森林立地
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57 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
特集諸言
特集報告
特集総説
論文
  • 敦見 和徳, 奥田 圭, 小金澤 正昭
    2015 年 57 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    シカの高密度化に伴う林床環境の変化が土壌動物群集に与える影響を明らかにするため,栃木県奥日光のシカ密度の異なる3地域(各地域8地点)において林床環境と土壌動物群集との関係を検討した。シカ密度と林床環境条件との関係を検討した結果,シカ密度と土壌硬度に正の相関,A層の厚さ,乾燥重量および孔隙度との間に負の相関がみられ,シカの高密度化により林床環境が改変されていることが示唆された。次に,TWINSPANと判別分析を用い,土壌動物の群集組成の変化要因を解析した。TWINSPANの結果,調査地点はグループA(シカ低密度地点)とB(シカ高密度地点)に,動物群はグループⅠ~Ⅳに分類された。土壌の孔隙に生息する中型の土壌動物や,捕食性の多足類などは,グループⅠ~Ⅲに属し,グループBよりもAに多く出現した。一方,土壌の撹乱に耐性があるハネカクシ科や,植食性の半翅目などはグループⅣに属し,グループAとBに同程度出現した。また,判別分析の結果,グループAとBの違いを最もよく判別する林床環境条件は,A層の厚さと孔隙度であった。以上から,本調査地において土壌動物群集が変化した主要因は,シカの高密度化に伴うA層の薄化および孔隙度の低下であると結論した。
  • 山田 毅, 平井 敬三, 竹中 千里, 西園 朋広, 天野 智将
    2015 年 57 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    森林バイオマスの過剰な利用,特に全木集材による枝条の収穫が,森林土壌の養分状態や生産性の低下につながる懸念がある。そこで,枝条収穫がスギ林土壌の交換性塩基動態に及ぼす短期的な影響を明らかにするため,48年生のスギ林分において,枝条収穫を伴う間伐を行い,枝条収穫の有無(全木集材(WTH区)と短幹集材(SOH区)の違い)が土壌中の交換性塩基動態に及ぼす影響を隣接する林分で調査した。間伐によって林地に還元されたSOH区の枝条は急速に分解した。イオン交換樹脂法を用いて堆積有機物(A0)層から鉱質土壌層および土壌中のCa,Mg,Kの動態を調査したところ,SOH区では枝条分解の初期にKイオンがA0層から土壌層へ移動したことが確認できた一方,Ca,Mgイオンの移動量は両区で差が認められなかった。また表層土壌(0-5cm)中の交換性塩基量にも両区で違いは認められなかった。従って,堆積有機物層から土壌層へ至るCa,MgとK動態の違いは,Kがイオン形態であるのに対し,Ca,Mgの一部はイオン形態ではなく有機態のまま土壌へ移動したことによると推察された。さらに土壌に流入するCa,Mg,Kと土壌から流出するそれらイオンのフラックスを求めたところ,流入は50cm深までの土壌からの流出より多いことが明らかになった。
  • 今村 直広, 金子 真司, 小林 政広, 高橋 正通, 赤間 亮夫
    2015 年 57 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    東京電力福島第一原発の事故による放射能汚染地帯の大部分は森林が占めているため,森林での空間線量率の時系列変化を把握することは重要である。そこで,本研究は森林内の放射性セシウムの汚染調査が行われている福島県川内村,大玉村,只見町のスギ林と大玉村の落葉広葉樹林において,2011年~2014年における地上1mと10cmの空間線量率の変化を調査するとともに,その森林内での放射性セシウムの移動との関係を解析した。その結果,2011年~2012年にかけて,空間線量率は自然減衰から推定される低減の程度よりも小さかったが,2012年以降は,概ね自然減衰に沿って低下した。2011年~2012年の空間線量率の低減が自然減衰から推定される低減の程度よりも小さかったのは,この期間に樹木に沈着した放射性セシウムが地表部へ移行し,測定高付近の落葉層や土壌の放射性セシウムが相対的に増加したためと推察された。また2012年以降は森林内の放射性セシウムの移動が少なくなったことが主因と考えられた。これらの結果は,市街地や障害物のない平坦地とは異なり,森林では地表面の放射性セシウムがウェザリングなどによって流出しにくいことを示唆していた。
  • 平田 令子, 木崎 巧治, 伊藤 哲, 光田 靖, 清水 收
    2015 年 57 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    集水域内の林床被覆と表土侵食に違いをもたらす要因を明らかにする目的で,林相(ヒノキ林,スギ林,広葉樹二次林)および微地形(頂部斜面,上部谷壁斜面,下部谷壁斜面,沖積錐・段丘面)の異なる複数の林分で林床被覆と雨滴侵食および表面流侵食の発生状況を調査した。林床被覆率は林相別ではヒノキ林で低く,微地形別では下部谷壁斜面で低い傾向がみられた。また,雨滴侵食および表面流侵食が認められた林分では,表土侵食の痕跡が見られない林分に比較して林床被覆率が低い傾向がみられた。一般化線形モデルを用い侵食の発生にかかわる要因を検討した結果,説明変数が林床被覆のみのモデルよりも地形因子を含むモデルで有意にあてはまりがよかった。この結果は,林床被覆の安定性や林床被覆による侵食の抑止効果が地形によって異なることを示していた。
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