日本教育工学会論文誌
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46 巻, 3 号
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論文
  • 江﨑 誠治, 初田 泰敏, 青江 麻衣, 西中 徹
    原稿種別: 研究論文
    2022 年46 巻3 号 p. 425-432
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    タブレット端末を用いた双方向授業支援システムREQUEST を開発し,多肢選択式問題演習の解説授業にて運用することで,このシステムの検証のためのケーススタディを行った.一部の受講生に,演習時間内にマークシートへの解答をタブレット端末にも入力してもらうことで,クラスの受講生の解答状況をリアルタイムで把握でき,受講生の疑問点の解消や弱点の補強など,ニーズに即した解説授業が行えることが確認された.平均50名程度の受講生に対して,平均10台程度のタブレット端末であっても,運用上の工夫により,タブレット端末への解答から受講生全員のマークシートへの解答と同等の結果が得られることが示された.

  • 首都圏の上位私立大学生を対象として
    加藤 奈穂子, 尾澤 重知
    原稿種別: 研究論文
    2022 年46 巻3 号 p. 433-452
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,大学入学後のどのような学習経験がアンラーニングを促し,学習観に影響を与えるかを明らかにすることである.そのため大学3年生7名を対象とし半構造化インタビューをおこない複線経路等至性アプローチを用いて分析した.その結果,本研究の対象となった学生は,(1)大学入学後<大学生になり高校との違いに驚く>という経験や,(2)自分の意思とは違う<講義重視・一方向型授業>,(3)意欲的になる<演習重視・参加型授業>,(4)意欲的になる<プロジェクト型授業>のスパイラルな経験などを経て,授業に対して批判的な問題意識を醸成した.その結果,<強制的に知識を詰めこむ>という価値観に対してアンラーニングが生じるというプロセスが明らかになった.またアンラーニングの過程で,<対話により知識を構成する>,<グループで協力しながらゼロからデザインし試作品をつくる>という考えが生み出され<学習とは社会で活躍するために行うこと>とする学習観が強化されていた.

教育実践研究論文
  • オンラインタンゴセラピーにおける検討
    阿部田 恭子, 向後 千春
    原稿種別: 研究論文
    2022 年46 巻3 号 p. 453-463
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/15
    [早期公開] 公開日: 2022/07/28
    ジャーナル フリー

    本研究では,パーキンソン病患者の体の動きの改善とQOL 向上を目的とした健康支援教育プログラムを開発し,その効果についてランダム化比較試験によって検討した.実験群では,インストラクショナルデザインの原則によって設計されたタンゴセラピーをオンデマンド方式で配信し,テレビ会議システムを使ってフィードバックした.一方,統制群では,テレビ会議システムを使って健康講座を行った.その結果, 実験群において,外出頻度が有意に高くなった.さらに,インタビュー調査の分析から,オンラインタンゴセラピーによって体の動きの改善に効果があることがわかった.体の動きの改善は,心理面での変化につながり,日常における活動にも効果が見られた.これらの結果から, オンラインタンゴセラピーは,社会生活への参加の積極性を高めたことが示された.

  • 藤井 太平, 植木 賢, 乾 道夫, 上原 一剛, 礒江 孝
    原稿種別: 研究論文
    2022 年46 巻3 号 p. 465-484
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/15
    [早期公開] 公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

    国際的な競争が熾烈化している現代,次代を担う子供達の創造性を育成することは重要である.著者らは創造力の定義として高橋(2002)の「既知知識や経験を統合し,新しく価値があるものを生み出す力」を採用し,創造性教育で広く知られるトーランスの知見を背景として,植木(2018)が開発した発明楽と,医療機器開発の考え方を取り入れて創造性育成教育を開発した.これを小学5年生(N=63)に実践し,創造性に関する心理尺度(因子:拡張性,論理性,積極性,独自性,集中性・持続性,収束性,精密性)と批判的思考に関する心理尺度(因子:探究心,客観性,論理的思考,証拠の重視)を用いて前後比較を行った. 本開発授業は,拡張性・論理性,好奇心・積極性,集中性・持続性,好奇心・積極性,精密性,探究心,証拠の重視の因子で創造性の伸長を期待できる結果が得られた.

