森林立地
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54 巻, 2 号
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  • 丹下 健
    原稿種別: 緒言
    2012 年 54 巻 2 号 p. 47-49
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
  • 福島 慶太郎
    原稿種別: 総説
    2012 年 54 巻 2 号 p. 51-62
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    現在,日本の森林生態系は,人工林施業,食植生昆虫やシカによる植生の衰退,窒素飽和など,様々な攪乱にさらされつつある。これらの攪乱は多くの場合,渓流への硝酸態窒素の流出を招き,下流域生態系への影響が懸念される。すなわち,攪乱を受ける森林の管理と流域管理を一体で考える必要があり,攪乱に対する物質循環や渓流水質への影響評価が不可欠であるが,そのことが十分認識されているとは言えない。本稿では,森林生態系に加わる攪乱が物質循環・渓流水質に与える影響について,攪乱の種類ごとに,研究が先行している欧米の例と日本の現状についてレビューした。その結果,日本の場合施業の影響がより長期に及ぶこと,食植生昆虫による植生衰退は伐採よりも影響が低いとされるが,日本で集団枯死を招いているマツ枯れやナラ枯れは,伐採に匹敵する影響を及ぼす場合もあること,高木層よりもバイオマスが小さい下層植生であってもシカの過剰採食を受けることで硝酸態窒素の流出が増加する可能性があること,が示された。また,これらの攪乱に加え,大気窒素降下物量の増加にともなう窒素飽和現象も顕在化しつつあり,複数の攪乱が重複して発生し要因分離が困難になるケースも予測される。攪乱影響評価の上で最低限必要な指標として,渓流水中の硝酸態窒素濃度の季節変化や,集水域の窒素保持能力が挙げられる。硝酸態窒素流出の規定要因の解明のためには,植物の成長量や土壌での窒素無機化速度,土壌有機物の炭素・窒素比にも着目する必要がある。欧米とは気象条件や攪乱の頻度・規模が異なるため,日本の森林で大気-植物-土壌-渓流水一連の物質循環過程を対象として大規模操作実験および長期観測のデータを広域的にそろえ,知見を集約することのできる体制を整えることが喫緊の課題といえる。
  • 高橋 輝昌
    原稿種別: 解説
    2012 年 54 巻 2 号 p. 63-66
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
  • 森下 智陽
    原稿種別: 記録
    2012 年 54 巻 2 号 p. 67-68
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
  • 三浦 覚, 志知 幸治
    原稿種別: 記録
    2012 年 54 巻 2 号 p. 69-71
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
  • 松本 健太郎, 逢沢 峰昭, 松本 陽介, 大久保 達弘
    原稿種別: 論文
    2012 年 54 巻 2 号 p. 73-80
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    関東北部の高原山のイヌブナ・ブナが優占する太平洋型ブナ林の長期観測固定試験区において,15年間(1993〜2008年)の森林動態と優占種であるイヌブナとブナの個体群構造の変化を明らかにした上で,太平洋型ブナ林のイヌブナ・ブナ優占林においてブナが減少し,イヌブナ,カエデ類,その他の高木性樹種が混生する林分に移行するという仮説を15年間の観測結果を用いて検討することを目的とした。毎木調査の結果,本試験区はBAが32m^2/haの成熟した林分であり,15年間では枯死率(1.57%/yr)と新規加入率(1.49%/yr)に大きな差異はみられなかった。林分全体でみると,生存幹の直径階分布はL字型分布を示しており,優占種の交替や量的割合の大きな変動は見られず,成熟林分として連続的な樹種の更新によって森林が維持されているものと考えられた。優占種であるイヌブナとブナについてみると,イヌブナは全階層で最優占し,直径階分布はL字型分布を示し,連続的な更新が行われていた。ブナは胸高直径(DBH)15cm未満の後継樹となる幹が15年間で約半数に減少していたものの,当面はイヌブナとDBH15cm以上の大径のブナが林冠層で優占する森林が維持されていくものと推察された。以上のように,15年間の観測結果から,イヌブナ・ブナが優占する太平洋型ブナ林においては,少なくとも15年間では,優占種の割合や種組成に大きな変動が生じることはほとんどないと考えられた。
  • 松本 健太郎, 逢沢 峰昭, 菊地 陽太, 松本 陽介, 大久保 達弘
