浸食地や荒廃地には有用な外生菌根菌が少ない。そのようなところで樹木の導入をはかるには,外生菌根菌を接種することによって,宿主の定着や成長促進効果を期待することができるといわれている。そこで,福島県磐梯山,鹿児島県桜島の火山性荒廃地や滋賀県田上山,愛知県愛媛大学演習林の花崗岩の貧栄養土壌を対象にして,有効菌の選抜,摂取方法の検討及び現地への適用試験を行った。コツブタケ属が,普遍的にみられ,しかも量的にも多かった。基本種をコツブタケとした3品種(コツブタケ,ナガエノコツブタケ,タマコツブタケ)の分布には地域差が認められた。基本種は,各地域においてクロマツ,アカマツ,ダケカンバ,ウダイカンバ,ヤシャブシに菌根を形成し子実体が確認された。その他にツチグリやウラムラサキも有力な候補と考えられた。接種源として用いた胞子もしくは栄養菌糸は,クロマツ,アカマツの当年生や2,3年生の苗木によく感染した。各試験地における経過をみたところ,感染苗の植栽,現地で接種した方法ともに,宿主の生残率が高く,成長を促進させている。特に芽生え段階の成育初期には対照区と比べて大きな差がみられた。また,被覆資材を用いた場合には,苗木の定着率を高め一層の生育促進効果があった。
抄録全体を表示