日本教育工学会論文誌
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早期公開論文
早期公開論文の14件中1~14を表示しています
  • 山本 良太, 杉本 昌崇, 佐藤 智文, 平野 智紀, 石橋 純一郎, 山内 祐平
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47125
    発行日: 2024/07/20
    [早期公開] 公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー 早期公開

    本研究の目的は,特に教科担任制が敷かれる中学校において導入された1人1台端末の活用を支える教員を取り巻く教員コミュニティに着目し,その具体的な様相を明らかにすることである.そのために相対的に端末を高頻度に活用する中学校に所属する教員を対象としたインタビュー調査を行った.分析の結果,調査対象校では,①端末活用に向けた教員コミュニティの活動,②端末活用による新しい教室内コミュニティの創出,③校内のコミュニティの活動を支える環境,があることが分かった.さらに,④端末活用を支える校外からの援助,もまた教員の端末活用には重要であることも分かった.端末活用を支える中学校における教員コミュニティとは,これまでとは異なった様相となる可能性があり,教科による分業が生じやすい教員コミュニティをどのように変化させていくのか,また教員と生徒が共に成長する教室内コミュニティをどのように作り上げていくのか,という観点が今後重要となることが示唆された.

  • 荒木 淳子, 高橋 薫, 佐藤 朝美
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47105
    発行日: 2024/07/20
    [早期公開] 公開日: 2024/04/05
    ジャーナル フリー 早期公開

    本研究の目的は,高等学校で探究学習を行った経験と大学での学び,キャリア探索との関連を明らかにすることである.全国の4年制大学1,2年生を対象にWebアンケート調査を実施し,高等学校での探究型授業経験と,大学でのキャリア探索,授業プロセス・パフォーマンス,ライフキャリア・レジリエンスとの関連を調べた.255名の回答を分析した結果,高校時代にSGH/SSHともに経験した回答者は環境探索の得点が有意に高く,SGH/SSHともに経験した回答者とその他の探究型授業をした回答者は探究型授業経験のない回答者よりも自己探索の得点が有意に高かった.一方,主体的な学習態度である授業プロセス・パフォーマンス,ライフキャリア・レジリエンスに有意な差は見られなかった.

  • 杉山 昂平, 執行 治平
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47036
    発行日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    習い事教室やスクールといった現場において趣味学習の支援を行う民間教育者は,教育,学習支援業に従事する専門的職業従事者とされるが,彼らの職業を成り立たせる教育・学習支援面での技能がどのようなものかは明らかにされていない.そこで,本研究では技能の一端として,顧客興味に依拠したレッスンの遂行方略を明らかにした.首都圏を中心に事業を展開する卓球スクールに所属する一般コーチ・高業績コーチ10人を対象にしたインタビュー調査と主題分析の結果から,コーチは共通して「会話による目標志向の興味把握」「興味に応じた練習メニューと会話の調整」「サービス業としての職業意識」という方略によってレッスンを遂行していることが示された.そのうえで,高業績コーチに特徴的な方略として「興味の変動に敏感な把握」「受容と提案による興味の共同的構築」「チームによる支援対象としての認識」が見出された.

  • 「専門的な学習共同体」発展に関わる学校長の語りを参照して
    後藤 壮史, 小柳 和喜雄
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47068
    発行日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    本研究では,ICT活用推進校を対象に学校設置準備段階から学校が設立し,学校研究が発展するまでの過程・方略の特徴を,学校長の語りから事例的に明らかにすることを目的とした.結果,対象としたA校の学校研究発展過程の特徴として,主に1)「グループ・アイデンティティ形成」が中核となって学校研究が発展していくこと,また2)学校設立から段階的に「分散型リーダーシップの発揮」が進み,管理職から実践的リーダーへとリーダーシップが移行していくことがわかった.また学校研究発展方略について,設置準備期には地方教育委員会が主体となって指標となる教育制度やカリキュラムを整えること,さらに開校後は管理職による「学校組織の理念や価値観の共有」,実践的リーダーを核とした「実践情報やノウハウの環流」と「小コミュニティごとの柔軟な意思決定」を段階的に行うことで,組織の持続可能性を考慮した学校研究発展が期待できることが示唆された

  • 普段の学習とテストに向けた学習に着目して
    橋本 真一, 鈴木 雅之
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47085
    発行日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    本研究では,1)普段の学習における方略使用度と定期テストに向けた学習における方略使用度の関連,2)方略の有効性の認知と方略使用度との関連について検討した.方略の有効性の認知については,学習有効性(学習内容を理解することを目的としたときの有効性の認知)と,テスト有効性(テストで良い点数をとることを目的としたときの有効性の認知)の2つに着目した.高校生201名から得られたデータについて,個人内相関係数の分布を検討した結果,普段の学習と定期テストに向けた学習における方略使用度が異なる生徒が一定数存在することが示された.次に階層線形モデルによる分析の結果,いずれの学習場面においても,学習有効性とテスト有効性は,方略使用度と同程度の正の関連を示した.また,これらの関連は生徒によって異なることが示されたため,達成目標の違いにより生徒による差異を説明できるか検討した結果,調整効果はほとんどみられなかった.

