森林立地
Online ISSN : 2189-6275
Print ISSN : 0388-8673
ISSN-L : 0388-8673
41 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 小谷 二郎
    原稿種別: 論文
    1999 年 41 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    冠雪害を受けたスギ人工林内における高木・低木性の9種落葉広葉樹の侵入様式を研究した。侵入した種の中で最も優占度が高かったのはミズキで,ついでウワミズザクラであった。9種は,ギャップ形成を機に侵入したが樹種により侵入パターンが異なり,2つの主なタイプが観察された。ミズキタイプ(ミズキ・ホオノキ・ヤマグワ)は,ギャップに依存しギャップ形成後数年間のみ侵入した。ウワミズザクラタイプ(ウワミズザクラ・ハナイカダ・ウリノキなど)は,ギャップに必ずしも依存せず連続して侵入していた。これらの結果から,侵入のために前者が急激な光の変化を必要とするタイプであるのに対し,後者は安定した光条件を必要とするタイプである考えられた。これらのタイプの分布様式は,侵入のためにミズキタイプは小ギャップを利用し,ウワミズザクラタイプはギャップ近くのスギの林冠下に侵入したことを示唆した。結果的に,これらの広葉樹がスギ人工林内において広くランダムに侵入するためには,比較的小さな林冠ギャップが頻繁に形成されることが必要と考えられた。
  • 文 〓植, 春木 雅寛
    原稿種別: 論文
    1999 年 41 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    この研究は昭和新山に成立した4つの先駆林分(ヤマナラシ,ミヤマハンノキ,ドロノキ,ニセアカシア林分)での各優占種の器官(葉,枝,根),林床(Ao層),落葉落枝(litterfall)における養分分布と含有量を明らかにするために行われた。葉における窒素量はヤマナラシとドロノキよりもニセアカシアとミヤマハンノキの方が高かった。養分は枝と根よりも葉に多く分布していることが明らかになった。各種調査林分の林床における窒素量は,他の林分と比べミヤマハンノキ林分が高い値を示した。林床における養分含有量はCa>N>Na>Mg>K>Pの順であった。下層植生の乾物量はニセアカシア林分で最も高かったが,林床における有機物の乾重は調査林分間に大きな差は見られなかった。1年間のリターフォールはミヤマハンノキ林分とニセアカシア林分がドロノキ林分とヤマナラシ林分より高い価を示しており,窒素含有率も窒素固定植物であるミヤマハンノキとニセアカシアが高かった。
  • 崎尾 均
    原稿種別: 論文
    1999 年 41 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    埼玉県の大滝村(山間地)と寄居町(平地)で8年間,降水のpHとECを測定し,浦和市(都市部)のデータと比較した。8年間におけるすべての降水のpH平均値は大滝村・寄居町・浦和市でそれぞれ5.08, 4.47, 4.53で,山間地の大滝村は他の2カ所より約0.5高かった。8年間のすべてのEC平均値は,大滝村・寄居町・浦和市で,それぞれ10.3, 21.3, 24.1μS/cmであった。大滝村のECは8年間を通して他の2カ所のほぼ50%であった。降水のCl^-濃度は大滝村・寄居町・浦和市でそれぞれ0.32, 0.75, 0.73mg/L,NO^-_3濃度はそれぞれ0.79, 1.74, 1.99mg/L, SO^<2->_4濃度はそれぞれ0.80, 1.65, 2.34mg/Lで寄居町と浦和市では大滝村の2倍以上の濃度を示した。寄居町の降水のpHとECは浦和市と差がなかったが,これによって東京湾地域から内陸部に向かって生じた大規模な気流によって大気汚染物質が輸送されていることが裏付けられた。また,山間地に位置する大滝村は,近くに大気汚染物質の発生源がないものの,わずかながら大気汚染物質の流入の可能性が示唆された。しかし,大滝村は他地域のバックグラウンドの降水の性質に匹敵しており,関東地方のバックグラウンド地域の一つと位置づけられる。
  • 井上 章二
    原稿種別: 論文
    1999 年 41 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    林野火災延焼拡大の動態を解析するためには,風向・風速データが不可欠であり,火災現場から離れた気象観測所のデータを用いることが多い。しかし,火災時の熱で発生すると考えられる局地風の風向・風速を知ることは困難である。本研究は,火災跡地の立木に残る燃焼痕(いわゆる樹木の片面燃焼痕)から火災時の現地の風向・風速を推定する方法を検討したものであり,燃焼痕に関係する因子を明確にするため風洞による燃焼実験を行った。風向については,いずれの実験条件においても,樹木の風下側の燃焼痕が風上側に比べて高い位置まで残っており,風向は樹木の燃焼痕から推定できることが明らかとなった。さらに,風上側の燃焼痕の高さは,風速が大きくなるほど低くなり,風下側の燃焼痕は風速とは無関係に直径が大きくなるほど高くなった。また,風下側の燃焼高と風上側の燃焼高の差(Hd)が,風速を推定する上で重要な因子であることが確かめられた。しかし,この結果を現地へ適用するためには,風洞実験と実際の林野火災とのスケールを考えると,風下側燃焼高と風上側燃焼高の比(Hr)も,重要な因子であると考えられ,次元解析の結果,次の実験式が導かれた。風上着火:H/D=1.86×10^<-6>(U・D/v)^<1.64>風下着火:H/D=7.24×10^<-5>(U・D/v)^<1.20>ただし,H=Hd×Hr,Dは直径,Uは風速,vは空気の動粘性係数火入れを利用した現地実験において,実験式の適用性を検討したところ,高い精度で火災時の現地の風速が推定できることが確認された。
