茨城県北部のスギ人工林において間伐区と対照区を3か所ずつ設定し,林分の収量比数と地上部純一次生産と各器官への分配率の関係を明らかにした。地上部純一次生産速度は,6調査区間で1.9倍の差が認められた。地上部純一次生産速度に対する幹,葉,球果,雄花への分配率は6調査区の平均でそれぞれ64.7%,27.3%,3.0%,3.0%であった。最も小さい収量比数(0.66)を示した間伐区では,幹への分配率が低かった(54%)。他の間伐区では収量比数は0.74〜0.80を示し,幹への分配率が高かった(71〜72%)。対照区では,収量比数は0.86〜0.91を示し,幹の分配率は平均に近い値を示した(61〜67%)。対照区で雄花生産量の大きい1林分を除外すれば,収量比数が小さいほど雄花生産と雄花生産への分配率が高い傾向が認められた。以上の結果より,強度な間伐は雄花生産を促進し,幹成長を抑制すると考えられた。収量比数が0.75程度になるように林分密度を保つことによって幹成長への分配率を高く維持しながら雄花生産の増加を抑制することできると考えられた。
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