日本教育工学会論文誌
Online ISSN : 2189-6453
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45 巻, Suppl. 号
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ショートレター
  • 九州大学の事例
    新原 俊樹
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 1-4
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/07/21
    ジャーナル フリー

    博士論文の体裁や公表,その利用に係る実状と課題を明らかにするための事例研究として,2013年4月以降に九州大学が公開した博士論文の書誌情報と全文ファイルのページ数,閲覧回数を解析した.論文の執筆言語を分野別に見ると,理系分野ほど英語の論文が多く,文系分野ほど日本語の論文が多い傾向が見られた.一方,学術分野のように審査部局によって言語の選択状況が異なる事例もあった.論文ファイルのページ数は,特に文学,教育学,法学の各分野で多くなる傾向が見られた.言語別のページ数に有意な差は認められなかった.言語別の論文の閲覧回数については,英語論文1編当たりの閲覧回数が日本語論文の閲覧回数を大きく下回る結果となった.

  • 松島 るみ, 尾崎 仁美
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 5-8
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/09/13
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,オンライン授業に関する評価と自己調整学習方略,自己効力感,協同方略,学習の持続性や積極的関与の関連を検討することであった.大学生104名を対象に調査を実施し,重回帰分析を行った結果,オンライン授業に対する自己効力感がオンライン授業の評価に最も強く影響したことから,学習者がオンライン授業の学習効果を実感し,うまく学習を進めていく自信を持つことが出来るかどうかが重要であることが示唆された.また,学習への積極的関与がオンライン授業の評価に負の影響を示したことから,学習意欲が高い学習者は,対面授業と比べて,学習環境や学習デザインに不十分さを感じている可能性も示唆された.

  • 名知 秀斗
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 9-12
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    近年,汎用的能力や資質・能力の一つとして,批判的思考が着目されている.本研究では,批判的思考態度の育成を目指し,トゥ―ルミン・モデルを取り入れた数学教育の開発と評価を行った.その結果,本研究で開発した授業が,批判的思考態度を向上させる可能性が示唆された.

  • 水津 久美子, 畔津 忠博, 大石 由起子, 宇田川 暢
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 13-16
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    筆者らは,栄養カウンセリングのロールプレイを用いた実習教育において,初学者に取り組みやすいプログラムの検討を学生の評価を基に行った.ロールプレイは,栄養士役が交代するリレー方式と1人で行う単独方式を比較した結果,多くの学生が体験できる点と1人の負担の軽さにおいてリレー方式の方が評価された.カウンセリングスキルの修得状況については,「受容」と「気持ちを受け止める(共感)」に関する評価が高く「要約」や「沈黙への対応」に関する評価は低かった.さらにロールプレイ場面のWeb 視聴によるセルフモニタリングを導入したが,Web視聴のアンケート回答者数が少なく効果を検証するには至らなかった.

  • 綾部 宏明, エマニュエル マナロ, 花木 規子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 17-20
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    文章題解決において図表は有効とされるが,適切な図表を構築したにもかかわらず,生徒は問題解決に必ずしも成功しない.主な理由は,図表の領域固有性(認知メカニズムが特定のタイプの情報処理に特化する特性)と文章題の解法構造との適合性に関する知識が不足しているからだと考えられる.本研究は,その適合性に関する知識が解決を促す要因となるかどうかを確かめるために,表教授群とグラフ教授群(参加者40名;15.0 ± 3.1才)に,どちらかの領域固有性が適合すると想定した関数的解法構造をもつ文章題を解答させて,教授効果を検証した.

  • TFLAS の値を中位点区分した高低2群との関連の相違に着目して
    秋山 涼, 野中 陽一朗
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 21-24
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究は,小学校教員が抱く外国語不安に効果的なサポートを考案することを目的とした.小学校教員を対象とした調査を実施し,HORWITZ(2013)の示すTFLAS の値を中位点区分した高低2群と外国語活動の教科化に関する不安,サポート内容による不安軽減との間の関連および相違があるかを分析した.その結果,TFLAS3.0未満が126名,TFLAS3.0以上が437名となるだけでなく,TFLAS の高低別でTFLAS と教科化に関する不安やサポート内容との関連が異なることが示された.研究結果に基づき,個々の教員が自身の不安の実態を多角的に捉え,教員研修の内容を選択出来るようにする必要性や方策を考察した.

