森林立地
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36 巻, 2 号
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  • 大石 康彦, 田口 春孝, 村井 宏
    原稿種別: 論文
    1994 年 36 巻 2 号 p. 1-14
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    森林環境の基礎的な要因である温熱環境をヒトの活動環境の視点から解明することを目的として,カラマツ・アカマツ人工林に設定した立木密度を変えた2試験区と対照区(草地)の3地点で,各1週間づつの四季を代表する期間に気象観測を行った。得られた資料から,気温・相対湿度・全天日射量・風速および温熱指標であるOxford index・Sol air temperature・Windchill indexの比較検討を行った。森林と草地の比較から,森林においては夏季には気温・全天日射量・Sol air temperatureが低いことにより暑熱環境が緩和され,冬季には気温が高く,風速・Windchill indexが低いことにより寒冷環境が緩和され,森林内は草地に比較して快適な活動環境であると考えられた。一方で,夏季に森林のOxford Indexが草地よりわずかに高いことは,高湿度による不快要素と考えられた。また,試験区相互の比較から,立木密度の高い試験区は立木密度の低い試験区よりSol air temperatureが低いことにより暑熱環境が,Windchill indexが低いことにより寒冷環境が,ともに緩和され,より快適な活動環境であると考えられた。一方で,夏季に立木密度の高い試験区のOxford Indexが立木密度の低い試験区に比べわずかに高いことは,高湿度による不快要素と考えられた。また,相対湿度は立木密度と関係があることから,立木密度の操作によるOxford Index低減の可能性が示唆された。さらに,全天日射量には立木密度と一定の関係が見られ,森林内の明るさの定量的調整の可能性が示唆された。以上の結果からSol air temperatureおよびWindchill indexが森林の温熱環境のヒトの活動環境の視点からの評価・検討に有用であることを明らかにした。
  • 高橋 輝昌, 生原 喜久雄, 相場 芳憲
    原稿種別: 論文
    1994 年 36 巻 2 号 p. 15-21
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    野外培養法の一つであるシリンダー法を用い,スギとヒノキの壮齢林(83年生)及び幼齢林(2年生)の表層土壌(地表0〜10cm)の窒素無機化量を自然により近い状態で推定した。壮齢林の斜面上部,中部,幼齢林の斜面上部にはヒノキが,壮齢林の斜面下部,幼齢林の斜面中部,下部にはスギが植栽されている。植生や斜面位置による土壌中(地表0〜10cm)の無機態窒素量の違いは明確でなく,年間を通して1〜10kg・ha^<-1>で,無機態窒素量に占めるNH_4-Nの割合は,壮齢林,幼齢林ともに斜面下部になるほど小さかった。1か月間の平均地温がおよそ5℃以上になると,みかけの窒素無機化が始まり,地温の上昇に伴って増加した。窒素無機化量は壮齢林,幼齢林ともに斜面下部になるほど多かった。窒素無機化量に占めるNH_4-Nの割合は壮齢林に比べて幼齢林で少なかった。また斜面位置による窒素無機化量に占めるNH_4-N割合は壮齢林の斜面上部になるほど高かったが,幼齢林では明かでなかった。1年間の窒素無機化量は壮齢林で45〜55kg・ha^<-1>,幼齢林で50〜80kg・ha^<-1>であった。
  • 田中 格, 松本 陽介, 重永 英年, 上村 章
    原稿種別: 論文
    1994 年 36 巻 2 号 p. 22-30
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    複層林下木の健全な育成を図るための基礎として,複層林下木の光環境と光合成生産に関連する種々の生態生理的特性を検討した。アカマツを上木とする複層林内の様々な光環境下で生育する,複層林の重要な下木樹種であるヒノキの当年生葉を研究対象とし,比葉面積(SLA),光合成能力,光-光合成特性,およびクロロフィル含量などを測定・比較した。光合成能力の測定には気相酸素電極法を用いた。その結果,着葉位置相対照度の低下にともなう反応として以下のことが明らかになった。(1)着葉位置相対照度40%〜50%以下で顕著にSLAが増加し,形態的な陰葉化が顕著に進む。(2)同40〜50%以下で,葉面積あたりの光合成能力が顕著に低下する。(3)光-光合成曲線の形状は,着葉位置相対照度の低下にともない初期勾配はほとんど変わらないものの,光補償点光量が低下し光量不足の環境化に有利に適応している。(4)葉面積あたりの全クロロフィル含量は着葉位置相対照度が低下してもほとんど変動しないものの,クロロフィルa・b比は顕著に低下し,林内の赤色光不足に適応している。さらに,着葉位置相対照度の低下にともなう光合成能力の低下の原因は,光合成系の活性(単位クロロフィルあたりの光合成能力)の低下のためであることを明らかにした。これらの結果から,ヒノキ当年生葉は,着葉位置相対照度40〜50%付近以下で光合成生産に関する形態的,生理的性質を大きく変化させることが明らかになった。
