森林立地
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49 巻, 1 号
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  • 池田 史枝, 菊池 多賀夫
    原稿種別: 論文
    2007 年 49 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    南アルプス仙水峠の岩塊地には,シラビソ・オオシラビソ林,ハイマツ・コメツガ低木林,および岩塊荒原がみられる。岩塊地のなかでの植生景観の分布とその成立要因を明らかにするために,各植生景観の地形条件,表層堆積物の状態を比較した。植生景観を3つのタイプ(高木林,低木林,荒原)に分類し,荒原は島状に散在する低木林のサイズから大形島状型,小形島状型に細分した。高木林型は,開析作用が及ぶところ,あるいは尾根筋や遷急線にみられた。低木林や大形島状型の荒原は斜面中・下部の舌状地形の平坦面に,小形島状型の荒原は舌状地形の前面や線形凹地に分布していた。岩塊地の表層における無機質細粒物層の出現率は,高木林,低木林,大形島状型の順に低下した。小形島状型は,細粒物質層の欠如と岩塊破砕層によって特徴づけられ,また,侵入した樹木は矮生化していた。以上のことから,表層堆積物の状態は植生景観の成立に大きく関与しており,とくに無機質細粒物層の存在が森林発達をもたらし,粗礫の集積がそれを阻害すると考えられた。
  • 安田 正次, 沖津 進
    原稿種別: 論文
    2007 年 49 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    群馬県・新潟県の県境に位置する平ヶ岳頂上部の湿原にハイマツなどが侵入している。この原因は気候変動によるものと考えられるが,具体的な気象要素が何であるかは明らかになっていない。そこで,湿原周囲に生育するハイマツの年輪幅の変動と,近隣地域で観測された気温,降水量,晴天日数,曇天日数,降雪日数,年最大積雪深,積雪終日,積雪開始日の各気象要素との比較を行った。その結果,平ヶ岳湿原に成育するハイマツの年輪幅は,前年と当年の夏期の気温,前年の夏期の晴天日数および年最大積雪深との間に負の相関を,前年と当年の春期の降水量および当年春期の雨天日数との間に正の相関を示した。このうち,最も強い相関がみとめられた夏期の気温がハイマツの年輪幅変動の主要因であることが明らかとなった。この結果は,既存の研究結果と異なっていたが,湿原の過湿な環境でハイマツの根が発達することができないために水分不足に陥りやすいためであると考えられた。
  • 奥田 賢, 美濃羽 靖, 高原 光, 小椋 純一
    原稿種別: 論文
    2007 年 49 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    京都市周辺の都市近郊二次林において,近年,分布を拡大しているシイ林について,その拡大過程を解明し,今後のシイ林の拡大について考察した。2004年に撮影したデジタルオルソフォトおよび1987年,1975年,1961年撮影の空中写真を判読することによって,各年のシイの樹冠分布図を作成し,さらに1936年のシイ林の分布図も併せて比較を行うことでシイの分布拡大過程を解明した。また,現地踏査によって林冠下のシイの分布図作成を行うことによって,現在のシイの分布状況を把握した。その結果,以下のことが明らかになった。1)シイは1961年以降に分布を拡大した。2)シイの全樹冠面積は1961年には6.9haであったが2004年には32.1haに達した。3)2004年の時点で調査地の東側斜面において林冠に達しているシイはほとんどなかった。4)しかし,現地踏査によって,東側斜面の林冠下にシイの分布が確認された。このような東山における1960年代以降のシイ林拡大は,1960年代から始まったガス,電気の普及に伴う,柴刈りなどによる森林への人為的な影響の減少や1970年代以降のマツ材線虫病によるマツ枯れが遷移を促進させたことなどが考えられた。また,2004年の時点で林冠にシイが確認されなかった東側斜面の多くの地域で林冠下にシイが確認されたことから,今後,シイ林は東側斜面でさらに拡大する可能性が高いと考えられた。
  • 渡辺 直史, 梶原 規弘, 塚本 次郎
    原稿種別: 論文
