ヒノキ林林床への広葉樹リターの供給が土壌の養分特性に及ぼす影響について検討するために,隣接する落葉広葉樹林から落葉広葉樹リターが供給されるヒノキ林(広葉混入区),落葉広葉樹リターが供給されないヒノキ林(ヒノキ純林区),落葉広葉樹天然林(広葉天然林区)において,A_0層,鉱質土壌層の化学的性質と窒素無機化特性を調査した。A_0層量は広葉天然林区と広葉混入区で約17Mg ha^<-1>,ヒノキ純林区で約8Mg ha^<-1>であった。広葉天然林区のA_0層中のK,Ca,Mg含有量は広葉混入区よりも2〜7割多く,また,ヒノキ純林区の3〜9倍であった。鉱質土壌層の全C,全N含有率,CEC,土壌深0〜10cmまでの交換性Ca,Mg含有量およびpH(H_2O)は概ね広葉天然林区≧広葉混入区>ヒノキ純林区の傾向にあった。7月から11月にかけての鉱質土壌層(土壌深0〜10cm)のN無機化量は広葉天然林区,ヒノキ純林区,広葉混入区でそれぞれ100,77,67mg kg^<-1>であった。N無機化量に占めるNH_^+_4-Nの割合は広葉天然林区と広葉混入区で約4割,ヒノキ純林区で約1割であった。以上の結果から,広葉樹リターの供給はヒノキ林の土壌養分特性の改善に概ね有効であると考えられる。
抄録全体を表示