森林立地
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43 巻, 2 号
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  • 杉本 真由美, Soontorn Khamyong, 川崎 圭造
    原稿種別: 論文
    2001 年 43 巻 2 号 p. 33-44
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    タイ北部チェンマイ郊外に位置するMae Chaem地方において,落葉フタバガキ林(Dry dipterocarp forest,以後DDFとする)と落葉樹混交林(Mixed deciduous forest,以後MDFとする)の特徴を顕著に表す林の植生と土壌の断面形態および化学的性質について調査を行った。DDFでは30科56種,MDFでは28科77種が確認された。DDFにおいて,フタバガキ科3種の胸高断面積が全体の75%を占めていた。一方,MDFにおいてはDDFに確認されなかったタケ類の根元断面積がヘクタールあたり26m^2を占めていた。マメ科の胸高断面積が全体の41%を,クマツヅラ科が18%を占めていた。DDFではヘクタール当たりの立木本数はMDFを上回っていたが,胸高断面積はMDFの値とほぼ同じであった。DDFは極端に偏った植生で構成されており,極めて単純な林であった。一方,MDFはDDFに比べて出現樹種数が多く,より複雑な林であった。土壌養分含有量は土壌断面上部に顕著な差がみられ,MDFに比べDDFにおいて少なかった。DDFでは,調査地の上,中,下部という位置による土壌化学性の相違は認められなかったが,MDFではpH,可給態リン酸,全炭素,全窒素,置換性Caにおいて斜面下部で含有量が多く,有意な差が認められた。
  • 佐々木 重行, 桑原 康成, 高宮 立身, 春海 賢一, 横尾 謙一郎, 水久保 孝英, 前迫 俊一, 漢那 賢作
    原稿種別: 論文
    2001 年 43 巻 2 号 p. 45-52
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    全国規模での酸性雨及び森林の衰退に関するモニタリング調査が20km×20kmに1箇所の割合で森林に固定調査地点をもうけて実施された。その第1期として1990年から5年かけて調査が行われた。雨水の調査は6月の10日間(雨期)に採取し分析された。森林の土壌の分析,森林の衰退度の調査も行った。本報告は,この期間の九州地区における雨水・土壌の特徴及び森林の衰退についてまとめたものである。九州地区での雨水のpHはいずれも酸性を示しており,pH5.6以下の雨水が観測された地点は80%以上であった。また,北部九州で降水のpHが低い傾向にあった。全国と比較して,Cl^-,NO_3^-,SO_4^<2->,K^+が低かった。他の成分に違いは見られなかった。土壌のpHは九州では平均5.1で,全国の平均とほぼ同じであった。土壌のpHは九州北部で低く,南部で高い傾向にあった。土壌の交換性(Ca+Mg+K)は全国の平均より低かった。また,交換性Alは土壌のpHが5.2以下になると直線的に増加する傾向が見られた。湿性土壌や火山灰を起源とする土壌でpH,交換性のK,Ca,Mg濃度が高く,酸性雨に対する緩衝能が高いと考えられた。スギ林とヒノキ林では,ヒノキ林でpHや交換性塩基濃度が低かったが,これは立地的な要因によると考えられた。森林の衰退は全体の2%であり,それも軽微な衰退であった。
  • 高木 正博, 野上 寛五郎
    原稿種別: 論文
    2001 年 43 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    宮崎大学農学部附属田野演習林内のコジイ林とスギ林において林外雨,林内雨,樹幹流及びA_0層通過水を3年間採取し,それらのイオン濃度を分析した。林分全体の酸中和能,すなわちA_0層通過後の年平均水素イオンフラックスはコジイ林とスギ林で違いがなかった。しかし中和反応が主に行われた過程は異なり,コジイ林では樹体であり,スギ林ではA_0層であった。A_0層で酸が消費された原因として,マグネシウムイオンおよびカルシウムイオンとの交換反応が示唆された。特にスギ林のA_0層の高い酸中和能はリターに多く含まれていたカルシウムによってもたらされていたものと考えられた。
  • 松本 陽介, 野田 巌
    原稿種別: 報告
    2001 年 43 巻 2 号 p. 59-73
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
  • 黒田 吉雄, 内田 煌二, 佐藤 美穂
    原稿種別: 報告
    2001 年 43 巻 2 号 p. 75-82
    発行日: 2001/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    筑波大学演習林が所在する,八ヶ岳東山麓の野辺山ケ原は冷温帯性ミズナラを主体とした,天然生広葉樹二次林が分布している。また,カンバ類が良く発達し混生林を構成しているが,本地にはブナの自生地が確認されていない。この原因解明のため,ブナ・ミズナラの開芽時期と晩霜が発生する時期について,1993年から1998年の6年間に渡って調査した。ブナの開芽は5月2日〜5月24日の間に起こり,開芽期間に22日間の差が認められた。一方,ミズナラの開芽は5月11日〜5月31日の間に起こり,開芽時期に20日間の差が認められ,平均9日(7日〜14日)ブナより遅いことが確認された。開芽日の日平均気温は,ブナで10〜13℃およびミズナラで11〜12℃,また,積算温度(6年間の平均値)も算出した。調査年により晩霜は5月9日〜5月28日の間に発生した。この晩霜発生期間は,ブナの開芽および開葉後にあたりそれが原因でブナの葉の枯死および枯死木も発生した。一方,ミズナラでは晩霜を受けない年もあったが,晩霜を受けても開芽直後および開葉後の葉には可視被害は殆ど認められなかった。このような両樹種の樹種特性の差が分布を規定しているものと推論された。
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