森林立地
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49 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 澤田 智志, 加藤 秀正
    原稿種別: 論文
    2007 年 49 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    秋田地方のスギと広葉樹の混交林において,スギとブナの養分動態の違いが表層土壌の化学性におよぼす影響を比較検討した。調査地内のスギの樹冠下ではスギの本数割合が高くなるにつれて土壌に供給されるスギのリター量が多くなった。そのためO層にカルシウムを主とする多量の塩基が蓄積し,土壌表層部の塩基飽和度が高くなり,土壌pHは上昇した。一方,ブナ樹冠下ではスギ樹冠下と同様に全炭素量は高くCECが大きいものの,単位面積あたりのリターからのカルシウム供給量が少ないため,土壌表層部の塩基飽和度は低く,pHは強酸性を示した。スギの樹幹流のpHは4.3の強酸性であったが,樹幹流として土壌に供給される量は32kg m^<-2>と少なく,降雨よりもpHが5.6と高い林内雨の方が1,134kg m^<-2>とはるかに多く土壌に流入していた。林内雨と樹幹流から供給されるカルシウムやマグネシウムは,スギおよびブナ樹冠下のO層および土壌の蓄積量に比べて著しく少なかった。ただし,カリウムはブナ樹冠下では樹幹流と林内雨から供給されるO層の量より多かった。このように混交林の上層を構成するスギとブナの養分動態の違いが土壌表層部の化学性に影響を与えており,林内雨や樹冠流よりも混交林を構成する樹種や密度が表層土壌の化学性に重要な影響を及ぼしているものと判断された。
  • 田村 淳
    原稿種別: 論文
    2007 年 49 巻 2 号 p. 103-110
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    シカの採食圧を受けてきた丹沢山地冷温帯自然林の4タイプの林床型,すなわち短茎草本型,高茎草本型,スズタケ型,ミヤマクマザサ型の植生保護柵内外で10年間の下層植生の変化を調べ,シカの採食圧の高まる前の状態に柵内の植生が変化するかどうかを検討した。その結果,どの林床型も植生保護柵を設置して10年経過すると柵内で低木層の植被率が増加し,低木層の種数も増加した。スズタケ型では低木層でスズタケの被度が大幅に増加した。草本層の種組成の変化は林床型によって異なったが,柵内では全体として直立型の多年生草本が増加する一方で,小型の多年生草本や不嗜好性植物が減少する傾向があった。さらに,高茎草本型ではシカの採食圧により減少したとされる絶滅危惧種も出現した。一方柵外では10年経過してイネ科の一年生草本や小型の多年生草本が増加したが,植被率や種多様性は減少しなかった。以上のことから,丹沢山地の冷温帯自然林ではシカによって衰退した下層植生でも10年間シカの採食圧を排除すると以前の植生の状態に変化すると結論した。
  • 山川 博美, 伊藤 哲, 中尾 登志雄
    原稿種別: 論文
    2007 年 49 巻 2 号 p. 111-122
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,50年生スギ人工林において伐採前の下層植生と伐採後の実生の発生に対する隣接照葉樹二次林(照葉樹林)からの林縁効果について解析した。伐採前のスギ人工林の下層植生の分布に対する隣接照葉樹林からの林縁効果は,林縁から20-30m程度まで認められた。下層に確認された樹種のうち,スダジイ,イチイガシおよびハナガガシなどの重力散布型の木本種は,タブノキおよびヒメユズリハなどの被食散布型の木本種と比較して個体数が少なく,特に林縁から近い範囲に集中して分布していた。林縁から30m程度までの範囲で,伐採1年後に萌芽更新を含む前生樹由来の更新個体が多かったことから,比較的早く森林が再生すると考えられた。伐採後に新たに発生した照葉樹林構成種の実生も,林縁付近に偏って発生していた。発生した実生のうち,タブノキやクスノキなどの被食散布型の木本種では発生個体数が比較的多かったが,アラカシやスダジイなどの重力散布型の木本種の発生個体数は少なかった。これらの結果から,伐採跡地に隣接する照葉樹林は,伐採後の森林の再生に対して前生樹(下層植生)からの更新および伐採後に発生する実生による更新の両面への影響を通して森林の再生を早めることが示唆され,その効果が見られる距離は林縁から30m程度であった。
  • 平井 敬三, 金子 真司, 高橋 正通
    原稿種別: 論文
    2007 年 49 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    日本の気候帯を代表する森林の表層土壌中の現地窒素無機化速度および無機化量を把握することを目的に,レジンコア法による野外培養法で窒素無機化速度を測定した。現地窒素無機化速度や無機化量は温帯土壌で大きく,亜寒帯や亜熱帯土壌で小さかった。現地窒素無機化率は亜寒帯から暖温帯へと大きくなった。一方,室内培養による窒素無機化速度や無機化率は亜寒帯の土壌で高く,気温が高い環境下の土壌ほど小さくなった。室内培養による窒素無機化速度は全窒素含有率と有意な正の相関が認められた。室内培養による窒素無機化速度と,現地と室内培養における積算気温の比から求めた現地の窒素無機化ポテンシャルは現地窒素無機化速度に比べて大きく,より寒冷で室内培養温度と現地の温度差が大きい積算気温比が小さい土壌ほど,窒素無機化ポテンシャルと現地無機化の速度比が大きかった。全窒素含有率,積算気温比および土壌型を要因とした重回帰モデルから現地窒素無機化速度を推定した結果,多くの土壌では推定値と実測値との関係は良好であった。このことから,土壌の全窒素含有率と,アメダスデータや土壌図など容易に入手可能なデータを用いて現地の窒素無機化速度を推定するこの方法は有効であると考えられた。
