300余年生のヒノキ,サワラ,ウダイカンバの混交林を伐採し,下刈り,除草剤の処理によってクマイザサなどを抑制し,ヒノキを植栽した造林地にウダイカンバが発生した。ウダイカンバとヒノキの共存関係を調べるために,下刈りを停止した試験区を設けた。下刈り停止後8年目の調査では,多くの樹種が混交していたが,主にウダイカンバが上層を優占し,ヒノキが下層を占優する二段林が形成されつつあった。クマイザサはなお優占していたが,植栽されたヒノキは完全にその稈高の上に出ていた。一方,下刈り継続区は下刈り中止区に比べてヒノキの本数密度,樹高,優占度ともに低く,クマイザサの優占度,稈高は高かった。下刈りを継続した区でヒノキの成長が抑制された理由は,下刈りにより成長の早いウダイカンバなどの広葉樹の成立が抑えられ,それがクマイザサへの庇陰効果を低下させるとともに,ヒノキが凍害を受けやすい環境を生み出したものとも考えられた。伐採された前生林と同じ構造を有するとみなされる隣接する保護樹帯の林分の構造を調べた。高木層の優占度はヒノキ,サワラ,ウダイカンバの順に高く,ウダイカンバの本数比率は小さかったが,樹冠面積の占有比率は比較的高かった。亜高木層,低木層はある程度形成されていたが,林床は2m余りのクマイザサが密生しており,稚幼樹は極めて少なかった。
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