  • 伊藤 哲, 中村 太士
    原稿種別: 論文
    1994 年 36 巻 2 号 p. 31-40
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    森林動態における地表変動攪乱の位置づけを明確にし,森林動態研究の一つの方向性を示すことを目的として,地表変動攪乱の様式と更新過程の特徴を整理した。一般に地表変動と呼ばれる現象は,上部から下部への一連の物質流下現象であって,少なくとも洗掘(または削剥)と堆積という二つの要素からなるヘテロな空間を構成する。したがって,地表変動を林分レベルでの森林動態や植生パターン成立,種多様性などの説明原理として位置づける場合,内部にこのようなヘテロ性を包含する一連の流下現象を一つの単位として扱うには無理があり,洗掘(または削剥)・体積域の区分が地表変動の最も基本的な空間単位として重要であると考えられる。また,地表変動由来の攪乱は森林の階層構造の下層から上層へとその影響が広がるため,林冠の破壊を伴わない場合でも,林床の構造や更新基盤に大きな影響を与えうる。攪乱の性質と影響評価方法を1)物理破壊強度,2)生育・再生環境への影響度,および3)攪乱後の次期攪乱体制への影響度という視点から分類することで,他のタイプの攪乱との比較や森林動態における総合的位置づけが可能である。一つの森林内で,これらの影響度がそれぞれに異なる地表変動が発生することによって,攪乱を受けたパッチは異なる再生過程を経る。このことは,森林群集の種多様性や群集タイプの多様性をはじめとする構造的な不均質性を高める一つの原因となっていると考えられる。したがって,サイズ,強度や生育環境への影響度に関し幅広いレンジをもつ地表変動は,森林群集の多様性に大きく貢献していると考えられる。今後,地表変動攪乱を森林群集の長期的な動態や安定性の要因として位置づけるためには,個々の攪乱の影響評価とともに,攪乱によって形成される林縁の効果や地表変動の発生の時間的・空間的集中性の評価,解析が必要である。
  • 吉崎 真司, 村井 宏, 河合 英二
    原稿種別: 論文
    1994 年 36 巻 2 号 p. 41-54
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    砂漠地において,道路や農地を飛砂害から守るために造成する防風・防砂林への低木類導入の効果を明らかにする目的で,高木のみからなる樹林,低木のみからなる樹林,高木と低木を混植した樹林について風洞実験を行った。その結果,以下のことが判った。林帯及びその前後における風速減衰効果を高める林種としては,高木のみからなる林帯よりも高木と低木を混植した林帯のほうが効果は高い。低木の混植は,風上林縁の風速減衰,林内の林縁近傍における風速回復の抑制及び林内における風速減衰の程度を大きくする効果がある。その理由は,低木が遮風体として働くこと,及び床面付近の粗度を大きくするように働き林床部の抵抗を高めることにあると考えられた。高木と低木を混植した樹林モデルのなかでは,林帯風上側に高木帯,風下側に低木帯を配置した林型が,林帯及びその後方5H付近までの風速減衰が顕著であった。しかし,この林型は林帯後方への風速減衰範囲がせばまる傾向があった。飛砂捕捉効果は高木と低木を混植した林型が,高木のみ及び低木のみからなる林型よりも高く,高木と低木を混植した林型では林帯中央に低木を配置した林型が最も高かった。結論として,林帯各点での風速減衰・飛砂捕捉効果は必ずしも最大ではなかったが,林内における風速回復の抑制,林帯後方への風速減衰効果の持続性,さらに林内における堆砂様式の均一性という観点から,林帯の最前列に低木を,その後ろに高木と低木とを交互に配置した林型が防風・防砂林として望ましい林型と考えられた。
  • 岡部 宏秋, 江崎 次夫, 丸本 卓哉, 早川 誠而, 赤間 慶子
    原稿種別: 論文
    1994 年 36 巻 2 号 p. 55-63
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    浸食地や荒廃地には有用な外生菌根菌が少ない。そのようなところで樹木の導入をはかるには,外生菌根菌を接種することによって,宿主の定着や成長促進効果を期待することができるといわれている。そこで,福島県磐梯山,鹿児島県桜島の火山性荒廃地や滋賀県田上山,愛知県愛媛大学演習林の花崗岩の貧栄養土壌を対象にして,有効菌の選抜,摂取方法の検討及び現地への適用試験を行った。コツブタケ属が,普遍的にみられ,しかも量的にも多かった。基本種をコツブタケとした3品種(コツブタケ,ナガエノコツブタケ,タマコツブタケ)の分布には地域差が認められた。基本種は,各地域においてクロマツ,アカマツ,ダケカンバ,ウダイカンバ,ヤシャブシに菌根を形成し子実体が確認された。その他にツチグリやウラムラサキも有力な候補と考えられた。接種源として用いた胞子もしくは栄養菌糸は,クロマツ,アカマツの当年生や2,3年生の苗木によく感染した。各試験地における経過をみたところ,感染苗の植栽,現地で接種した方法ともに,宿主の生残率が高く,成長を促進させている。特に芽生え段階の成育初期には対照区と比べて大きな差がみられた。また,被覆資材を用いた場合には,苗木の定着率を高め一層の生育促進効果があった。
