森林立地
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51 巻, 1 号
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  • 荒木 誠, 伊藤 江利子
    原稿種別: 総説
    2009 年 51 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    東南アジアの熱帯林は,Koppenの気候区分による熱帯雨林気候(熱帯モンスーン気候)から熱帯サバンナ気候に含まれる地域に位置している。降水量の極めて少ない乾季をもつサバンナ気候の地域には,乾季に落葉する落葉季節林が分布している。カンボジア中央部の平坦な低地は気候区分では乾季を持つ熱帯サバンナに位置し,無降雨月を含む乾季が存在する。このような気候条件下では落葉林が成立すると推定される。しかしながら,そこには熱帯雨林や常緑季節林に生育する樹木にも匹敵するサイズの大木を含む見事な常緑林が成立している。気候条件から考えると成立し得ないはずの常緑林が存在できる理由を明らかにするため土壌調査,土壌水分や地下水位の経時的観測などを行い,そのデータなどを解析した。その結果,乾燥常緑林では,隣接する乾燥落葉林や混交林に比べ乾季においても土壌水分含有率が高く,乾季終盤のもっとも土壌が乾燥した時期においても,植物の生育に支障をきたすような土壌水分状態ではないことが確認された。それらは,その地域の土壌が乾季においても土壌水分を保持できるような微細な土壌孔隙を多く含むという特徴を有すること,その土壌が厚い層を成していることによって多量の水分を貯めておくことができることなど,立地環境条件によってもたらされていると推察される。
  • 越智 温子, 小山 浩正, 高橋 教夫
    原稿種別: 論文
    2009 年 51 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    風散布型種子であるサワグルミの種子サイズのばらつきが散布に果たす効果を調べた。サワグルミの種子重と翼荷重の平方根には正の関係があり,さらに翼荷重の平方根が小さいほど終端落下速度も低かったことから,小種子ほど落下速度が低く,潜在的な散布能力は小種子のほうが高いことが示された。そこで,野外での実際の散布時に小種子の高い散布効率は散布範囲の拡大に貢献しているか調べた。その際に行った散布のシミュレーションでは,実際の野外での風速のばらつきも考慮した。その結果,種子密度が1粒/m^2以上の範囲内に散布された種子の平均重量は散布距離の遠近に関わらずほぼ一定の値となった。さらに実測として野外で散布された種子を距離別に採取した結果も,シミュレーションと同じく散布された種子の平均重量に距離による違いが無く,種子サイズのばらつきの効果は見られなかった。シミュレーションと野外での観測データの傾向が一致したことから,散布距離へ及ぼす効果は風速のばらつきのほうが種子サイズのそれよりもはるかに大きく,種子サイズの変異が散布距離に及ぼす影響は野外では認められないことがわかった。種子サイズのばらつきの意義は散布後の定着段階に求める必要があると考えられる。
  • 宮本 和樹, 奥田 史郎, 稲垣 善之, 小谷 英司, 野口 麻穂子, 伊藤 武治
    原稿種別: 論文
    2009 年 51 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    四国のヒノキ人工林において本数率30〜50%の間伐を行い,5年経過後の残存木の成長と葉面積指数(LAI)を林分間で比較した。プラントキャノピーアナライザ(LAI-2000,Li-Cor社)を用いて測定した2007年における50%区のLAIは30%区と同程度の値を示し,強度間伐区において葉量が速やかに回復していることが示唆された。5年間の胸高断面積合計(BA)の増加量についても30〜50%区間で顕著な差は見られなかった。個体レベルの成長についてみると,間伐により単位BAあたりおよび個体あたりのLAIが大きくなるほど幹胸高直径の成長速度(中央値)は増加した。本調査地においては,これまでのところ強度な間伐による残存木への著しい負の影響は現れておらず,間伐率が高くても胸高断面積合計ベースの林分成長には従来の間伐と比べて差がほとんどないことが示された。またその要因として,個体あたりの葉量の増加が残存木の個体成長を促進していることが示唆された。
