森林立地
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55 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 金子 真司, 大久保 達弘
    原稿種別: 緒言
    2013 年 55 巻 2 号 p. 67-68
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
  • 岩瀬 香, 富岡 利恵, 杉浦 祐樹, 金指 努, 竹中 千里
    原稿種別: 論文
    2013 年 55 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究は樹皮に吸着した放射性セシウム(^<137>Cs)の動態を明らかにすることを目的に,第一歩として樹皮におけるCsの吸着特性について,同族のアルカリ金属類,ナトリウム(Na),カリウム(K),ルビジウム(Rb)と比較し,その特性を考察した。福島県内で多く分布しているスギ(Cryptomeria japonica)とコナラ(Quercus serrata)の樹皮を対象とし実験を行った。粉砕した樹皮にそれぞれのアルカリ金属の1 mol m^<-3>塩化物溶液で振とう処理し,吸着させ, 1 mol m^<-3>酢酸アンモニウム(CH_3COONH_4)溶液と1 mol m^<-3>硝酸(HNO_3)溶液で吸着したアルカリ金属を溶出した。両樹種の樹皮ともに, Na^+とK^+は吸着させた量または,吸着させた量よりもわずかに多い量が溶出した。反対に^<133>Cs^+, Rb^+は吸着させた量に対して,スギ樹皮は^<133>Cs^+が57.6%, Rb^+が38.3%溶出され,コナラ樹皮では^<133>Cs^+が20.6%, Rb^+が30.2%が溶出し,処理した^<133>Cs^+やRb^+の多くは溶出されず樹皮に強く固定されていた。2012年5月に福島県で採取したコナラ樹皮について同様に1 mol m^<-3> CH_3COONH_4溶液と1 mol m^<-3> HNO_3溶液に対する^<137>Csの溶出量を調べた結果,そのほとんどは溶出されず, ^<137>Csの抽出率はいわき市で採取したサンプルのCH_3COONH_4溶液抽出したもので2.1%であったが,他のサンプルはいずれも0.1〜0.4%と非常に低かった。本研究から,一度樹皮に固定されたCsは容易に溶出しないことが明らかになった。
  • 金子 真司, 池田 重人, 赤間 亮夫, 三浦 覚, 高橋 正通
    原稿種別: 論文
    2013 年 55 巻 2 号 p. 75-81
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    福島第一原発事故で放出された放射性セシウム(Cs)が,森林生態系においてどのような動態をするかを予測するために,放射性Csの分布実態の調査を行っている福島県の川内村,大玉村,只見町の3カ所5プロットにおいて,土壌代表断面調査を行って土壌の理化学性を調べた。その結果,5プロットの土壌とも落葉の分解速度が速いムル型腐植タイプであり,堆積有機物層は欧米の森林に比べて少なかった。また土壌は炭素含量が高く,大半の層はpH(H_2O)が5.1以下と酸性であった。塩基交換容量(CEC)は高く,交換性塩基含量は全般に少なかったが,最表層は適量の交換性Kを含んでいた。すべてのプロットが16-24%の粘土を含んでおり,土性は埴壌土(CL),微砂質埴壌土(SiCL),砂質埴壌土(SCL)であった。本調査地の堆積有機物層は分解が早いことから,堆積有機物中の放射性Csは短期間に土壌に移動すると推定された。土壌は有機物が多く酸性であるが,粘土含有量や交換性K濃度から,放射性Csは土壌に固定されて,樹木に移行しやすい条件にはないことが示された。
  • 福田 健二, 朽名 夏麿, 寺田 徹, マンスーニャ モハマド レザ, ウディン モハマド ニザム, 神保 克明, 渋谷 園実, 藤枝 樹里 ...