  • 岡崎 善弘, 大角 茂之
    原稿種別: 研究論文
    2022 年46 巻3 号 p. 485-491
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/15
    [早期公開] 公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,設計図の利用がプログラミング的思考の「分解」の理解に与える効果を検討した.小学4年生から小学6年生の児童が2日間のプログラミング体験講座に参加した.プログラミング体験講座は,設計図を示しながらプログラミングを教える設計図あり群と単にプログラミングを教える設計図なし群で実施された.プログラミングを終えた後,ゲームに必要な構成要素を考えさせた.構成要素の数を2群間で比較した結果,構成要素の数は設計図あり群の方が多かった.本研究の結果から,設計図の利用はプログラミング的思考の「分解」の理解を促進することが示唆された.

  • 山野 大星, 小林 猛, 井庭 崇
    原稿種別: 研究論文
    2022 年46 巻3 号 p. 493-507
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/15
    [早期公開] 公開日: 2022/07/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,専門学校の建築専門職教育における住宅設計課題において,パターン・ランゲージを用いた評価作成と指導の有効性を明らかにすることを目的に研究授業を実施し,その効果を検討した.研究授業前に教員グループによってグループ設計課題「バイオクライマティックデザインによる住宅設計」のパターン・ランゲージ及びルーブリックを作成した.パターン・ランゲージを用いて設計演習の授業内でワークショップを行なった処置群と通常の設計演習の授業を行った対照群とを比較した.処置群,対照群ともに事前に提示していたルーブリックによる教員の作品評価および質問紙調査による学生の授業で「身につける力」の自己評価においても,処置群が高いことを確かめ,パターン・ランゲージを用いた指導の有効性を明らかにした.また,処置群の中でもパターン・ランゲージの内容を理解して,積極的に活用するグループの作品の評価が高いことも確認した.

  • 福谷 泰斗
    原稿種別: 研究論文
    2020 年46 巻3 号 p. 509-523
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,中学生を対象とした社会科(歴史的分野)の授業において,自律的な学習に必要な学習方略の使用向上を目指した授業実践を行い,その効果を検討した.研究1では,中学生を対象とした質問紙調査を行い,自律的な学習に必要な学習方略を測定する尺度を開発した.学習方略尺度は,認知的・対話的方略とメタ認知的方略の2つから構成され,因子分析を行った結果,体制化方略と対話方略,モニタリング方略と計画方略が見出された.尺度の信頼性や妥当性について検討を行った結果,信頼性,妥当性が確認された.研究2では,学習方略の使用を促進するための社会科学習プログラムを開発し,研究1で作成した尺度を用いてその効果の検討を行った.その結果,体制化,対話,モニタリング方略について,効果があることが示された.

  • 木村 明憲, 黒上 晴夫
    原稿種別: 研究論文
    2022 年46 巻3 号 p. 525-542
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/15
    [早期公開] 公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,はじめに児童が自己調整スキルを発揮し,創造物を主体的に評価・分析,改善するための学習の流れを考案した(Self-reflection モデル).そして,考案したモデルの学習プロセスに沿って授業実践を行ったことが,自己調整スキルを発揮して学ぶことに対して効果的であったかについて検証した.本モデルの効果を検証するにあたり,フィードバック結果から得た改善案と完成した創造物の修正箇所(以下修正事項)の関連を,本モデルの学習プロセスと対応づけて分析した.その結果,児童が自己調整スキルを発揮しながら創造物を評価・分析し,改善する上で効果的な学習モデルを開発するに至った.