  • 亀岡 恭昂, 喜多 恒介
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 25-28
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー

    労働市場の流動性が高まる現代社会では,柔軟性と一貫性を兼備した「ナラティブ・アイデンティティ」の構成が重要である.そこで,人生に一貫した意味を与える視点となる「キャリアテーマの構成」と変化に適応し続けるための「キャリア適応性の育成」を教育目標とし,キャリア構成理論やACT,社会的学習理論を踏まえたデザイン原則に則り,2泊3日のワークショップをデザインし,大学生や大学院生などを対象に実践した.自由記述の分析からは参加者のキャリアテーマ探索・構成に寄与したことが示唆された.また,キャリア適応性を特性的自己効力感尺度によって測定したところ,有意な向上が見られ,効果量は中程度であった.

  • 橋本 陽介
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 29-32
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,1人1台の端末を使用した集団活動の際に,発達障害児童にみられる行動特性を,他者の発表を聞く時間における逸脱行動に焦点をあてて検討した.その結果,発達障害児童には,端末を見る・触るという逸脱行動が出現しやすく,それらを低減させる方策が必要となると考えられた.これを受け,端末で作業するスペースと発表に取り組むスペースを分けるといった,視覚的なわかりやすさが伴う,実施環境の配慮を行い,再度,他者の発表を聞く時間における逸脱行動に焦点をあてて検討した.その結果,実施環境への配慮は,1人1台の端末を使用した際に,発達障害児童に出現しやすい逸脱行動の低減に寄与する可能性が示唆された.

  • 河村 壮一郎
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 33-36
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,1人1台の端末を使用した集団活動の際に,発達障害児童にみられる行動特性を,他者の発表を聞く時間における逸脱行動に焦点をあてて検討した.その結果,発達障害児童には,端末を見る・触るという逸脱行動が出現しやすく,それらを低減させる方策が必要となると考えられた.これを受け,端末で作業するスペースと発表に取り組むスペースを分けるといった,視覚的なわかりやすさが伴う,実施環境の配慮を行い,再度,他者の発表を聞く時間における逸脱行動に焦点をあてて検討した.その結果,実施環境への配慮は,1人1台の端末を使用した際に,発達障害児童に出現しやすい逸脱行動の低減に寄与する可能性が示唆された.

  • 米沢 崇, 中寺 麻友
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 37-40
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/09/14
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,オンライン形式・双方向型授業での大学生のソーシャルスキル(以下,SS)と授業適応感の関連を明らかにすることである.質問紙調査によって得られた大学生128名のデータをもとに,オンライン授業における授業適応感尺度の下位尺度得点を従属変数,オンライン授業におけるSS 尺度の下位尺度得点を独立変数として重回帰分析を行った.その結果,「オンライン授業における会話力」が授業適応感尺度の下位尺度全てに正の関連,「オンライン授業における主張」が「オンライン授業における課題・目的の存在」,「オンライン授業における居心地の良さの感覚」,「オンライン授業における被信頼・受容感」に正の関連を示した.以上の結果から,オンライン授業においてもSS と授業適応感の関連に着目することが重要であると考えられる.

  • 山崎 智仁, 伊藤 美和, 水内 豊和
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 41-44
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    知的障害特別支援学校小学部と普通科高校にて,テレビ電話や分身ロボットOriHime を用いて,交流及び共同学習を行った.交流学習に向けた事前・事後学習や交流学習では,住んでいる場所も年齢も異なる交流校の高校生に楽しんでもらえる活動を考えたり,高校生が見やすいようにカメラを意識したりするなど,知的障害や発達障害のある児童らの他者を意識する姿が随所に見られた.ICT 機器を使って遠方の相手と交流することができた経験から,情報化社会におけるICTへの理解を深める姿が見られた.

  • 野口 聡, 田中 雄也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 45-48
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,人に教えるために書く活動において,その文章を書く方略を変えた理由や契機を明らかにする.その前提として,初期と19ヶ月後における書くための方略の出現単語の傾向から分析した.その結果,初期と19ヶ月の時点に差が見られた.そのため書くための方略を変えた理由や契機の自由記述をKJ 法で分類し,4つのカテゴリが生成された.「評価の意識」は学習評価に関わるもの,「失敗の予期や経験」「他の参考」は試行錯誤によるもの,「学びの気づき」は取り組むことの気づきに関わるものであり,それらによって書く方略を変化させたことが示唆された.