    原稿種別: 論文
    2013 年 55 巻 2 号 p. 83-98
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    千葉県柏市の都市近郊林において,福島第一原子力発電所の事故による放射性セシウム汚染の実態を調べた。2011年8月〜12月の地上1 mの空間線量率は0.3〜0.4 μSv/h程度であった。2011年秋〜2012年秋に採集された植物体の放射性セシウム濃度は, 2011年受けた枝や常緑樹の旧葉では1.2〜8.8 kBq/kg,事故時に展葉していなかった常緑広葉樹の当年葉や落葉広葉樹の葉では0〜2.8 kBq/kgであった。2011年夏〜秋に採集された地表徘徊性甲虫ではほとんどが5 kBq/kg以下であったが,キノコでは高い値のものが多く,最大61 kBq/kgを示した。2012年春に伐採された間伐木の放射性セシウム濃度は,ヒノキでは外樹皮,次いで旧葉で高く,落葉樹では外樹皮で最も高かった。いずれも辺材,心材へのセシウムの浸透がみられた。これらは,里山活動における薪や堆肥の利用に支障をきたす汚染レベルであった。大青田の樹木地上部への放射性セシウム沈着量の推定値は,ヒノキの枝葉への大量の沈着を反映して,ヒノキ・イヌシデ林の地上部で5.7 kBq/m^2と,コナラ・クヌギ林の地上部の3.7 kBq/m^2の約1.5倍であった。コナラ・クヌギ林の地下部5 cmまでの沈着量合計は85 kBq/m^2であり,地上部と地下部を合わせた林分全体の放射性セシウム沈着量は約90 kBq/m^2と見積もられた。2013年1月のコナラ林の土壌では,放射性セシウムはリター層よりもA層に多く分布しており,落葉の除去による除染効果はほとんど期待できないと考えられた。
  • 小金澤 正昭, 田村 宜格, 奥田 圭, 福井 えみ子
    原稿種別: 報告
    2013 年 55 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    2011年3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故は,広範な地域に放射性核種を飛散させ,原発から約160 km離れた栃木県奥日光および足尾地域においても低線量ではあるが,放射性セシウムの飛散が確認された。そこで,今後,森林生態系における放射性セシウムの動態と野生動物に及ぼす影響を明らかにしていく上での基礎資料を得るため,両地域において2012年の2月と3月に個体数調整で捕獲された計80個体のニホンジカの筋肉,臓器類および消化管内容物等の計9試料と,各地域における冬季のシカの餌植物8種の放射性セシウム濃度を調べた。9試料のセシウム濃度は,両地域ともに直腸内容物が最も高く,次いで第一胃内容物,筋肉,腎臓,肝臓,心臓,肺,胎児,羊水の順となっていた。このことから,放射性セシウムは,シカの体内全体に蓄積していることが明らかとなった。また,奥日光と足尾における放射性セシウムのシカへの蓄積傾向には,明瞭な差異が認められた。これは,両地域における放射性セシウムの沈着量と冬季の餌資源の違いが反映した結果と考えられた。さらに,直腸内容物の放射性セシウム濃度は,第一胃内容物および餌植物8種よりも高濃度であった。このことから,シカは採食,消化,吸収を通じて,放射性セシウムの濃縮を招いていることが示唆された。
  • 赤間 亮夫, 清野 嘉之, 金指 達郎, 志知 幸治
    原稿種別: 報告
    2013 年 55 巻 2 号 p. 105-111
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    東京電力福島第一原子力発電所事故後の2011年と2012年の秋に福島県内の広域においてスギの新梢と雄花を採取し,そこに含まれる放射性セシウム(^<134>Csと^<137>Cs)濃度を測定した。雄花と新梢の放射能は採取地の空間線量率および放射性セシウム沈着量と強い相関を示した。2011年秋の雄花の放射能は0.1 kBq kg^<-1>以下から260 kBq kg^<-1>の範囲であった。2012年秋における部位別の放射能は,2010年以前に展開していた旧葉で最も高く,2011年に展開した1年葉,雄花,2012年に展開した当年葉の順に低下した。旧葉または根から吸収されていた放射性セシウムが樹体内を転流し,雄花などに存在していたと考えられる。しかし,2012年の雄花における放射性セシウム濃度は前年の40%ほどに低下していた。これまでのところ,スギは事故直後に放射性セシウムをかなり吸収したものの,その後の吸収は少ないと考えられる。
  • 清野 嘉之, 赤間 亮夫
    原稿種別: 報告
    2013 年 55 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
  • 逢沢 峰昭, 乾 友恵, 平井 英明, 大澤 和敏, 池田 純子, 大久保 達弘
    原稿種別: 論文
    2013 年 55 巻 2 号 p. 119-126
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    北関東の中山間地域において,林地と農地の一体的利活用と有機物を用いた米生産に向けて,農用林から得られる落葉量,落葉堆肥の材料となる落葉量,そこから生産される堆肥量,水田投入量の測定を行い,水田1 haへの施用に必要な落葉および落葉堆肥を得ることができる農用林の林分面積を調べた。さらに,これらの有機物を用いて水稲栽培試験を行い,養分組成からみた水田施用の有効性を検討した。測定の結果,農用林から少なくとも5 Mg/haの落葉を確保できること,低温季からでは約9ヶ月で落葉487 kgから230 kgの落葉堆肥を生産できることがわかった。また,水田1 haへの施用に必要な落葉および落葉堆肥を確保することができる林分面積は1 ha程度であることがわかった。落葉および落葉堆肥の養分組成を調べた結果,肥効率を考慮した落葉および落葉堆肥の窒素量は,一般的な施肥基準量に達していなかった。しかし,落葉および落葉堆肥のリン酸とカリウムは,施肥基準量の10%以下であったため,リン酸やカリウムの過剰蓄積に対する低成分肥料として期待された。ただ,落葉および落葉堆肥を用いて栽培した2011年の米収量は,化成肥料を用いた慣行農法の8割程度と低くはないものの,無施肥区と比べると肥料効果は限定的であった。
  • 遠藤 貴己, 森 貴之, 伊藤 聡, 小山 浩正
    原稿種別: 論文