  • 井上 章二
    原稿種別: 論文
    1999 年 41 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    前報において,筆者は火災跡地に残された樹木の燃焼痕から火災時の風速を推定するための実験式を提案し,現地実験においてこれらの実験式の適用性を検討した。本研究では山口県秋吉台と福岡県平尾台における火入れを利用した現地実験において,前に提案した実験式を用いて詳細な燃焼動態の解析を行った。試験地内に実験杭として皮付きスギ丸太を立て,火入れ終了後,火災時の風速を推定するために,片面燃焼高を測定した。主風の風向・風速を試験地の周辺,数カ所で測定し,さらに,火災動態図作成のために燃焼時の様子をビデオ撮影した。秋吉台試験地の燃焼動態は複雑であり,片面燃焼痕から推定された風向は,一定の方向を示さなかった。しかしながら,主風あるいは実験式から推定された局地風の情報,および,記録されたビデオテープから分析された燃焼の状態を総合することによって燃焼動態を6つのブロックに分けることができた。風速とこれら6ブロックの燃焼速度との関係について検討した結果,燃焼方向と風向が一致している場合は,風速の増大につれて燃焼速度は増加し,燃焼方向に対して逆風の場合は一定の燃焼速度であった。平尾台試験地では,斜面燃上がりの燃焼動態であり,片面燃焼痕から推定された風向は一定であり,主風向とは逆で斜面傾斜方向と一致していた。実験式によって推定された風速と斜面の最大傾斜角との関係を実験杭個々について検討した結果,両者に一定の傾向は認められず,実験杭位置における局所条件の影響ではないかと考えられた。しかしながら,実験杭個々の値の代りに傾斜階で区分し,その範囲の平均風速との関係を調べると,最大傾斜角が増大するにつれて,風速が増加する傾向を示した。
  • 玉井 幸治, 服部 重昭, 後藤 義明
    原稿種別: 論文
    1999 年 41 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    関西地域における落葉広葉樹二次林は林床面蒸発量が比較的多く,林冠上部から林床付近まで葉が間段なく存在するという特徴を持つ。この森林を対象に群落コングクタンスを同定した。また群落コングクタンス推定モデルであるJarvis-Stewartモデルを適用するなどして,日射量,飽差,気温の影響度について検討を行った。飽差の増加に伴って群落コンダクタンスのばらつきは減少し,ある一定の値に収束するという従来の報告と一致した現象が認められた。しかし収束した値は6mm・s^<-1>と比較的大きな値であった。また4〜10mm・s^<-1>の範囲に集中する傾向が認められた。これは林床面蒸発の影響によると考えられた。日射量の影響度を示す関数は,既報に比べて曲率の低い双曲線関数に同定された。これは林冠の低層に位置する葉からの蒸散や林床面蒸発の影響によるものと思われる。このグラフ形状は他の森林群落と比べて有意な違いがある場合もあった。気温の影響度を示す関数が最大となる時の気温は,ヨーロッパにおける例よりも高く,アマゾンにおける例よりも低く同定された。
  • 加藤 正吾, 山本 美香, 小見山 章
    原稿種別: 論文
    1999 年 41 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    落葉広葉樹林において上層から下層までの樹木の葉フェノロジーを調査した。調査地は,春先の3月下旬から4月上旬に林床の雪が完全に消えており,多雪地帯のように残雪が展葉を妨げる阻害要因とはなっていなかった。最も早く展葉したのは下層木のツリバナ,チョウジザクラであった。上層木で最も早く展葉したのはシラカンバ,ウワミズザクラで,最も遅く展葉したのはクリであった。上層木の展葉時期の差は一ヶ月程度であった。上層木は5月下旬以降に展葉する樹種が多かったが,ハイイヌガヤとリョウブ以外の下層木12種は,この時点ですでに展葉を開始していた。高木性樹種において,dbhの小さな個体の中に他の個体よりいち早く展葉する個体がみられた。以上より,下層に成立している個体の多くは上層の林冠が閉鎖する前に葉を展開し,上層と下層の葉フェノロジー差によって早春に好適な光環境を得ていることが示された。
  • 今矢 明宏
    原稿種別: 記録
    1999 年 41 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
feedback
Top