森林立地
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37 巻, 2 号
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  • 有光 一登, 荒木 誠, 宮川 清, 小林 繁男, 加藤 正樹
    原稿種別: 論文
    1995 年 37 巻 2 号 p. 49-58
    発行日: 1995/12/30
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    森林の水源かん養機能を計量評価する一つの方法として,流域土壌の保水容量を土壌深と孔隙率の積で表して計量する手法を用いて,長期にわたって水文データが蓄積されている森林理水試験地内で隣接し,林相・土壌条件の異なる二つの小試験流域における土壌保水容量を算出するとともに,得られた保水容量と両流域の水文データを比較し,土壌保水容量と流域の水流出との関係を検討した。群馬県の利根川源流域にある森林総合研究所宝川森林理水試験地の初沢流域の小試験流域1号沢および2号沢において,土壌断面調査および土壌深調査を行って,両流域の土壌図と土壌深分布図を作成し,それらを重ね合わせて両流域の土壌型・土壌深階級別の分布面積を求めた。さらに,調査した土壌断面の各層位の孔隙解析の結果をもとに,各土壌の土壌深と孔隙率の積を求めて,両流域の流域保水容量を算出した。流域保水容量は1号沢>2号沢であり,この傾向は粗孔隙中の小孔隙をもとに算出した小孔隙保水容量で最も顕著であった。これは,1号沢の土壌深が2号沢に比べ深いこと,小孔隙率が1号沢で大きかったためであった。一方,流量観測値をもとに両試験流域を比較すると保水機能に差があり,1号沢が渇水緩和機能に優れていた。これらのことから,流域の保水機能は土壌の粗孔隙保水容量,特にその内の小孔隙保水容量に依存していることが確認された。さらに,流域全体の保水容量の分布状況を把握し,流域間の比較を行うための保水容量分布図を作成した。
  • 小野寺 弘道, 田邉 裕美, 梶本 卓也, 大丸 裕武
    原稿種別: 論文
    1995 年 37 巻 2 号 p. 59-66
    発行日: 1995/12/30
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    奥羽山脈中央部に位置する焼石岳南麓の多雪斜面における積雪動態と樹木の生態的特性との関係について調べた。低木形態をとる落葉広葉樹林の大半は厳冬期季節風に対する風背斜面に分布していた。風背斜面には積雪グライドに起因する雪ジワと雪割れ目が広範囲にわたって分布し,しばしば全層雪崩の痕跡も観察された。林地には積雪挙動による浸食地形がみられた。他方,風衝斜面には中・大径木の根返りに伴って形成されたピットとマウンドが数多く観察され,斜面形は凹凸が連続する階段状であった。風背斜面に優先する樹種は,ヒメヤシャブシ,タニウツギ,ブナなどであり,風衝斜面に優占する樹種は,ブナ,マルバマンサク,ハウチワカエデなどであった。風背斜面の森林は風衝斜面の森林と比較してサイズがきわめて小さく,傾幹幅が異常に大きい葡匐形態をとっていた。傾幹幅には樹種による違いが認められるとともに,優占順位の高い樹種の傾幹幅は風背斜面では大きく,風衝斜面では小さかった。風背斜面においては積雪移動圧に対し,風衝斜面においては積雪沈降圧に対して適応した樹種が個体維持に有利であると考えられた。いずれの斜面にも出現するブナは,積雪移動圧よりもむしろ積雪沈降圧が卓越する積雪環境に適応した,耐雪性の高い樹種であると考えられた。多雪斜面に生育する樹木の個体維持は,風背斜面においては主に萌芽・伏条による更新に,風衝斜面においては主に実生による更新に依存していると考えられた。そのような樹木の生態的な特性は積雪環境の違いを反映し,群落分布に係わる積雪環境要因としては,単に積雪の量だけではなく,積雪の変態過程の違いというような質的要素や,積雪グライド・雪崩などの積雪挙動が重要な役割を果たしていると考えられた。
  • 高橋 輝昌, 生原 喜久雄, 相場 芳憲, 戸田 浩人, 福田 誠
    原稿種別: 論文
    1995 年 37 巻 2 号 p. 67-76
    発行日: 1995/12/30
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    雑草木と下刈りが幼齢林の養分循環に及ぼす影響を明らかにする目的で,スギとヒノキの幼齢林において,雑草木量と雑草木中の養分量の変化,下草通過雨の水質,下草通過雨に含まれる養分量と下刈りで林地に供給された有機物の分解を調査した。また,下草通過雨の水質を生態的に安定した壮齢林の林内雨と比較するために,隣接するスギとヒノキの壮齢林(85年生)で調査した。3〜5年生時の雑草木量は3〜5t・ha^<-1>であり,雑草木中の養分含有量は壮齢林での年間の吸収量に相当した。幼齢林では植栽木の養分吸収量が少なく,幼齢林の地上部への養分吸収の多くは雑草木によって行われていた。下草通過雨量は林外雨量の約90%であり,壮齢林の林内雨量の70%よりも多かった。下草通過雨のpH(5〜7)は,林外雨や壮齢林の林内雨のpH(4〜5)よりも高かった。また,落葉期にはN以外の溶存元素濃度が著しく増加した。このように雑草木はスギやヒノキの壮齢林に比べて元素が溶脱しやすかった。下刈りで土壌に供給された粗大有機物は急激に分解され減少した。下刈り後の累積地温と有機物の残存率の関係は指数曲線で近似できた。土壌への養分供給量は下刈りを行った方が,下刈りを行わなかった場合に比べて多かった。しかし,下刈り直後に多量の養分が土壌に供給され,養分吸収量の少ない植栽木には利用されにくいと考えられた。下刈りを行わなかった場合には雑草木から土壌への養分供給は比較的安定していた。
  • 加藤 正樹, 堀田 庸
    原稿種別: 資料
    1995 年 37 巻 2 号 p. 77-88
    発行日: 1995/12/30