  • 仙石 鐵也, 原 光好, 森澤 猛, 石塚 和裕
    原稿種別: 論文
    1994 年 36 巻 2 号 p. 64-72
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    亜高山帯針葉樹林に酸性雨モニタリングステーションを設置し,1990〜1993年の4年間,降雨,雪,林内雨,樹幹流(トウヒ,コメツガ,シラベ,ダケカンバ)のpH,ECおよび化学性を観測した。その結果,林内雨と樹幹流は林外雨に比べpHが低くECが大きかった。また,どの降水に関してもECが大きい値をとるとpHが低下する傾向が見られ,これは特に林内雨とトウヒ,コメツガの樹幹流で顕著であった。また,林外雨のpHと林内雨およびダケカンバ,シラベの樹幹流は正の相関があったが,コメツガとシラベの樹幹流は林外雨のpHにかかわらず,ほぼ一定の低い値をとった。イオン濃度は林外雨に比べ林内雨と樹幹流は高い値を示した。また,各イオンの濃度は林外雨,林内雨,雪,樹幹流による違いがみられ,樹幹流では樹種による違いも認められた。降水中の成分は環境庁の観測よりもはるかに低濃度であり,大気からの混入の少ない清浄な降雨が得られた。しかし,年間の負荷量を試算したところ,年間降水量が多いために環境庁の全国平均値に近い値となった。
  • 斉藤 昌宏, 谷本 丈夫
    原稿種別: 資料
    1994 年 36 巻 2 号 p. 73-79
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    Recently, we are studying on the relation between the vegetation and its environment in an arid area in northwest of China. In this paper, we reported some results on the measurement of air temperature and relative humidity which were collected in August and September from different areas of Xinjiang Uygur Autonomous Region and Gansu Province in China. Values of moisture per dry air were read out as another humidity indicator by the psychrometric chart based on the relationship between temperature and relative humidity. In comparison, the diurnal ranges of temperature in the desert of Xiaotang, especially near the ground, are larger than those in the oasis of Aksu. Moisture in the oasis is generally slightly higher than in the desert. It is thought that conditions in areas without vegetation show more clear diurnal variation of air temperature than those in oasis. Differences on temperature and humidity were not apparent from areas with sparse stand of Populus to areas with sparse Tamarix scrub on a river side, and as the remaining Populus stands became fragmentary and sparse in the deseart areas. In some cases, however, values of temperature were almost lower, and values of air moisture were higher in Populus stands than outside the stands. The tendency than desert areas were more hot and dry than oases was clear based on the measurements done intermittently for one day trip from Aksu to Korla. As big cities produce "heat-island", oases produce "moist-island" in the arid region because they include wide and well-cultivated areas.
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