  • 瀬戸崎 典夫, 池見 菜穂, 北村 史
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 49-52
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    戦後75年が経過したことによる,被爆体験証言者の高齢化にともない,次世代を担う子供たちに向けた平和学習のあり方を検討する必要がある.そこで,本研究ではタンジブル操作を取り入れた没入型タンジブル平和学習用VR 教材を開発した.大学生を対象に評価した結果,参加者の興味・関心を高め,主体的な学びを促す可能性が示された.また,模型配置の活動によって俯瞰的に空間を認識させるとともに,バーチャル環境における高い没入感を与える可能性が示された.

  • 新井 堅登, 原 範久, 大前 佑斗
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 53-56
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,複式学級の基準に該当する小規模学級において,相互閲覧を可能にした遠隔協調学習の実践を行い,どのように協働的な学習が成立したのかについて検証した.分析の結果,発話分析からは相互閲覧を行うことで,学習者は多様な考えに触れることができ,他者の考えについて,記述してある内容を読み取り,考察する様子が見られた.学習者自身が考察したことは,テレビ会議システムを用いて意見交流を行うことで,さらに考えを深める可能性が示唆された.操作ログの分析からは,相手校の学習者の意見を参考にしながら,多様な考え方に触れようとする学習活動が見られた.

  • 新倉 文子, 山田 雅之
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 57-60
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    新学習指導要領では,英文法を深く学ぶために,日本語と英語との共通性や異なる点を把握しながら学習していく必要があることが示され,日・英の文法を接続し理解を支援する授業実践が急務とされている.本研究では中等教育における英文法の理解に重要な位置付けとされる名詞句の理解を対象に,ペアワークを実施した.理解の指標として名詞句の理解度を判断可能なBilly’s test(金谷ほか,2015)を活用した.7回にわたるペアワークを実践し,プレ-ポストのテスト結果を分析した結果,「be 動詞挿入問題」において正答率の向上が見られた.

  • 木村 千夏
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 61-64
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    大学生にインターネットニュースの発信者を意識させる授業を行った.実践・対照両群のインターネットニュースの評価規準をコーディングしたところ,4カテゴリー11ラベルに分類された.そして,評価規準の変化を両群で比較したところ,実践群では授業後に「発信者のブランド」をあげる者が少なく,「内容の客観性」をあげる者が多かった.

  • 石井 志昂, 山田 剛史, 中原 敬広, 村井 潤一郎, 杉澤 武俊, 寺尾 敦
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 65-68
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/09/27
    ジャーナル フリー

    本研究は,ベイズ統計学に基づくデータ分析を学習可能な,統計ソフトR を用いた心理統計の自習用Web 教材の試作,及び評価を行った.教材評価は,(1)学習者の教材学習状況,(2)R,及びベイズ統計学に対するイメージの変化,(3)学習後のインタビュー調査から行った.結果より,本研究で試作したWeb 教材の学習によりR を身近に感じるようになるとともに,コードを書きながら学習可能な点に対し肯定的な意見が得られた.一方,学習を行った参加者の約半数が教材の最後まで学習を終えることができず,教材の導入部分や章ごとの問題量について課題が示唆された.

  • 杉浦 真由美
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 69-72
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/09/07
    ジャーナル フリー

    本研究は,臨床現場で指導的役割を担う実地指導者に必要な資質・能力について明らかにするためのものである.実地指導者に必要な資質・能力に関する予備調査で得られた構成概念に基づき,さらなる調査を行った結果,実地指導者に求められる資質・能力として「アサーティブ・コミュニケーション」「OJT の創意工夫」「教えることへの関心」の3因子21項目が抽出された.実地指導者の能力開発として,アサーション・トレーニングと教える技術を組み合わせた教育プログラムの策定および実施が喫緊の課題であることが示唆された.

  • 教職志望学生が読み取った理解状態の程度に着目して
    野中陽一朗
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 73-76
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,授業場面における児童生徒の理解状態を示す57種類の非言語的行動を教職志望学生が読み取った理解状態の程度から類型化し特徴を見出すこと,教職志望学生のノンバーバル感受性と類型化した非言語的行動の読み取り評定との関連を探索的に検討することであった.調査の結果,57種類の非言語的行動を理解状態の程度の類似性に基づき7クラスター解に類型化し各特徴を見出した.教職志望学生のノンバーバル感受性と類型化した非言語的行動の読み取り評定の間に関連はみられなかった.7クラスターは,授業時に知識として活用出来ること,映像刺激による実験や教職志望学生の現場経験等による差異を踏まえた今後の課題を考察した.

