1993年の8月,9月にタクラマカン沙漠北部および西部で,1994年9月に河西回廊で調査を行い,各オアシスの飲用水,河川水,地下水の電気伝導度を測定した。ほとんどのサンプルが電気伝導度で0.3mS/cmを超え,硬水であった。ただし,飲用水の中で最も電気伝導度の高いアラルのサンプルでも3.5mS/cmで,飲用の許容限界値4.7mS/cm以下であった。山間地を流れる河の水は概して電気伝導度が低く,タリム盆地に流れ込むと蒸発量が急に高まるため塩類の濃縮が激しくなることが示唆された。塩類濃度の高まりは蒸発作用だけでなく,低山丘陵地では地質年代に形成された含塩層が露出している地域を流れる間に,また,低地では塩類集積地の表層あるいは地下を流れる間に急激に起こることが推測された。一般的に塩類濃度は総可溶性固体量(TDS)で示され,WHOの水質基準もこれによって表されている。溶存する塩類の組成は水系によって異なるため,総可溶性固体量と電気伝導度の間には緩やかな回帰式しか求められないが,両者の関係式を用いて水質の基準を電気伝導度に換算し,両地域で得たサンプルの水質を評価した。この結果,少数のサンプルを除外すれば,ほとんどの水で耐塩性の作物に潅漑を行うことが可能と判断された。
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