  • 解釈と分析を促す記述指示が抽象的概念化に与える影響
    上田 勇仁, 半田 純子
    原稿種別: 研究論文
    2022 年46 巻3 号 p. 543-556
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/15
    [早期公開] 公開日: 2022/08/22
    ジャーナル フリー

    プロジェクト学習における学習をKOLB の経験学習モデルに則して捉え,経験を概念化し他の状況に応用可能な知識などを構成するプロセスである抽象的概念化に着目した.高等教育の初年次教育科目で実施されたプロジェクト学習において,受講者が各回の授業終了後に記述する振り返り課題の記述内容を抽象的概念化とし先行実践を実施した.先行実践の結果を踏まえて抽象的概念化を支援する内省支援として振り返り課題を記述する際の記述指示を改善した.振り返り課題を評価するルーブリック評価表をもとに解釈と分析を促す記述指示を準備し,教育実践を通じて受講者からの評価,記述量,抽象的概念化の種別を検証した.その結果,改善した記述指示に対して9割以上の肯定的な意見があり, 授業の後半から改善した記述指示を取り入れた実践において記述量に有意な差が見られた.抽象的概念化に該当する記述については,「報告」の記述が減少し,「解釈」に関する記述が増加する傾向があったが「分析」については有意差を確認することはできなかった.

  • 豊沢 純子, 竹橋 洋毅, 島井 哲志
    原稿種別: 研究論文
    2022 年46 巻3 号 p. 557-566
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    本研究は強み介入による防災教育の効果を検討した.防災への強みの活用法を段階的に教えるため,防災強みカルタを開発した.強み介入は,強みの診断,カルタの実施,防災への活用法の例示,活用法の自己生成,アイディアの共有,フィードバックのプロセスから構成した.研究1は大学生36名に強み介入を行い,防災対策を実施することを求めた.一週間後に,各自が実施した対策を報告してもらい,強みの活用法の理解を深化させた.学習前と一週間後に防災行動の実施度を測定し,学習前と学習後,一週間後に、強みの認識と活用感を測定した.その結果,防災行動の実施度は学習前よりも一週間後の方が高かった.強みの認識と活用感は,学習前よりも学習後に高く,一週間後も高かった.研究2は大学生28名に研究1の知見の再現性を検討し,同様の結果が得られた.これらの結果から,防災強みカルタを用いた強み介入の効果が示された.最後に,今後の研究の方向性を論じた.

教育システム開発論文
  • 長山 弘
    原稿種別: 研究論文
    2022 年46 巻3 号 p. 567-578
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/15
    [早期公開] 公開日: 2022/06/10
    ジャーナル フリー

    令和2年度より小学校段階においてプログラミング教育が必修化された.音楽科においても,音楽づくり活動をプログラミングの学習に関連させた実践事例が複数見られる.本研究では,音楽づくり活動のひとつとして,コンピュータへの命令をリアルタイムで操作しながら音楽表現を行う〈ライブ・コーディング〉の活動を設定し,その実施のためのWeb アプリケーションを開発した.本稿では,まず,開発の背景となった問題意識を示し,開発の方針を整理した.次に,開発したアプリケーションの概要を述べた.続いて,筆者自身による授業実践を通して,同アプリケーションが,児童の〈ティンカリング〉を促すための適切な操作性を備えていること,児童から多様な音楽性を引き出すことができたこと,「音楽を特徴付けている要素」の理解を促すことができたことを,それぞれ検証した.

資料
  • 城戸 楓, 池田 めぐみ
    原稿種別: 研究論文
    2022 年46 巻3 号 p. 579-587
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/15
    [早期公開] 公開日: 2022/07/04
    ジャーナル フリー

    昨今,これまで多くの研究分野において最も強力なツールの一つとして研究のエヴィデンスを支えてきた帰無仮説有意性検定に疑問が投げかけられている.本稿では,こうした帰無仮説有意性検定の際に信頼性を高めるために報告が求められる効果量を取り上げ,『日本教育工学会論文誌』において過去10年間でどの程度効果量が論文に記載されていたのかについて調査を行った.この結果,『日本教育工学会論文誌』では,2016年ごろより効果量について論文内で掲示される比率が増加していたが,海外での掲載比率ほど高まってはおらず,また近年では少し下落している傾向が見られた.また,教育システム論文では特に効果量が記載されない比率が高かったことが分かった.

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