  • 三島 知剛, 一柳 智紀, 坂本 篤史
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 77-80
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,実習指導未経験教員の教育実習指導を通した実習指導教員の学びと力量形成に関する認識を検討することであった.質問紙調査の結果,(1)実習指導に伴う負担感を認識している一方で学びや教師としての力量形成に関する期待が高いこと,(2)実践説明や実習生との協働の重要度と実習指導を通した学びの認識に関連があること,(3)実習生との協働の重要度と教師としての力量形成の認識に関連があること,等が示された.

  • 幡生 翔太, 冨永 敦子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 81-84
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/08/27
    ジャーナル フリー

    表計算ソフトを用いた問題解決型の学習において,動画コンテンツの視聴前に,予習として事前資料(機能提示条件,利用例提示条件)を学習者に読んでもらい,テストおよびアンケートを実施した.その結果,基本問題では両条件に大きな違いはなかったが,応用問題では利用例提示条件のほうが機能提示条件よりも成績が良かった.一方で,学習者は利用例を提示されると自分でもできると感じたが,機能をシンプルに提示されたほうが動画コンテンツの理解に役立つと感じた.

  • 佐々木 さや香, 芝本 隆也, 高村 浩輝, 森本 康彦
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 85-88
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    「知識及び技能」だけでなく「思考力,判断力,表現力等」や「学びに向かう力,人間性等」を育成するためには,ドリル教材を用いた学習においても学習者の主体的な学びの実現が必要であると考えられる.そこで,本研究では,問題演習における学習者の主体的な学びを支援することを目的とし,学びを振り返りながら問題演習に取り組む,問題演習における主体的学びモデルを提案し,それに基づく問題演習システムの開発と評価実験を行った.その結果,学習者は学びを振り返りながら問題演習に取り組み,学びの過程を把握して見通しをもちながら主体的に学んでいく可能性が示唆された.

  • 鈴木 美森, 佐藤 和紀, 三井 一希, 中川 哲, 山本 朋弘, 堀田 龍也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 89-92
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究は,東京都教育委員会が指定した複数の小学校において,先行的に実施された小学校プログラミング教育の実践事例を分析し,実態を把握することを目的とした.そこで,東京都プログラミング教育推進校の実践事例に対し,学年,教科等,教材の関連性を検討した.その結果,①調査対象全体として,学年間の実践事例数に有意差がない,②学習指導要領に学習活動の例示がある学年,教科等では,PC を活用する教材を主に使用している,③低学年は,PC を活用しない教材を主に使用している,ということが示された.

  • 山本 裕子, 七田 麻美子, 横矢 祥代, 中西 良文
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 93-96
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/09/07
    ジャーナル フリー

    本稿は三重大学の学部卒業生及びその就職先を対象に質問紙調査を実施し,当該大学の教育が社会的ニーズに合致しているかを検討することを目的とした.卒業生・就職先データの比較分析の結果,卒業生と就職先の評価にずれがあることや,就職先からの評価が卒業生の自己評価より高くてもジェネリックスキルや外国語の力について身についたとする評価が比較的低かったことから,この点をさらに改善する必要性等が見出せた.今後の課題として,カリキュラム評価や教学改革についてより精度の高い評価を行うために経年比較による分析の必要性が明らかとなった.

  • 対話リフレクションによるジレンマと信念の認知
    阿部 藤子, 神原 裕子, 澤本 和子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 97-100
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/07/02
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,看護系大学の看護教員の授業の実態と課題を個別事例に即して明らかにすることである.リフレクションによる授業者の気づきを検討した結果,「演習のふり返りを授業に組み込む必要性への気づき」「演習時の学生への指示の明示性の見直し」「学生自身の気づきや思考を重視する教師の信念」等の6カテゴリが抽出され,教師の授業に対する認識の変容と信念の自覚がみられた. 教師の信念が導出される対話リフレクションの要件の検討が課題である.

  • 三井 一希, 佐藤 和紀, 渡邉 光浩, 中野 生子, 小出 泰久, 堀田 龍也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 101-104
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/09/07
    ジャーナル フリー

    本研究は,児童同士の交流に着目したプログラミングの学習の場を,休み時間等の授業時間外に設定した実践を行い,その有効性と交流の実態を調査した.結果,提示した課題を教師が介入することなく,児童だけで達成することが概ね可能であることが示唆された.また,教師が指導する学習形態よりも児童だけで学ぶ学習形態を好む児童が有意に多いことが示された.さらに,児童同士の交流の実態を調査したところ,児童は事前のプログラミング技能の差に関わらずに他者と交流を行い,課題を達成している可能性が示唆された.