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    全国107ヶ所の多目的ダム流域について,既存の資料を用いて流出解析を行い,これをもとに流域としての保水容量を推定した。表層地質別の平均流域保水容量は,変成岩類流域が253mm(最大376mm,最小164mm)で最も大きく,以下,花崗岩類流域252mm(最大416mm,最小74mm),火山岩類流域213mm(最大470mm,最小74mm),中古生層堆積岩類流域207mm(最大442mm,最小76mm),第三紀層堆積岩類流域188mm(最大401mm,最小67mm)であった。また,107流域全体の平均流域保水容量は219mmとなり,この値はダム湖の平均有効貯水容量233mmとほぼ同程度であった。地域的には近畿,四国地方が200mm以下であるのに対し,東北地方が最も大きく平均247mmであった。こうした違いをもたらす原因としては,表層地質分布の地域的なばらつきや火山灰の混入度合いの違いなどが考えられた。さらに,流出解析から推定した流域保水容量と孔隙解析から推定された森林土壌の保水量は,ほぼ同じレベルの値を示した。このことから,森林流域における水流出特性と土壌の保水特性は密接な関係にあり,直接流出のみならず基底流出にも土壌が強く関与していることが示唆された。
  • 原 光好, 仙石 鐵也, 藤森 隆郎
    原稿種別: 資料
    1995 年 37 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 1995/12/30
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    300余年生のヒノキ,サワラ,ウダイカンバの混交林を伐採し,下刈り,除草剤の処理によってクマイザサなどを抑制し,ヒノキを植栽した造林地にウダイカンバが発生した。ウダイカンバとヒノキの共存関係を調べるために,下刈りを停止した試験区を設けた。下刈り停止後8年目の調査では,多くの樹種が混交していたが,主にウダイカンバが上層を優占し,ヒノキが下層を占優する二段林が形成されつつあった。クマイザサはなお優占していたが,植栽されたヒノキは完全にその稈高の上に出ていた。一方,下刈り継続区は下刈り中止区に比べてヒノキの本数密度,樹高,優占度ともに低く,クマイザサの優占度,稈高は高かった。下刈りを継続した区でヒノキの成長が抑制された理由は,下刈りにより成長の早いウダイカンバなどの広葉樹の成立が抑えられ,それがクマイザサへの庇陰効果を低下させるとともに,ヒノキが凍害を受けやすい環境を生み出したものとも考えられた。伐採された前生林と同じ構造を有するとみなされる隣接する保護樹帯の林分の構造を調べた。高木層の優占度はヒノキ,サワラ,ウダイカンバの順に高く,ウダイカンバの本数比率は小さかったが,樹冠面積の占有比率は比較的高かった。亜高木層,低木層はある程度形成されていたが,林床は2m余りのクマイザサが密生しており,稚幼樹は極めて少なかった。
  • 山本 進一, 西村 尚之
    原稿種別: 資料
    1995 年 37 巻 2 号 p. 94-99
    発行日: 1995/12/30
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    Canopy gaps and gap phase replacement in an old-growth beech forest with dwarf bamboo understory, Wakasugi Forest Reserve, southwestern Japan, were surveyed to clarify the regeneration and to predict the future status of the beech forest. Percentage gap area (percentage of total gap area to the area surveyed) was 15.2%. Gap density was 13.7gaps ha^<-1> and mean gap size was 110.6m^2 ranging from 9.1m^2 to 285.0m^2. Gaps smaller than 160m^2 were much more abundant than larger ones (73.7% of total 19gaps). About 68% of all gaps were those formed by single gapmakers and the remainder were by multiple gapmakers. Dominant mode for the death of canopy trees was by broken trunks; 42.9% of canopy trees died by broken trunks. Death of canopy trees by leaving standing-dead was 10.7% and that by uprooting was 7.1% of all gapmakers (28trees). Density and size traits of canopy trees in this forest were not different with those of other old-growth beech forests. Of important canopy tree species, Fagus crenata and Cryptomeria japonica might regenerate in gaps from saplings recruited before gap formation, although Betula grossa and Quercus mongolica had no regenerations. Thirty-nine percent of the area under crowns of canopy trees sampled and 58% of the understory of all gaps surveyed were occupied by a dwarf bamboo, Sasamorpha borealis, and were without regenerations of any tree species. If this situation continues, it seems that density and number of species of canopy trees in this forest will clearly decrease.
  • 石川 幸男
    原稿種別: 資料
    1995 年 37 巻 2 号 p. 100-104
    発行日: 1995/12/30
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
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