    原稿種別: 論文
    2012 年 54 巻 2 号 p. 81-92
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,栃木県日光市のイヌブナ天然林皆伐後に造成された針葉樹人工林のうち,激甚なクマ剥ぎ被害を受けたヒノキ人工林と植栽針葉樹が成林せず広葉樹二次林となった林分の2つの不成績造林地において,皆伐,下刈り,除伐といった人為撹乱下におけるイヌブナの萌芽再生過程を明らかにし,イヌブナの天然更新木としての有用性を評価することを目的として,林分構造調査および成長解析を行った。イヌブナはいずれの不成績造林地においても,複数の萌芽幹からなる株構造を有していた。下刈りと複数回の除伐が行われたヒノキ人工林では,ヒノキが高木層で,イヌブナが低木層で優占していた。下刈り後に除伐が行われなかった広葉樹二次林では,高木層は主として先駆性のミズメ,ミズキおよびウリハダカエデが優占し,イヌブナは亜高木層から低木層で優占していた。広葉樹二次林におけるイヌブナの直径成長は,周囲の先駆性の広葉樹と比べて小さいものの,いずれの萌芽幹も被圧林冠下でゆっくりと成長していた。また,いずれの不成績造林地の亜高木・低木層においても,イヌブナに匹敵する優占度をもつ遷移後期種はほとんどみられなかった。これらのことから,イヌブナは皆伐とその後の人為攪乱下においても個体群の維持が可能な萌芽再生能力を保持し,将来的にイヌブナは主要な林冠構成樹種の1つになると考えられた。したがって,不成績造林地を針広混交林化あるいは広葉樹林化する場合には,イヌブナは天然更新木として有用な樹種であると考えられた。
  • 屋代 直樹, 山下 尚之, 太田 誠一
    原稿種別: 論文
    2012 年 54 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    マメ科樹種植林における窒素(N)濃度の高いリターの投入は,土壌中の微生物活性を高め,植物によるPの利用性を促進する可能性がある。本研究ではAcacia mangium植林地とその前植生であるImperata cylindrica草原の土壌において,陰イオン交換樹脂(resin-P),NaHCO_3(NaHCO_3-P),NaOH(NaOH-P),HCl(HCl-P)を用いた逐次抽出法による無機態P(Pi)および有機態P(Po)の形態別分析とNおよびCの添加培養試験を実施した。両土壌における全Pに占める有効態P(resin-P + NaHCO_3-Pi)の割合は4-6%である一方,有機態Pの割合は35-45%であった。アカシア土壌と草原土壌のP形態および全Pには有意な植生間差がほとんど認められず,各土壌の粘土含量の違いがリンの存在様式をより強く規定していた。全培養期間を通じ,N無添加区におけるアカシア土壌の酸性ホスファターゼ活性(APA)は草地土壌より高く,N添加によってアカシア土壌のAPAはさらに増加した。このことから,アカシアなど窒素固定樹種下の土壌はN濃度の高いリターの継続的な投入によって高いAPAを獲得しており,リン制限のかかった熱帯土壌においてより高いリン獲得ポテンシャルを備えている可能性が示唆された。
  • 黒河内 寛之
    原稿種別: 報告
    2012 年 54 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    侵略的外来樹木ニセアカシアの優占する群落内に,他樹種がいつ定着し,どのように成長するのかについての知見を得るために,長野県千曲川中流域の大規模なニセアカシア林内にて,ニセアカシア以外の木本植物の定着有無および定着過程を調査した。3カ所のニセアカシア河畔林内(計3,600m^2)を調査したところ,ニセアカシアは728個体確認され,ニセアカシア以外に6科6属6種265個体の木本植物が確認された。特に,エノキは19個体,ヌルデは229個体と比較的多くの個体が定着していて,この2種について定着過程を解析した。先ず,エノキの樹高成長を年単位で調べたところ,樹高1mになるのに2〜3年必要で,これは周囲のニセアカシアと同程度であった。さらに,樹齢分布を調べたところ,エノキとその周囲のニセアカシアとの樹齢階級は同程度であった。これらから,初期成長が早いエノキは,ニセアカシアが倒木や伐採などの撹乱を受けた際にニセアカシア林内へ定着できたと推測される。一方,ヌルデの水平根の追跡から3つのジェネットが確認され,大部分のヌルデはいずれかのジェネットからのラメットであった。また,樹長成長解析から,ニセアカシア林内のヌルデは樹長1mになるのに3〜6年必要で,成長が悪かった。さらに,樹齢解析からニセアカシア林内のヌルデは若い個体が多かった。これらから,ヌルデは,ニセアカシア林冠下で成長は悪いが,水平根由来の栄養繁殖能によりニセアカシア林内での個体数維持を可能にしたと推測される。
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