  • 木原 俊行, 長谷川 元洋, 山本 朋弘, 中橋 雄, 今野 貴之, 関戸 康友
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 105-108
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    学校における実践研究を学校外の有識者が支援するためのオンラインコンサルテーションの実践を計画・実施・評価した.1年弱にわたり,10の学校に関して,5名の大学教員がチームコミュニケーションツールを用いて,助言等を繰り広げた.その結果,オンラインコンサルテーションが実践研究の推進に資するものであったこと,協働性の充実などの課題が確認された.

  • 池尻 良平, 山本 良太, 中野 生子, 山内 祐平
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 109-112
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/11/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,ICT を利用した,ジグソー法のエキスパート活動における知見の同期的収集が,教師のモニタリングと介入にどのような影響を与えるかを,机間巡視のみの場合と比較して調査した.その結果,内容を含めた俯瞰的なモニタリング,各専門家グループのキーワードのシェア度合いに関する俯瞰的なモニタリングと各グループ内のシェアを促す介入,普段は優先順位の低い上位層のモニタリングを促す可能性が示された.

  • 古荘 智子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 113-116
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/09/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,認知言語学(Cognitive Linguistics)的知見に基づく中核的意味とその意味拡張を用いた多義語学習法(以下,CL学習法)が,記憶保持および意味推測に有効であると報告されたオランダ人英語学習者を対象に実施された先行研究を応用し,母語や英語力あるいは学習環境が異なる日本の英語学習者にも有効であるかどうかを検証した.さらに,本研究では,日本の学習者が広く用いている一語一義的な暗記学習法とCL学習法を比較し,学習効果に差が示されるかを検証した.結果から,記憶保持および意味推測には効果が示されたが,学習法の違いに主効果は示されなかった.しかし,事後アンケート結果から,CL学習法が,浅い処理の暗記学習から有意味学習へ,学習者を導く役割を果たす可能性が示唆され, 多義語学習への有効性が明らかになった.

  • 佐藤 和紀, 小田 晴菜, 三井 一希, 久川 慶貴, 森下 孟, 谷塚 光典
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 117-120
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/11/02
    ジャーナル フリー

    小学校高学年児童がクラウドサービスの相互参照を用いて,他者の文章を参照して意見文を作成する実践を行った.意見文の評価と意識調査の結果,他者の意見文を参照したグループ児童の意見文の評価は有意に高く,他者の意見文を参照していないグループの児童よりも読み手にどう伝わるか気をつけて書く,自分の考え以外の視点でも書く,主語と述語のつながりを注意して書く,形式的なミスを少なくする,ことを意識していた.

  • 内田 佳途, 三井 一希, 浅井 公太, 棚橋 俊介, 佐藤 和紀
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 121-124
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

    小学校での1人1台端末を活用する場面において必要になる学習規律を分類・分析するため,小学校教師2名を対象に導入後2か月間で指導した学習規律に関する調査を実施した.結果,11項目の学習規律が指導され,学習規律を一覧表にまとめた書籍を参考に分類したところ,指導場面が一致する「学習上のルール」,一致しない「端末を扱う上でのルール」の2つに大別された.「学習上のルール」は1週間で定着が図られたことから,これまでの学習規律と同様の指導により定着が図られることが考えられるのに対して,「端末を扱う上でのルール」は定着に2週間以上時間を要すること,ICT スキルを伴う指導が必要となることから,これまでの学習規律と指導方法が大きく異なることが示唆された.

  • 想定されるグラフの学習時期とグラフの表現形式を基に
    安里 基子, 佐藤 正寿, 高橋 純, 堀田 龍也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 125-128
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/09/07
    ジャーナル フリー

    本研究では,算数科におけるグラフの学習と国語科・社会科・理科(以下,他教科)におけるグラフを活用した学習の関連を明らかにするために,小学校の教科書で用いられているグラフの表現形式と想定される学習時期による分類を行った.その結果,教科の内容としてグラフの読み取り方等を学習する算数科よりも,グラフを活用して教科の内容を学習する他教科の方が特定の表現形式のグラフの学習時期が早くに想定されている場合や,算数科と他教科における,特定の現形式のグラフの学習時期が離れている場合がみられた.また,社会科や理科の教科書においては,算数科における学習の機会が少ない,もしくはない表現形式のグラフがみられた.