  • 中尾 勝洋, 松井 哲哉, 田中 信行, 福嶋 司
    原稿種別: 論文
    2009 年 51 巻 1 号 p. 27-37
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    アカガシとウラジロガシの分布を規定する気候要因と閾値を分類樹解析を用いて明らかにした。種ごとに(1)個体の分布(SP-model)と(2)優占林の分布(DO-model)の2つをそれぞれ従属変数とし,暖かさの指数(WI),最寒月最低気温(TMC),夏期降水量(PRS),冬期降水量(PRW)の気候要因を独立変数とした。その結果,個体ではTMC,優占林ではWIが分布を規定する主要な要因であった。個体分布では2種ともにTMC約-5℃以上で分布適域となり,この閾値は常緑広葉樹林の耐性限界温度とされる最寒月平均気温-1℃とほぼ一致した。2種ともに優占林の分布適域のWIは個体に比べて狭く,寒冷な条件に偏っていた。個体と優占林とも,アカガシがPRS約1,500mm以上の多雨な太平洋側で,ウラジロガシがPRS1,034mm以上の太平洋側と日本海側で出現確率が高くなっていた。PRWは,ウラジロガシで著しく出現確率を低下させないが,アカガシではPRWの多い地域で出現確率を低下させていた。
  • 菊地 陽太, 梶 幹男, 澤田 晴雄, 谷本 丈夫, 逢沢 峰昭, 大久保 達弘
    原稿種別: 論文
    2009 年 51 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    林冠の撹乱規模の違いがイヌブナ天然林の再生過程に及ぼす影響を解明するため,太平洋側山地帯の東京大学秩父演習林において,1990年の皆伐による大規模な林冠撹乱を受けた林分(皆伐区)と数本の林冠木の倒壊による小規模な林冠撹乱を受けた林分(天然林区)にそれぞれ一つずつ方形区(皆伐区:40m×40m,天然林区:50m×70m)を設置し,20年間(1984〜2004年)の林分構造の変化を比較した。皆伐区では上層(H≧7m)はウダイカンバ,ウリハダカエデ,ミズメが,下層(H<7m)はイヌブナの萌芽幹と実生起源の幹および稚樹(1,431本/ha)がそれぞれ優占し,上層の優占種であるウダイカンバの後継樹はなかった。天然林区では林冠ギャップ周辺のイヌブナ株内に待機していた萌芽幹が林冠ギャップ形成に反応して成長し,同様に下層のホオノキ,ミズキ,コミネカエデ,新たに侵入したミズキ,ナツツバキがより急速に成長していた。これらのことから,皆伐による林冠撹乱下では,ウダイカンバ,ウリハダカエデ,ミズメなどの先駆樹種が先に林冠に到達し,その後イヌブナの萌芽や,実生更新に由来する稚樹によって林冠が再生されると考えられた。一方,小規模な林冠撹乱下では,林冠ギャップ形成以前から下層で待機していた高木性樹種の前生稚樹やギャップ形成後新たに侵入した高木性樹種の稚樹が先に林冠に到達し,その後イヌブナの萌芽更新によって林冠が再生されるものと考えられた。
  • 松井 太郎, 小山 浩正, 伊藤 聡, 高橋 教夫
    原稿種別: 論文
    2009 年 51 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    ブナの豊凶を予測する手法はすでに北海道で開発されているが,これによると豊作となるには当年開花数(雌花)が500個/m^2以上で,かつ,その前年比が20以上であることが必要とされている。しかし,この条件が北海道以外でも適用可能かどうかは検証されていない。本研究では山形県のブナ11林分において5年間の開花・結実調査を行った。シードトラップによる解析結果から,山形県では当年開花数が350個/m^2以上で,その前年比が10以上であれば豊作になる傾向があり,これらは北海道の基準よりも低い値であった。豪雪地帯の山形県では,主な種子捕食者であるブナヒメシンクイの羽化が,晩春まで林床に残る積雪により妨げられているため,少ない開花数と前年比でも虫害を免れて豊作に至るのではないかと考えられる。また,開花数が350個/m^2以上ならば,必ず前年比も10を超える関係にあったことから,山形県においては開花数を把握するだけでも豊凶を高い確率で予測できる可能性が示された。開花数は,対象とする林分で秋に枝を採取し,観察した総冬芽に対する花芽の割合から推定することができた。これによると,花芽率が35%以上の時に,翌年は豊作になると確率が高い。東北地方で独自の豊作予測手法を開発することは,人工林の広葉樹林化や野生生物管理などの地域に特異的な問題にも貢献すると期待される。