  • 篠宮 佳樹, 山田 毅, 鳥居 厚志
    原稿種別: 論文
    2007 年 49 巻 2 号 p. 133-144
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    国内でも有数の多雨地域である高知県西部,四万十川源流域に位置する森林流域において,大雨(総降雨量100mm以上のイベントとする)を含む降雨イベント時の渓流水質(Cl^-,SO_4^<2->,NO_3^--N,Na^+,K^+,Ca^<2+>,Mg^<2+>,SiO_2)の変動パターンを分類し,L-Q法に対する適合度を比較した。試験流域の面積は18.7ha,平均傾斜37°,植生はモミ・ツガ天然林,地質は堆積岩,調査は総雨量18〜289mmの17降雨イベント(2時間毎に採水)で行った。各降雨イベントの流量-濃度関係を基に,(1)SO_4^<2->,Na^+,Ca^<2+>,Mg^<2+>:常に負の相関,(2)Cl^-,SiO_2:負の相関だが,降雨規模が大きくなると相関低い,(3)NO_3^--N:正の相関だが,降雨規模が大きくなると負の相関,(4)K^+:相関無しの4タイプに分類した。SO_4^<2->,Na^+,Ca^<2+>,Mg^<2+>の流量-濃度関係はCl^-,SiO_2,K^+,NO_3^--Nより対数上の直線性が高かった。Cl^-,SiO_2は流量増加過程と流量逓減過程で流量-濃度関係が異なり,規模の大きな降雨イベントほどその違いが明瞭になった。大雨の前半に流量増加に伴ってNO_3^--N濃度は上昇し,後半にNO_3^--N濃度は顕著に低下したため,大雨時のNO_3^--N濃度の変動はCl^-,SiO_2より大きかった。以上より,本流域のL-Q法の適合度はSO_4^<2->,Na^+,Ca^<2+>,Mg^<2+>>Cl^-,SiO_2,K^+>NO_3^--Nであると考えられた。
  • 斉藤 昌宏
    原稿種別: 報告
    2007 年 49 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    明治時代初期に作成された佐渡御料林の備林台帳を解析した。台帳には420箇所の林分が記載されており,合計面積は6,750haに及んでいた。各林分には毎木調査結果とともに所在地,等級,面積,傾斜,季候,運輸,土性などが記録されており,これらの解析を行うことにより,当時の森林技術が明らかになると考えられた。本稿では,毎木調査の際に出現した樹木名を,佐渡地域の方言名,樹形,島内での分布などをもとに推定した。この結果,タケを含めて45種が出現し,林業上有用な樹種は当時の標準名で,そうでない樹種については佐渡地域の方言名で記録されていることがわかった。また,他項目の調査内容から,1876(明治9)年に制定された官林調査仮条例に従って調査が行われたことは明らかである。備林台帳を調製するために行った林分調査は,中央から派遣された技術者あるいは中央で研修を受けた技術者と,地元の技術者がグループを作り調査を担当したと推測された。
  • 金子 真司, 橋本 昌司, 高橋 正通
    原稿種別: 報告
    2007 年 49 巻 2 号 p. 153-156
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    森林総合研究所では気候変動枠組み条約や京都議定書の履行に当たり,森林土壌の炭素蓄積量をインベントリ(目録)として整備するために,国内の森林土壌の調査事業を行っている。この事業が条約締約国に理解され,かつ他国と比較するものであるかどうかを確認するため,ヨーロッパ諸国を訪れて土壌調査の実施状況や森林インベントリの整備状況,さらには土壌情報の整備や利用,土壌モデルの開発状況の調査を行った。その結果,ヨーロッパ諸国ではEUのもと各国が連携して統一的に土壌調査や森林モニタリングを進めており,ITを利用した土壌情報の収集や発信が盛んに行われており,土壌モデルも実用化に向けて開発が進められている実情が明らかになった。
  • 石塚 成宏, 小林 政広
    原稿種別: 報告
    2007 年 49 巻 2 号 p. 157-160
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    京都議定書では土壌,枯死木,リターに蓄積されている炭素量を報告する必要がある。本報告では,ニュージーランドにおける土壌炭素モニタリングシステムとそれを用いた議定書用報告方法を調査した結果を述べる。ニュージーランドでは1940年代からNational Soil Databaseが構築されており,その炭素データを拡張して現在の土壌炭素量データベースを作成している。これらの土壌炭素データと土壌,気候,土地利用,地形などのGISデータセットとの比較解析(一般線形モデル,GLM)により,国土の土壌炭素蓄積量が推定されている。
  • 森貞 和仁
    原稿種別: 記録
    2007 年 49 巻 2 号 p. 161-163
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    2007年8月19日から23日にオーストラリアで「森林土壌と生態系の健全性に関する国際シンポジウム-土地利用管理と地球環境変動の連携を目指して-」が開催されました。以下,その概要を紹介いたします。
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