  • 荒川 詠美, 三井 一希, 佐藤 和紀
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 129-132
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,小学校高学年を対象に,複数の情報の読み取りが必要な調査問題を作成し,(1)正答率(2)問題や資料等を読む順序(3)新聞やフィクションを含む読書頻度について調査を行い,正答率と読む順序の関係性と,正答率と読書頻度の関係性の検討を行なった.その結果,(1)正答率と手順の比較では,正答の児童と誤答の児童の読む手順に大きな差はみられないこと,(2)出題した3問全てで正答の児童の方がフィクションを月に数回程度読んでおり,誤答の児童よりも読書頻度が有意に高かったことが示唆された.正誤による読む順序に大きな違いはないがフィクションの読書頻度が異なり,読み方に特徴があると示唆された.

  • 手塚 和佳奈, 佐藤 和紀, 三井 一希, 堀田 龍也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 133-136
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    本研究は,GIGA スクール構想の標準仕様にしたがってICT 環境が整備された学校で1人1台の端末を活用した実践を先行実施していた小学校教師の情報モラル指導に対する負担感・困難さを検討することを目的に,半構造化インタビューを実施した.その結果,【A 情報モラル指導のタイミングの難しさ】【B 情報モラルの指導形態に関する迷い】【C 端末の活用場面に即した指導だけでは補えない指導内容】【D 情報モラル指導に対する教員間の考え方や進度の調整】【E 情報モラルに関する個別指導】【F 児童間のオンラインでのやりとりの観察】の6種類が確認できた.

  • 自己調整学習との関連に着目して
    橋本 佳蓉子, 渡辺 雄貴
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 137-140
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    自ら振り返り次につなげるような学習活動として,自己調整学習が注目されている.自己調整学習は数学的問題解決と過程の段階において関連が考えられる.そこで,本研究では自己調整学習との関連に着目した,高校生の数学的問題解決方略使用を促す授業外学習教材の開発を目的とした.高校1年生を対象に数学Ⅰの2次方程式・不等式の単元で実践した.質問紙調査の結果,数学的問題解決方略は,問題の得点の上位群で問題解決の見通しに関する点で改善が見られた.しかし,授業外学習での自己調整学習方略と動機づけに改善が見られず,成績に応じて問題内容を変えることや授業内容と関連させることなどの教材の課題が明らかとなった.

  • 久川 慶貴, 佐藤 和紀, 三井 一希, 高橋 純, 堀田 龍也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 141-144
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/09/13
    ジャーナル フリー

    本研究は,小学校高学年児童の学校生活におけるグループでのチャットの活用の特徴を明らかにすることを目的とする.公立小学校の第6学年における,グループでのチャット(チャットルーム)の活用状況を調査した.その結果,児童がチャットルームを開設する目的は,「学校行事」「学年行事」「有志活動」であった.開設された目的によって,活用の頻度に差が見られること,同じ目的で開設されたものであっても,具体的な活用のされ方は異なることが示唆された.また,情報共有の手段の一つとしてチャットルームを活用している可能性が示唆された.

  • 遠藤 みなみ, 堀田 龍也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 145-148
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,小学校の初任者教師のICT 活用に関する省察について,2020年度から小学校の初任者教師として勤務した教師A(第一著者)による省察の記録を基にした自己エスノグラフィーにより把握し,坂本(2007)の枠組に基づいて整理した.その結果,11カテゴリが生成された.教師A は,「個人での省察」において【ICT 活用による授業の力量不足の補填】などを省察し,「個人での省察」や先輩教師の指導による「協同的な省察」において【ICT を活用した授業の力量不足】などを省察していた.また,「協同的な省察」や,職員室でのICT 活用の話題による「日常的に埋め込まれた学習」において【ICT 活用の授業的な職場の雰囲気】などを省察していた.

  • 川村 美好, 松葉 龍一, 鈴木 克明, 中野 裕司
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 149-152
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/09/13
    ジャーナル フリー

    建築設計業界では人材不足により協力スタッフ(派遣社員)への依存度が高い状況であるため,一定水準の業務遂行能力と社内ルール習得のための協力スタッフ向け自学用学習支援ツールを開発した.協力スタッフと協働する社員へのヒアリング調査及びその分析から,協力スタッフが習得すべき内容を,技術レベルの異なる3分野と全員必要な社内ルールの1分野に分類・整理した.それに基づき,TOTE モデルを用いて,自学用学習支援ツールを設計し,Moodle 上に実装した.専門家レビューと形成的評価により改善をおこなった.結果,ばらつきに対応した実務直結型の学習支援ツールを開発でき,限られた範囲内であるが,意欲の向上を確認した.