    2013 年 55 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    ブナ林の更新成功や野生生物の管理・対策には,豊凶を予測できると都合が良い。北海道では,すでにその技術が開発されている。それによると豊作の条件は500個/m^2以上の雌花が開花し,かつ天敵回避のためにそれが前年の20倍以上あることとされた(以下では,雌花数を開花数として表し,初期に雌花序として落下したものも2倍にして開花数に含めている)。したがって,翌年の作柄の予測には当年と翌年の開花数を推定する必要がある。前者はシードトラップ,後者は採取した枝の冬芽の中で花芽が占める割合(花芽率と呼ぶ)から推定できる。山形県でもこれに準じて予測を公開しているが,地域により気象や天敵密度が違うので,豊作の条件も異なるだろう。すでに著者らは既報で山形県独自の豊作条件として開花数が350個/m^2以上で,かつ前年の10倍以上を提案しているが,この研究は調査期間が短かったため,まだ信頼性に乏しかった。本研究では,既報の結果に新規の地域と年度のデータを加えて山形県の豊凶条件を検証した。県内19林分における調査の結果,山形県では松井らによる豊作条件の適合性は高いと判断された。また,開花数が350個/m^2以上になると,同時に前年比10を満たすことが多かった。つまり,開花数のみでその年の作柄を予測できることになる。このことは,花芽率から翌年の開花数を推定するために枝採取を行うだけで豊凶予測が可能であり,当年の開花を知るためのシードトラップの設置は不要あることを意味している。したがって,北海道で開発された手法に比べて,簡便で何処でもできる点で汎用性の高い手法と言える。
  • 井田 秀行, 堀田 昌伸, 江崎 保男
    原稿種別: 報告
    2013 年 55 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    We conducted an experiment to evaluate the effectiveness of preventing predispersal predation on nut viability in beech (Fagus crenata Blume) by bagging a single canopy tree in an old-growth stand of central Japan over two consecutive years with different nut production. To prevent predation on predispersal nuts, the bagging treatment began in mid June of both years. Seed trap sampling of fallen nuts and direct sampling of cupules were also conducted to monitor seasonal changes. Although viable nuts were less productive in the sample beech than in the surrounding beech stand, the bagging treatment increased the proportion of viable nuts from the sample beech by approximately eight fold in the first year (from 4.9% to 41.3%) and five fold (from 2.4% to 12.5%) in the following year. Thus, at an individual level, predator exclusion by bagging increased the percentage of viable nuts by reducing predispersal predation. The results of this experiment confirm that predispersal insect predation is a major factor controlling the viable nut rate in beech.
  • 王 新, 中坪 孝之, 佐々木 晶子, 吉竹 晋平, 梁 乃申, 中根 周歩
    原稿種別: 報告
    2013 年 55 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー
    To elucidate the effect of climate warming on the soil heterotrophic microbial community in warm-temperate, evergreen broad-leaved forests, we conducted a soil-warming experiment in a secondary forest located in the city of Higashi-Hiroshima in western Japan. We established ten trench plots (1 m × 1 m) with root barriers to prevent root regrowth in the forest. The plots were divided into warming and control treatments. Infrared heaters were used to increase the soil temperature of the warming plots by about 2.5℃ for three years. We used phospholipid fatty acid (PLFA) analysis to examine the composition of the soil heterotrophic microbial community. There were no significant differences in the total content of PLFAs (TotPLFAs) and fungal PLFAs (FungPLFAs) between the warming and control plots. However, warming caused an increase in the amount of bacterial PLFAs (BactPLFAs), the result being a lower ratio of FungPLFAs to BactPLFAs (F/B ratio) in the warming plots. In addition, PLFAs characteristic of gram-negative bacteria increased in the warming plots. The results indicated that the soil heterotrophic microbial community in this warm-temperate, evergreen broad-leaved forest was sensitive to climate warming.
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