森林立地
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53 巻, 1 号
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  • 古澤 仁美, 日野 輝明, 金子 真司, 荒木 誠
    原稿種別: 論文
    2011 年 53 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2011/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    今までのいくつかの研究で,植食者は森林生態系の植物生産性,土壌への窒素供給,土壌無機化を減少させ,したがって窒素循環を減少させると報告されてきた。しかし,下層植生が採食されている森林生態系での植物生産性と窒素動態を研究した例はほとんどない。大台ヶ原山の針広混交林では,ニホンジカが下層のミヤコザサを採食している。この森林で,4年間ニホンジカを排除したシカ排除区を用いて,採食が地上部から土壌への窒素供給と土壌窒素無機化におよぼす影響を検討した。シカ排除によって,ミヤコザサの地上部現存量が増加し,ミヤコザサリターによる窒素供給量が増加した。シカ排除区内のミヤコザサ地上部リターによる窒素供給量は,シカ非排除区のミヤコザサ地上部リターと糞尿による窒素供給の合計量のおよそ2倍であった。このことから,ミヤコザサ地上部の生産性は採食によって減少していると示唆された。土壌中の窒素無機化速度における採食の影響は明らかでなかった。なぜなら,上層木のリターによる窒素供給を加えた全窒素供給量においてシカ排除区とシカ非排除区間の違いは相対的に小さかったため,そしてシカの排泄物としての窒素供給による無機化の加速が全地上部窒素供給量による抑制をある程度相殺したためと考えられる。採食が森林生態系の窒素動態におよぼす影響を明らかにするには長期的モニタリングが必要である。
  • 竹中 千里, 早川 奈央子, 小林 元晴, 金谷 正太郎, 富岡 利恵
    原稿種別: 論文
    2011 年 53 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2011/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    タカノツメGamblea innovans(別名:Evodiopanax innovans)は,日本全国の二次林に広く分布する落葉広葉樹であり,重金属汚染地に生育する個体ではカドミウム(Cd)と亜鉛(Zn)を集積することが報告されている。この植物を重金属汚染土壌のファイトレメディエーションに利用していくためには,重金属の集積特性や植物体内での輸送に関する基礎的な知見が必要である。本研究では,フィールド観察とタカノツメ苗木を用いた2種のポット実験の結果を報告する。ポット実験では,重金属汚染地に自生していたタカノツメ苗木と,非汚染地に自生していた苗木を用いた。非汚染地でのフィールド観察により,Cd,Zn,Mnの集積特性が重金属汚染地のタカノツメに限られたものではなく,一般性のある特徴であることが確認された。またポット実験より,根や樹幹に存在する重金属は易動性を持ち,新しく展開した葉に輸送されることが明らかとなった。これは,根から地上部への導管を通してのゆっくりとした輸送であるといえる。
  • 平井 敬三, 野口 享太郎, 山中 高史, 金子 真司, 高橋 正通
    原稿種別: 論文
    2011 年 53 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2011/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    切り捨て間伐で林地に還元された枝条は,その多くが地面に触れず離れた状態で存在する点に注目し,間伐後の枝条の分解にともなう窒素動態を調べた。間伐で緑葉として林地に還元された窒素量は84kg ha^<-1>で,その67%が地面に接地せず空中に存在していた。緑葉を入れたリターバッグを空中と地表に設置し,分解速度と分解にともなう土壌への窒素供給量を調べたところ,分解速度は設置後1年間は処理による違いはなかったが,2年後は地表で有意に速かった。残存葉の窒素含有率は設置直後から増加したが,1年後は地表の方が空中より有意に高かった。分解初期には処理に関わらず窒素を取り込み残存葉に存在する窒素量は間伐で還元された窒素量より増加した。残存葉の窒素量の増加は空中では6ヶ月後まで,地表では1年後まで続いた。分解にともなう土壌への窒素供給の開始は地表の方が空中より遅くなった。しかし,地表では1年後〜2年後の分解速度が空中より速まるため,設置後2年間の土壌への窒素供給量は空中より地表で多く,その割合は64%であった。
    Editor's pick

  • 稲垣 善之, 野口 享太郎, 金子 真司, 橋本 徹, 三浦 覚
    原稿種別: 報告
    2011 年 53 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2011/06/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    茨城県北部のスギ人工林において間伐区と対照区を3か所ずつ設定し,林分の収量比数と地上部純一次生産と各器官への分配率の関係を明らかにした。地上部純一次生産速度は,6調査区間で1.9倍の差が認められた。地上部純一次生産速度に対する幹,葉,球果,雄花への分配率は6調査区の平均でそれぞれ64.7%,27.3%,3.0%,3.0%であった。最も小さい収量比数(0.66)を示した間伐区では,幹への分配率が低かった(54%)。他の間伐区では収量比数は0.74〜0.80を示し,幹への分配率が高かった(71〜72%)。対照区では,収量比数は0.86〜0.91を示し,幹の分配率は平均に近い値を示した(61〜67%)。対照区で雄花生産量の大きい1林分を除外すれば,収量比数が小さいほど雄花生産と雄花生産への分配率が高い傾向が認められた。以上の結果より,強度な間伐は雄花生産を促進し,幹成長を抑制すると考えられた。収量比数が0.75程度になるように林分密度を保つことによって幹成長への分配率を高く維持しながら雄花生産の増加を抑制することできると考えられた。
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