  • 淺田 義和, 村岡 千種, 前田 佳孝, 鈴木 義彦, 川平 洋
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 153-156
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/09/02
    ジャーナル フリー

    脱出ゲーム(Escape Roon,以下ER)を用いた教育は近年で増加傾向にあり,医療分野を含めて種々の事例が報告されている.しかし,2020年度の新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け,従来の対面で行うER 活用教育は実践が困難となっていた.本稿では,従来は対面で実施していたER をMoodle 上でのオンラインER へと形式変更し,実践した結果を報告する.オンラインER としたことにより,密の状態を回避したうえでの運営が可能となった.また,対面とは異なる環境での意見交換の困難さを経験したことによる学びの省察も生じていた.今後はMoodle上でのログ解析などを通じ,ER の学習分析などにも視野を広げる必要があると考える.

  • 登本 洋子, 高橋 純
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 157-160
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/11/02
    ジャーナル フリー

    GIGA スクール構想により,初等中等教育において児童生徒に1人1台の学習者用端末(以下,1人1台端末)と通信ネットワークが整備される.本研究では,ICT 環境の整備と活用に対する保護者の期待や懸念を明らかにするために,1人1台端末に対する保護者の意識を調査した.結果,1人1台端末は発表などの学びに役立つといった期待がある一方,生徒と教員だけでなく保護者自身のICT スキルや学力低下,小学校低学年での利用などに対する不安が確認された.また,ICT 環境の整備と活用に対する保護者の理解は十分でないことが確認され,教室や自宅で1人1台端末を学習に溶け込ませたものにするためには,保護者への周知を図っていく必要があることが示唆された.

  • 後藤 和彦, 相川 大吾, 照井 佑季, 江木 啓訓
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 161-164
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    学習者の脚部動作に基づいて,適切なタイミングで休憩を取得する手法を提案する.脚部動作計測デバイスを用いて学習者の疲労を推定し,脚部動作時間の増加量が閾値に達した際に休憩を促すシステムを開発した.映像講義を対象として,提案手法が学習効果の向上に影響するか比較する実験を行った.脚部動作時間の増加量の比較から,提案手法群は疲労を蓄積させることなく学習を進められていたことが示唆された.一方で,自由に休憩を取得した群と比較して,事後テストの点数は及ばなかった.また,連続して学習した群は,事後テストの講義後半部分の成績が低下していた.休憩を促す閾値への個人差や学習内容の影響を検討することにより,適切なタイミングで休憩を取得することによる学習効果の向上が期待できると考えられる.

  • 岡本 勝, 西本 林太郎, 松原 行宏
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 165-168
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本論文ではHMD を用いて仮想環境内でストローク練習を行うことができるシステムを提案する.HMD を用いることで,練習者は飛んでくるボールを打つ練習を行うことができる.また,トラッキングセンサーをラケットに装着することで,ラケットを振りながら練習を行うことを可能にした.システムの操作を本物のラケットを用いることによって,片手のショットだけでなく,バックハンドストロークのような両手で打つことがあるようなショットの練習も可能にした.システムでは,練習者のストローク時の軌道を仮想環境内に表示することで,練習者は自身のスイングを振り返りながら練習を行うことができる.

  • 三井 規裕, 時任 隼平, 福山 佑樹, 西口 啓太
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 169-172
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究では学術的文章作成について学んだ初年次生が,論証構造のどの部分に苦手意識を持ったか明らかにすることを目的とした.208名を対象に14回授業終了後に質問紙調査を実施し,回答のあった160名を分析対象とした.ここでは,自由記述を用いて,階層的クラスター分析を行った.その結果,反論の想定,説得力のある文章構成,異なる視点のデータの探索,理解不足の指摘,リポートの客観的見直しに分類された.この5つから,学生は1)学術的文章に必要な論証構造,2)文献から説得力を高めるためのデータ収集,3)文章の推敲を苦手と感じていたことが明らかとなった.

  • 久保田 善彦
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 173-176
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    遠隔講義で指摘される様々な問題は,対面授業とは音声環境が異なることで局所的会話(つぶやきや隣人との会話)が発生しにくいことや,それによる授業雰囲気が影響していると考えた.そこで,本研究では,同期型遠隔講義において,局所的会話を可能とする環境を用意し,授業雰囲気や関連する意識の関係を検討した.その結果,孤独感や共有感の課題が解消され,自由・積極的雰囲気を高めることが明らかになった.特に,局所的会話を頻繁にする受講生は,その学習効果を実感している.一方で,音声に立体感がないことで,局所的会話を否定的に捉える受講生がいることも明らかになった.

