかとなった.

  • 阿部 真由美, 向後 千春
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 1 号 p. 127-134
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/18
    [早期公開] 公開日: 2021/04/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,英語の多聴学習において,学習者の個人特性としての拡散的好奇心が学習行動に与える影響と,拡散的好奇心を満たす教材が学習行動と学習意欲におよぼす影響について調査を行った.プレ調査のアンケートで測定した個人特性としての拡散的好奇心とその後の多聴学習での学習行動の関係を調べたところ,拡散的好奇心の強さが学習行動におよぼす影響は限定的だった.また,多聴教材として,拡散的好奇心を満たす度合いの高いE 教材と,度合いの低いC 教材を制作し,E 教材で学習したE 群(実験群)とC 教材で学習したC 群(統制群)を比較した.その結果,E 教材のほうが学習者の学習行動をうながすとは言えないものの,リスニング学習に対する学習意欲を維持させることが示唆された.また,多聴学習では,教材が拡散的好奇心を満たす度合いに関わらず,学習者のリスニング学習への興味を高め,リスニング力を向上させることが示された.

  • 江木 啓訓, 横山 裕紀, 今村 瑠一郎, 則常 一輝
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 1 号 p. 135-145
    発行日: 2021/06/10
    公開日: 2021/06/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,視野映像を用いてTA(Teaching Assistant)が自らの学習支援行動を振り返るための行動記録システムを提案する.学習者に対して臨機応変に支援を行うために,TA には自ら考えて行動する主体性が求められる.視野映像を記録する方法で自らの行動を振り返ることにより,主体性を伸ばすための気づきを喚起することが期待できる.しかし,TA が従事する全ての時間の視野映像を確認することは負担が大きい.この問題に対して,TA が身につけた加速度センサのデータから行動を推定し,振り返り時の手掛かりとして提示する行動記録システムを開発した.複数のTA が本システムを用いた振り返りを行った実験の結果から,加速度センサでTAの学習支援行動を識別することが可能であった.また,手掛かりの提示によって,いずれのTAも振り返りのための視野映像の確認時間が短くなった.本システムを用いることで,TA が学習支援行動を効率的に振り返ることの可能性が示唆された.

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