森林立地
Online ISSN : 2189-6275
Print ISSN : 0388-8673
ISSN-L : 0388-8673
38 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 谷本 丈夫, 劉 岩, 里道 知佳, 大久保 達弘, 二瓶 幸志
    原稿種別: 論文
    1996 年 38 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    奥日光における森林衰退の実態とその原因を明らかにする目的で,空中写真と踏査により衰退地域の確認や地形との対応,代表的な枯死域から健全域に移り変わる場所の毎木調査を行い,枯死の形態や樹形と地形,土壌などの立地環境要因との関係を検討した。衰退・枯死の発生時期と原因を特定するため,枯死木に近接する生存木の年輪成長経過を調べ,主に台風との関連を解析した。酸性雨・霧の樹木や土壌への影響についても枝葉の変色などを観察した。これらの要素から森林衰退・枯死現象と立地環境との関係,衰退をもたらした原因について考察した。その結果,調査域で観察された枯死木はいずれも小枝が枯れ落ち幹や大枝のみが残る白骨状あるいは倒木になっており,ほぼ同じ形態であった。枯死木の存在する地形は,南東斜面で風の吹き抜ける場所,あるいは北西斜面でも尾根上部で南東風の吹き抜ける位置で,環境条件が類似していた。年輪解析の結果,奥白根山のダケカンバ,赤城のカラマツでは強風域において完全枯死,やや風の弱くなった場所においては枝の折損時の成長減少,その後,枝の再生によると思われる回復が見られた。念仏平,皇海山などの亜高山性針葉樹林では上層林冠の破壊にともなう前生稚樹の成長促進時期が同調し,とりわけ1982年の台風の襲来と一致していた。これに対し山頂風衝部では矮性化したシラベ類が枯れており,旗棹のように変形した樹形から常風的な季節風が枯損の原因と判定された。薙,崩壊地の周辺では季節的な常風に加えて土壌の崩落にともなう根浮き,倒木などでの枯損がみられた。これら以外ではコメツガやシラベ類に寒風害によって葉裏が褐色に変色した個体や落葉現象が認められたが,樹木全体が枯れる現象はなかった。したがって,奥日光の森林衰退は立地環境に対応して発生する風害を引き金とする,亜高山の森林における更新形態の一つであると判定された。
  • 吉武 孝
    原稿種別: 記録
    1996 年 38 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
  • 森澤 猛
    原稿種別: 記録
    1996 年 38 巻 1 号 p. 17-19
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    1996年4月4日から5日にかけ,日光にて「関東北部山地における森林の衰退現象」をテーマとする研究集会が森林立地学会により開かれた。これは第107回日本林学会大会(於筑波大学)に関連させて催されたもので,初日に講演会が,2日目には現地研究会が行なわれた。2日間で述べ121名が参加し盛会のうちに無事終了した。また,森林立地学会総会と懇親会も初日に行なわれた。以下にこの行事の概要を記録する。尚,「」内は講演者の直接の発言ではなく,講演内容の大意を筆者が口語として表わしたものである。
  • 眞田 悦子, 塩崎 正雄, 高橋 正通
    原稿種別: 論文
    1996 年 38 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    1954年の台風による風倒で,ほぼ完全に林冠が破壊された北海道大雪山の針葉樹天然林の土壌変化を,風倒前から継続してモニタリングした。調査地は風倒前に植生と土壌の帯状調査区を設置した所で,風倒前後の,堆積腐植型,表層土壌のpH,炭素濃度および交換性Caについて調査,分析した。風倒前に堆積腐植がモル型やモダー型であった土壌は,風倒後6年以内にムル型に変わりその状態が続いたが,26年目あたりから変化し,34年目以降モダー型になった土壌もあった。風倒前にムル型であった土壌は,風倒後も現在に至るまでムル型のままであった。土壌の化学性の変化は,風倒前の堆積腐植型の違いにより変化の傾向や程度が異なった。モダー型やモル型のような腐植の厚い土壌では,風倒後A層のpHは上昇し,炭素と交換性Ca濃度も上昇し,風倒後14〜22年目あたりから低下する傾向がみられた。ムル型土壌では,風倒直後にモダー型やモル型と反対に炭素や交換性Ca濃度が低下したが,その後は変化の程度が小さく,一定の傾向を示さなかった。これらの変化は,風倒後の堆積腐植の分解と再堆積に起因すると推察した。風倒前の土壌の化学性に戻るにはさらに年月の経過が必要であると予想した.