  • 森 裕生, 松下 侑輝
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 177-180
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,新型コロナウイルス感染症流行の影響でオンデマンド授業により実施された大学の初年次教育科目を対象に学生の授業動画の視聴状況と学習成果の関連を分析した.学生ごとの視聴履歴を量的に分析した結果(1)ライティングスキルの授業回は多くの学生が視聴していた一方で全体の9%の学生が半数以上の授業回をほぼ未視聴で受講したこと(2)授業動画を見返さずに一度の視聴で受講した学生の最終レポート得点が高い傾向だったことなどが明らかになった.

  • 齋藤 玲, 中川 哲, 大崎 貢, 堀田 龍也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 181-184
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/11/19
    ジャーナル フリー

    学校教育において,学業成績と関連する心理特性や認知方略を明らかにし,必要に応じて教育的介入を行い,個々人の学業成績の向上を図ることは価値がある.これまでに諸外国において自由意志信念や知能観(知能に対する考え方)といった態度が学業成績と関連するとされてきたが,国内におけるそれらの関連は十分に調べられていない.本研究では,自由意志信念,知能観,失敗観(失敗に対する考え方)と学業成績との関連を中学生対象に調べた.その結果,いずれの変数も学業成績と関連しないことが明らかとなった.この結果は先行研究の結果と一致しない.今後の研究では,結果の再現性の検証と,その原因に関する議論の深化が必要である.

  • 照井 佑季, 山田 政寛, 合田 美子, 江木 啓訓
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 185-188
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    大学の情報基礎教育を対象として,コンピュータ教室における着席位置から個別支援が必要な学生を推定可能か調査した結果を報告する.着席位置を教員が指定しない授業における最近傍学生までの距離を,学生ごとの座席間距離と定めて算出した.座席間距離の平均が大きい順に単位不認定となった学生数と同数の学生を,個別支援が必要な学生と想定した.3年分の情報リテラシーとプログラミングの授業について分析した結果,個別支援が必要と想定した学生の単位不認定の割合は,それ以外の学生と比較して有意に高かった.このことから,他の学生と離れて着席することを選択した学生に対して,個別支援を行うことが有効である可能性が示唆された.

  • 金西 計英, 石田 基広, 戸川 聡, 高橋 暁子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 189-192
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    高等教育の初年次学生を対象にした学習には,基盤的な知識伝達を対象としたものが存在する.一般的に,知識伝達を目的とした学習の形態としては,演習の繰り返しによる自学自習が想定される.自学自習による知識伝達は,eラーニングにより補完可能であると考える.本稿では,学習者個別の適切な問題選択の機能を実現した適応的学習システムを提案する.さらに,適応的学習システムの実現には,理解状態を把握する俯瞰情報が必要であることを述べる.また,適応的学習システムの試行とその結果についても述べる.

  • 青山 郁子, 家島 明彦, 戸田 有一
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 193-196
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    COVID-19パンデミックの影響により,世界中の大学が2020年3~4月頃に急遽遠隔での授業に切り替えることを余儀なくされた.そのため学生は,より主体的な学習やモチベーションの調節を求められた.自己決定理論(SDT)によれば,有能感,自律性,社会的関係性の3つの基本的心理欲求の充足が内発的動機に影響を与えるとされている.しかし,パンデミック状況下における学習においても同様かは定かではない.したがって,特殊な環境での学習者の基本的心理欲求の充足と内発的動機について検討することは重要な課題である.本研究の目的は,コロナ禍中での緊急遠隔学習という文脈下で,SDT における基本的心理欲求の充足度と内発的動機の関係を国内の大学生・大学院生564名を対象に調査した.分析の結果,コロナ禍中の学習においてもSDTを支持する結果が得られ,理論の普遍性が示された.

  • 岩﨑 千晶, 川面 きよ, 遠海 友紀, 村上 正行
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 45 巻 Suppl. 号 p. 197-200
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/02/02
    [早期公開] 公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    本稿では日本の4年制大学のラーニングコモンズ(LC)を対象に調査を行い,LC での学習支援の現状に関して分析をした.研究目的は,①LC で提供する学習支援の内容,②授業に関わる学習支援の内容,効果と課題を明示することである.調査の結果,図書館に関連する学習支援に加えて,ライティングやIT といったアカデミックスキルや外国語を扱う学習支援が実施されていることが示された.また授業に関わる学習支援により,学習者の能力向上やLC 利用者の増加につながる効果が見受けられたが,対応できる学生数に限りがあるという課題も示された.大学によっては授業に関する学習支援の拡充を控える傾向もあり,過渡期にあることがわかった.

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