    2007 年 49 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    針葉樹人工林の保育作業の省力化と公益的機能の向上をねらいとして,近年,実施例が増えつつある強度間伐と針広混交林への誘導に対して,支障植物と考えられるウラジロとコシダの成立立地を定量的に記述した。ヒノキ人工林の林床植生として,ウラジロとコシダは共棲みの傾向を示した。そこで,ウラジロ・コシダ域(温量指数105〜110以上の地域)のヒノキ人工林を,ウラジロとコシダを合わせた生活型「ウラジロ・コシダ」の被度を基準に,一定水準以上の林地:「ウラジロ・コシダ型」と,それに達しない林地:「それ以外」に分け,両者の立地条件を対比した。「ウラジロ・コシダ型」の出現頻度はヒノキ地位指数14.0未満で明らかに高かったが,地位指数の座標軸上での両者の分離は不完全であった。「ウラジロ・コシダ型」の林地の土壌化学性は相対的に強酸性で,交換性塩基濃度が低く,交換性Al濃度が高く,高C/Nであった。これらはいずれも乾性立地に起因する性質であり,pH(H_2O)5.0以下で代表させることができると考えた。明瞭な尾根型斜面が「ウラジロ・コシダ型」をもたらす最も重要な地形因子であった。以上から,「ウラジロ・コシダ型」の適地,すなわちヒノキ人工林の針広混交林への誘導困難地の立地の目安として,ヒノキの地位指数:14.0未満,pH(H_2O):5.0以下,地形:明瞭な尾根型斜面,を提案した。
  • 小山 浩正, 八坂 通泰, 寺澤 和彦, 今 博計
    原稿種別: 論文
    2007 年 49 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    ブナ林は前年の10倍以上の開花がないと虫害が発生して凶作年になるとされている。ブナ林で最大雌花開花密度(Fmax)の存在を仮定すると,その1/10以上の開花をした場合の翌年は確実に凶作になると考えられる。したがって,ある年の冬芽の調査により翌年の開花数がFmaxの1/10以上と推定された場合には,2年後は凶作が予測される。これを確かめるために,全国の25ヵ所のブナ林の開花量に関する文献および現地調査の結果を解析したところFmaxは1,200個/m^2と推定された。さらに,北海道西南部のブナ林において,その1/10である120個以上の開花をした翌年はほぼ確実に凶作になることが確かめられた。したがって,秋の冬芽の調査から2年後の凶作を予測できる場合があることが確かめられ,ブナの天然更新や苗木造成についてより柔軟な計画が立てられると期待できる。
  • 吉川 正人, 野田 浩, 平中 晴朗, 福嶋 司
    原稿種別: 論文
    2007 年 49 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    本州中部の礫床河川氾濫原には,コナラが優占する落葉広葉樹林がみられる。本研究では,栃木県の蛇尾川と大谷川,山梨県の小武川の3河川を対象に植生調査と表層堆積物の調査をおこない,氾濫原に成立するコナラ林の立地と種組成の特性を明らかにした。氾濫原のコナラ林の立地は,河床礫の上に砂質の細粒土砂が薄く堆積した,土壌の未発達な場所であり,河川の増水による氾濫堆積物上であることが明らかであった。コナラ以外にもクリ,ケヤキ,シデ類,サクラ類,カエデ類,アカマツ,モミなど多数の樹種が混生していた。また,林床にササが密生することはまれであった。氾濫原以外の周辺地域に成立しているコナラ二次林と比較すると,種組成は大きく異なっていた。特に,林冠にケヤキをまじえ,渓谷林構成種を多く含むこと,二次林に一般的なツツジ科植物の多くが欠落し,草原性の植物も少ないことなどから,二次林とは明瞭に区別された。また,気候的にはいずれもWI=85℃・月前後,CI=-10℃・月未満の中間温帯林の分布域に位置していた。以上のような特性から,今回の調査地域にみられた氾濫原のコナラ林は,農用林として維持されてきたコナラ二次林とは由来,種組成とも大きく異なる森林群落であり,本州中部の低標高域の礫床河川における河畔林の一型とみなすことができた。
  • 平井 敬三, 野口 享太郎, 溝口 岳男, 金子 真司, 高橋 正通
    原稿種別: 論文