  • 上岡 伸, 中藤 路子
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47087
    発行日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2024/01/09
    ジャーナル フリー 早期公開

    本研究の目的は,学校事務職員を対象に企画された研修プログラムによって,所属校の業務改善に向けた自己調整学習が促進されるかどうかを検証することである.研修プログラムには学習者中心のデザインが取り入れられ,研修のタスクは,事前学習・業務改善の取組・成果報告会で構成された.そして4か月の研修期間中,それぞれ異なる学校に勤務する受講者たちは,6・7名の研修チームとなって互いにメンタリングを行いながらタスクを遂行した.5時点の縦断的調査から有効な26名分の回答が得られ,分散分析の結果,研修期間を通じて職場における自己調整学習は大きく促進されていた.ただし,研修終了後2か月経過時点での有意な逆戻りも見られ,研修前時点と比較すると差の効果量は中程度であった.

  • 上岡 伸, 中藤 路子
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47090
    発行日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/11/29
    ジャーナル フリー 早期公開

    本研究の目的は,ハイフレックス型研修の受講形態(対面orオンライン)に起因する学習効果の差を,傾向スコアとマルチレベルモデルを用いて検証することである.2021年から2022年にかけて実施された複数の教職員研修の受講者1,810名分のデータを用いてマルチレベルロジスティック回帰モデルによる分析を行い,得られた傾向スコアを基に1対1の最近傍マッチングを行った結果,92対184名分のデータが抽出された.マッチング後のデータを用いてマルチレベル順序ロジスティック回帰モデルによる分析を行ったところ,ハイフレックス型研修の受講形態に起因する学習効果の差の効果量はごく小さい値であった.教職員が個別最適に学ぶ環境を整備する上で,ハイフレックス型研修は有益な手段の一つとなり得ることが示唆された.

  • オンラインワークショップの実践を通じて
    福山 佑樹, 藤川 希美, 中澤 明子
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47053
    発行日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    プレFDは近年その重要性が指摘されるようになったが,その実施のためのツール開発研究はあまり行われてこなかった.本研究ではプレFDの中でもアクティブ・ラーニング型授業設計に注目し,特に目的-内容-方法-評価の繋がりの重要性について大学院生が学ぶためのツールとツールの使用方法を開発した.評価のためのオンラインワークショップを実践した結果,事前・事後のアンケートから,参加者はAL型授業設計に関する「目的」,「方法」,「評価」と,それらの「繋がり」に関しての「記憶」,「理解」,「応用」の能力に関する自己評価を高めていることが分かった.また,ワークシートの分析から,ツールは特に参加者の授業設計において「目的」と「方法」に対応する「評価」の設計を支援することで,目的から評価までの繋がりのある授業設計を行うことを支援したことが示唆された.加えて,ツールに導入した「目的」ごとに色分けしたラベルが「目的」・「方法」・「評価」の対応関係の検討や,授業設計に関する議論の促進に寄与した可能性が示された.

  • 後藤 崇志, 山下 冬華
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47061
    発行日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー 早期公開

    本研究では,実際の授業で課された課題に取り組む大学生を対象に調査を行い,解釈レベルの違いと大学生のレポート課題における先延ばしとの関連について,内発的動機づけによる調整効果も含めて検討した.2週間後にレポート課題の提出を控えた大学生に対して,課題への取り掛かりを開始する予定日および完了させる予定日への回答を求めた.締切後に実際に開始・完了させた日を尋ね,予定日からの遅延を先延ばし行動の指標とした.事前に学生に尋ねておいた解釈レベルの違いと内発的動機づけが先延ばし行動を予測するかを検討した.その結果,内発的動機づけが高い学生においては,課題を具体的に解釈しているほど先延ばしをしにくいことが明らかになった.動機づけと解釈レベルの両者に着目した心理プロセスを考察し,先延ばしを抑止するための方法について議論する.