  • 戸田 清佐, 富田 守泰, 高田 秀樹
    原稿種別: 論文
    1996 年 38 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    岐阜県荘川村の落葉広葉樹混生林に設定した間伐試験地で,間伐後18年経過したところで間伐強度が肥大成長と材質におよぼす影響について議論した。主要構成樹種であるクリ・オオヤマザクラ・ホオノキとその他の樹種について,間伐後の成長を解析したところ,樹種や径級によって間伐効果に違いのあることがわかった。間伐後の直径成長率は,小径の個体ほど大きかった。クリやオオヤマザクラなどのように間伐効果が現れやすい樹種とホオノキ,トチノキなどのように,その効果が現れ難い樹種が存在することがわかった。間伐によって肥大成長が促進された個体とそうでないものの材質について検討した結果,環孔材のクリについては,気乾密度と曲げヤング係数が,平均年輪幅と正の相関を持つことがわかった。散孔材のオオヤマザクラとホオノキでは,材の気乾密度も曲げヤング係数も,平均年輪幅が大きくなるといくぶん値が低下することもあるが,年輪幅と材質とはほとんど無相関であった。今回解析した3樹種では,間伐によって年輪幅が広くなっても材の強度が著しく低下したと考えられる事例は認められなかった。
  • 並川 寛司, 王 風春
    原稿種別: 論文
    1996 年 38 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    中国東北部,黒竜江省寧安県の小北湖林場のチョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林に9方形区を設定し,樹高2m以上の個体について毎木調査を行った。チョウセンゴヨウは山地斜面の優占種であると同時に,谷部の湿性の立地に優占するマンシュウカラマツやハルニレとも混交し,立地の乾湿条件に対して広い分布範囲を示した。山地斜面の適潤立地のチョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林は2〜3層の階層をもち,高木層ではチョウセンゴヨウ,亜高木層あるいは低木層ではアムールシナノキとトウシラベ,低木層ではカエデ類が優占していた。チョウセンゴヨウは,チョウセンゴヨウ優占林の低木ないし亜高木層に少数ながら出現するが,ギャップが認められる林分には樹高2m以下の稚樹が多数定着しているのが観察された。また,山火事跡地のチリメンドロ・コウアンシラカンバ林の下層にチョウセンゴヨウが多数分布すること,およびチョウセンゴヨウ優占林の林冠を構成するチョウセンゴヨウがほぼ同齢であることから,この種は比較的小さな林冠の疎開,あるいは火災のような林冠の大規模な破壊の後に更新し,最終的に優占種となることが推定された。
  • 丸田 恵美子, 紙谷 智彦
    原稿種別: 論文
    1996 年 38 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    太平洋型ブナ林とみなされる神奈川・山梨県境の三国山において,豊作年の翌年の1994年に,ブナの実生の発生・定着過程を追跡調査した。実生の枯死要因としては,乾燥死・動物害・虫害・菌害が認められた。発芽時前後の動物による堅果の持ち去りや,発芽直後の動物による被食や根の乾燥死も,それぞれかなりの割合で発生し,太平洋型気候のもとで積雪の少ないことが,実生の生存に対して不利に働くことを示した。しかし一年目の生育終了時の生存実生密度は,順調な更新を行っている日本海型ブナ林に比して同等か,それ以上であって,ブナ林の更新に対して,その最初の段階である健全堅果の供給と当年生実生の発生・定着過程において,1994年のコホートについては主要な阻害要因はないと結論づけた。三国山の調査地はブナを含めた立木密度が3195本/haと高く,林床の相対照度が平均2.2%と暗いことから,2年目以降の実生の生育が順調に行えない可能性がある。
  • 鳥居 厚志
    原稿種別: 論文
    1996 年 38 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    滋賀県田上山(花崗岩地域)と兵庫県三草山(流紋岩地域)を対象に,未熟土壌の成熟に伴う諸性質の変化,とくに鉱物組成の変化を調べた.花崗岩土壌の一次鉱物組成は,土壌の成熟に対応して長石や雲母の比率の変化がみられたが,流紋岩土壌では変化が明確ではなかった.ただし花崗岩土壌,流紋岩土壌ともに磁鉄鉱やジルコンなど風化抵抗性の強い重鉱物の濃縮がみられ,土壌中での定量的な鉱物風化指標としての可能性が示唆された.花崗岩土壌の粘土鉱物組成は,土壌生成の初期から長石や雲母のカオリン化がみられ,成熟に伴って14Å鉱物やギブサイトが生成するプロセスがみられた.流紋岩土壌では土壌生成初期から既に14Å鉱物の生成がみられたが,成熟に伴って長石との比率が逆転する傾向がみられた.これらの分析結果から,花崗岩土壌,流紋岩土壌各々に3-4段階の鉱物の風化ステージが想定された.