  • 須崎 智応, 平野 辰典, 鈴木 和次郎
    原稿種別: 論文
    2009 年 51 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    アオダモ類人工造林技術の確立に資するため,93年生のヤマトアオダモ人工林2林分の林分構造とその成長を調査解析し,施業履歴との関係で考察した。人工林として成林した林分(純林区)のヤマトアオダモの成立本数は617本/ha,幹材積は353m^3/haで,それぞれ林分全体の27.0%,81.7%を占めた。一方,不成績化した混交林区では,成立本数は220本/ha,幹材積は62m^3/haに過ぎず,その割合も12.7%と24.9%に留まった。こうした林況の違いは,純林区がBl_D型土壌の斜面中一下部の土壌が深い立地であり,混交林区では斜面中一上部のB_D(d)〜B_B型土壌であるなどの,立地環境によるものと考えられた。樹幹解析の結果より,ヤマトアオダモの直径成長および樹高成長は40年生までの若齢時にピークを迎えその後の成長は漸減傾向にあった。当造林地では,植栽後,下刈りやツル切り,除伐などの造林補助作業,そして40年生段階で材積比率24%前後の間伐が実施されてきた。したがって,他の広葉樹より成長の遅いヤマトアオダモに対し保育作業を行うことによって種間競争を緩和し,林冠層を形成するヤマトアオダモ人工林の造成が可能になったと考えられた。
  • 稲垣 善之, 吉永 秀一郎, 山田 毅, 篠宮 佳樹, 鳥居 厚志
    原稿種別: 論文
    2009 年 51 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    高知県のスギ・ヒノキの人工林において,間伐によって放置された枯死木の重量減少と窒素放出を明らかにした。間伐施業から0.5〜18年経過した林分において,倒木と切り株の試料を採取し容積重を測定した。伐採後の年数に対する容積重の変化を指数式で回帰し,分解定数および重量半減期を求めた。容積重の半減期は,直径4〜8cmの倒木,直径8〜16cmの倒木,直径8〜16cmの切り株について,スギでそれぞれ10.4年,12.9年,44.6年,ヒノキでそれぞれ7.4年,8.1年,15.9年であった。どちらの樹種でも直径の異なる倒木で重量減少に有意な差は認められなかった。一方,倒木のほうが切り株よりも重量減少が大きい傾向が認められた。樹皮を除いた材に含まれる窒素量は,分解にともなってほぼ一定の値を示した。また,分解初期における材への窒素の不動化はほとんど認められなかった。枯死材に初期に含まれる窒素は,長い期間材の中に保持されるため,長期的に樹木に窒素を供給する役割を果たしていると考えられた。
  • 小谷 二郎
    原稿種別: 論文
    2009 年 51 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    日本海側の多雪地帯の異なる標高域で,スギ人工林の皆伐跡地(0.33〜1.87ha)で再生した木本種の種数,立木密度および種構成を隣接スギ人工林および周辺広葉樹林と比較した。種数および立木密度は,高標高域の一部を除いてスギ人工林およびその皆伐地でよりも広葉樹林で多くなる傾向があった。低標高域の皆伐地では,いくつかの埋土種子由来の樹種が高密度でしかも高頻度に出現した。一方,高標高域では皆伐地で種数や立木密度は減少する傾向があったものの,広葉樹林に共通した樹種がスギ人工林に多く出現した。高標高域のスギ人工林は,豪雪よって若齢時から成林阻害を受けている。それによって,人工林内で更新しやすい光環境が創られていると考えられた。種子散布型からみた種数は,スギ人工林ではどの散布型も標高とともに増加する傾向にあった。しかしながら,皆伐地では低標高域ほど被食散布型に偏り,高標高域ではスギ人工林に比べて被食散布型および風散布型が減少した。前生稚樹を生かした速やかな植生回復のためには高標高域の方が有利と考えられるが,攪乱強度の弱い伐採や集材方法を選択することでさらに多様な種構成を維持できると考えられた。
  • 浦川 梨恵子
    原稿種別: 記録
    2009 年 51 巻 1 号 p. 77-80
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
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