  • 山本 良太, 石橋 純一郎, 佐藤 智文, 平野 智紀, 山内 祐平
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47039
    発行日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/10/30
    ジャーナル フリー 早期公開

    本研究の目的は,GIGAスクール構想で導入された端末の活用を支える同僚性に基づく教員コミュニティの形態を明らかにすることである.GIGAスクールで導入された端末を活用する12校の小学校に在籍する37名の教員を対象とした調査を行った結果,GIGAスクール構想下の教員コミュニティとは,①既存の学年などの教員組織やフォーマルだけでなくインフォーマルな教員間の関係性,職員室の物理的空間と端末が結びついたものであること,②端末導入による揺さぶりによって生まれた課題を解決する新しい活動に取り組むこと,③端末活用に必要な実践的な知見は分散されており,教員コミュニティだけでなく学級や学校外のリソースとのつながりによっても活動が支えられていることが分かった.しかし,こうした関係性の在り様は学級編成や教員の構成等によって左右されることから,それぞれの状況に応じた形態を検討することが適切である.

  • 飯田 和也, 久保田 善彦
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47054
    発行日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/10/12
    ジャーナル フリー 早期公開

    本研究では,地形の理解に基づいた浸水予想に着目し,3DCG教材と実物模型教材が地形の理解にどのような影響を与えるのか検討した.授業実践の結果から,以下の3点の知見が得られた.1点目は,教材単体での効果である.統計分析の結果から,谷や台地などの特徴的な地形に関しては,どちらの教材でも平面地形図に比べて有意に浸水予想が正確になることがわかった.2点目は,教材の組み合わせによる効果である.両教材を使用することにより,台地上の窪地などの微地形における浸水予想が,単体での観察に比べて正確になることが分かった.3点目は,地形の理解に与える影響の違いである.計量テキスト分析から,3DCG教材は拡大・縮小できる点が,立体模型教材は触覚を用いる点が,地形の理解に有用だったことが示唆された.

  • 大学の社会的責任への意識の醸成を目指して
    富岡 直美, 栢木 紀哉
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47065
    発行日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/10/12
    ジャーナル フリー 早期公開

    本研究は,大学の社会的責任への意識を醸成するための教職協働初任者研修を再構築し,仕事の価値認識という内面の変化に着目して評価することを目的とする.インストラクショナルデザインのチェックリストを指標に,不足している5項目について改善を行った.仕事の価値認識を確認するための質問項目,研修方法による効果に関する質問項目をそれぞれ7問設定し,2020年度から2022年度に実施した研修の参加者を対象に,研修前後に調査を実施した.本研究の結果,飽きない工夫や選択可能事項の設定によって効果的に研修目的や目標が達成される内容に改善することができた.さらに,参加者自身の仕事の価値認識の変化について捉えただけでなく,価値を感じて仕事に動機づけられ,自ら行動して成長するという仮説が支持された.

  • 藤野 友和
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47040
    発行日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー 早期公開

    本研究の目的は,高等教育機関のカリキュラム(教育プログラム)における科目間の関連性に着目し,大学のスタッフがカリキュラムの自己点検・評価および改善を行う際の支援や,履修する学生が科目選択を行う際の支援に活用するための方法を確立することである.はじめに,科目間関連性データの整備方法およびそのデータに基づく,科目間の間接的な関連性指標を提案する.この指標からさらに,科目のカリキュラム全体への影響度が得られる.これらの指標を用いることで,様々な観点からカリキュラムを可視化する方法を示す.著者が所属する学科のカリキュラムへ適用した例を通じて,その活用可能性について議論する.

  • 鵜瀬 亮一, 内山 渉, 大矢 真史, 西原 康行
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 47058
    発行日: 2024/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/09/11
    ジャーナル フリー 早期公開

    本研究はアイトラッキングシステムを用いて,野球における熟達投手コーチの有する投手指導技術に関する「みえ」をその視点と発話により顕在化させることを目的とした.その結果,「熟達投手コーチに頻出の6つの発話が存在すること」や「熟達投手コーチは投球中“非投球腕”,“ピボット脚”,“骨盤”の順に視点を置く回数が多いこと」,「それらの視点を置く回数は投球局面によって,各身体部位で特徴があること」などが明らかになった.本研究では,先行研究とは異なる方法論で投手指導技術に関する「みえ」の顕在化を試みたが,先行研究が対象とした熟達指導者の「みえ」と共通する部分については,投手指導技術における基本的な着眼点となる可能性がある.指導者の投手育成能力の向上のためにも,様々な方法で投手指導に関する「みえ」を顕在化させ,投手指導の評価法を確立するための基礎資料を増やしていく必要がある.

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