  • 星野 義延, 笠原 聡, 奥富 清, 亀井 裕幸
    原稿種別: 論文
    1996 年 38 巻 1 号 p. 62-72
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    建設残土によって造成された東京湾の臨海埋立地のひとつである大井埠頭の一角にある樹木侵入期の草原において,樹木の侵入と定着についての調査を1986年に行った。調査地はヨシ,セイタカアワダチソウ,チガヤ,オギなどの地下茎で繁殖する風散布型の多年生草本植物の優占する群落が形成されており,樹木はその中に点在していた。樹木個体の分布は電線の下や排水溝がある場所で多くなる傾向が認められ,これらの構造物の存在が調査地の樹木個体を多くしている要因と考えられた。樹高3m以上の樹木の位置は,調査地に設けられている排水溝の近くに分布する傾向が認められた。出現した樹木のほとんどはヤマザクラ,エノキ,マルバシャリンバイ,ネズミモチ,アカメガシワなどの動物被食散布型の樹木であり,調査地への樹木種子の供給は鳥散布によるものが多いと考えられた。電線は鳥類の休息場所となり,電線下は周辺の公園などの植栽樹の種子が多く供給されていた。このような種子供給は都市域の埋立地にみられる特徴と考えられる。また,排水溝の掘削は植物の生育に不適な埋立地の土壌の改良と,栄養繁殖によって広がる多年生草本植物群落の分布拡大を抑制し,樹木が定着し,生育できるサイトを提供するものと考えられた。埋立地に発達する初期の森林群落としては,エノキ林やアカメガシワ林が考えられた。
  • 則定 真利子, 丹下 健, 丸山 温, 松本 陽介
    原稿種別: 論文
    1996 年 38 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    同一地域に植栽されたスギ科の常緑性4種(スギ,タイワンスギ,コウヨウザン,センペルセコイア)と落葉性2種(メタセコイア,ヌマスギ)の葉の水分特性の夏季から冬季にかけての変化を調べた。各樹種について東京大学農学部附属千葉演習林に生育する1〜3個体から枝葉を採取し,当年生葉の水分特性をプレッシャー・チャンバーを用いてP-V曲線(pressure-volume curve)法により測定した。落葉性2種のうちメタセコイアでは10月と8月とで葉が十分に吸水したときの浸透ポテンシャル(Ψ^<sat>_s),葉が膨圧を失うときの水ポテンシャル(Ψ^<tip>_w)に差がななかったのに対してヌマスギでは10月にΨ^<sat>_s,Ψ^<tip>_wが低下した。常緑性4種についてはいずれも気温が最も低い2月にΨ^<sat>_s,Ψ^<tip>_wが最も低かった。タイワンスギとコウヨウザンでは10月のΨ^<sat>_s,Ψ^<tip>_wが8月に比べて低かったのに対してスギとセンペルセコイアでは10月と8月とではΨ^<sat>_s,Ψ^<tip>_wに差が認められなかった。このような低温化にともなう葉の水分特性の変化の違いは各樹種の低温に対する感受性,適応性の違いを反映している可能性がある。
feedback
Top