    2007 年 49 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    森林土壌の現地窒素無機化速度をレジンコア法により,深さ別および季節別に測定し,全窒素無機化量や年間の窒素無機化量に占める20cm深以下の下層土や冬季の割合を評価した。対象は北関東地方の低山帯における同一流域の異なる斜面位置に分布するスギ林および広葉樹林土壌である。窒素無機化速度は斜面下部の土壌で最も大きく,斜面上部ほど小さくなった。また,窒素無機化速度は積算地温と正の相関がみられた。50cm深までの年間の窒素無機化量は斜面中部で176.6kgN ha^<-1>yr^<-1>と最も多く,窒素無機化速度が大きな斜面下部の窒素無機化量は124.6kgN ha^<-1>yr^<-1>と少なかった。深さ50cmまでの窒素無機化量に対する20cm以下の下層土の割合は,斜面下部で41%,斜面中部で30%,斜面上部で43%であった。窒素無機化量は温度の高い夏季の5〜8月に多く,年間窒素無機化量の31〜45%を占めた。しかし,10〜2月の冬期にも年間窒素無機化量の10〜32%が無機化されていることが明らかになった。樹木等による窒素吸収の少ない冬季に生成する無機態窒素は系外へ流出する可能性がある。一方で,冬季に降雨が少ない地域では春まで土壌に残存し,成長開始期の窒素供給源になることも考えられる。本研究および既存の結果から,今後,立地条件の異なる土壌において窒素循環における下層土の役割や冬季の無機態窒素の動態をより詳細に研究する必要性が指摘される。
  • 豊田 貴樹, Ruben C. Mabesa, 谷口 敏彦, 戸田 浩人, 生原 喜久雄
    原稿種別: 論文
    2007 年 49 巻 1 号 p. 61-71
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    フィリピンのルソン島中部に位置するラモン湾ラガイ地区において,17年前に放棄された養殖池と22年前に養殖池建設のため伐採された後に放棄された場所(養殖放棄地という)と,隣接するマングローブ二次林において樹種分布,冠水状況,土壌基質の全Na濃度及び地表水の全塩分濃度及び酸化還元電位を調査した。二次林におけるマングローブ樹種の出現と冠水状況の関係から,1ヶ月間の冠水日数および連続非冠水日数を指標とした各樹種の適正生育範囲が示された。最も海側で優占して出現したRhizophora apiculata(Ra)の冠水/連続非冠水日数は,24〜21日/3〜4日,Ceriops tagal(Ct)は22〜17日/4〜7日,Lumnitzera littorea・Scyphiphora hydrophyllacea(Ll・Sh)は21〜13日/5〜9日,Avicennia officinalis(Ao)は13〜9日/9〜16日,最も陸側に出現したHeritiera littoralis・Intsia retusa etc.(Hl・Ir)は9〜0日/16〜30日であった。また養殖放棄地において冠水/連続非冠水日数が30日/0日の場所ではマングローブの出現がみられなかったことから,このような場所ではマングローブが自然に回復することが難しいものと判断された。また二次林では,海水の冠水頻度の違いが海から陸にかけての土壌基質中の全Na濃度と地表水の全塩分濃度及び酸化還元電位の変化となって発現し,マングローブ樹種の出現範囲にも影響を及ぼしていることが明らかとなった。他方,養殖放棄地では土壌基質のNa濃度や酸化還元電位で未だに撹乱の影響が見られることがわかった。
  • 門脇 正史, 遠藤 好和, 井波 明宏, 滝浪 明
    原稿種別: 報告
    2007 年 49 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    2000〜2002年に南アルプスの静岡側における天然生林で,ニホンジカによる樹木への被害調査を行った。2つの調査区(20m×30m)における調査樹木121個体のうち,ダケカンバ51個体,オオイタヤメイゲツ32個体,ミヤマアオダモ20個体,ナナカマド10個体が全体の約93%を占めていた。3年間のシカの食害によるナナカマドの被害率は90%の9個体であったが,他の樹種では食害が観察されなかった。角磨ぎの被害率は,ナナカマドで90%の9個体と最も多く,次いで,オオイタヤメイゲツ34.4%の11個体,ミヤマアオダモ30%の6個体,ダケカンバ5.9%の3個体の順であった。この4樹種間で食害および角磨ぎ被害率に有意差があった。また,これらの樹種間の胸高直径に有意差がなく胸高直径階級も重複していたので,被害が樹種間の胸高直径の太さに起因していないと考えられた。食害および角磨ぎの両方がナナカマドで最も多く観察されたことより,シカがこの種を選択することが示唆された。
  • 服部 大輔
    原稿種別: 記録
    2007 年 49 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    2007年の4月4〜5日に九州で森林立地学会の現地研究会が行われた。参加者の一人として,今回の現地研究会の概要と感想をここでお伝えしたい。
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