森林立地
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58 巻, 2 号
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論文
  • 北村 亮, 戸田 浩人, 山田 祐彰, ベリングラート木村 園子ドロテア, 及川 洋征, 永井 沙知, 草処 基, 堤 剛太
    原稿種別: 論文
    2016 年 58 巻 2 号 p. 41-50
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー

    潮汐による水位が変動するアマゾン川河下流低湿地では,地域住民の経済的基盤作物(果実)を生産する天然生アサイー(Euterpe oleracea)以外の樹種を除伐することにより,植生の単一化が急速に進んでいる。しかしながら,水位変動や地形などの立地条件とアサイーの単一化がその生育に与える影響についての知見は少ない。本研究では,アサイーの生育に及ぼす立地の高低差に伴う水位変動と他樹種との混交状況の影響の評価を目的とした。調査は,カソン島で6カ所,ムルチザウ島で5カ所,ジュルアテウア島・ジューバ島で2カ所ずつ毎木調査を実施した。地形の高低差を水位変動による冠水時間との関係に置き換えるために,カソン島の調査区で地形調査を実施し, 年間を通して地上・地下水位を測定した。アサイーの生育が良好な立地は,地盤高が5 m程度で,平均冠水時間が110―120時間/月と短く,連続非冠水日数が6日/月と長めのため,表層土壌が還元状態になかった。また, ムトゥチー(Pterocarpus sp.),ミリチー(Mauritia flexuosa),ウクウーバ(Virola surinamensis)などとの混交率が高かった。調査地の多くで,生態系保全を考慮したアサイー生産のため,連続非冠水日数が月6日未満の立地を避け,他樹種と平均20%以上混交させ,アサイー密度を1,000本/ha程度に管理されていた。

  • 長倉 淳子, 安部 久, 張 春花, 高野 勉, 高橋 正通
    原稿種別: 論文
    2016 年 58 巻 2 号 p. 51-59
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー

    スギにおけるセシウム(Cs)の経根吸収と樹体内での動態を明らかにするために,福島県の4つのスギ林分(川内,上川内,大玉,只見)から伐倒したスギ成木について,葉と材の安定セシウム(133Cs),ルビジウム(Rb),カリウム (K)含有量を測定した。4つの林分の放射性Cs沈着量は異なり,川内> 上川内> 大玉> 只見である。133Cs,Rb,K含有量は,旧葉より当年葉で高く,辺材より心材で高かった。また,小さい個体は大きい個体よりも133Cs,Rb,K含有量が低い傾向がみられた。これらの結果から,スギは心材にCsを蓄積する性質があり,成長の旺盛な個体ほど蓄積しやすいことが示された。旧葉の133Cs含有量と心材および辺材の133Cs含有量には比例関係がみられたことから,葉の133Cs含有量から材の133Cs含有量を推定することが可能だと考えられた。葉と材の133Cs含有量は調査林分によって異なり,只見と上川内は,川内と大玉に比べて葉と材の133Cs含有量が高く,また表層土壌の交換性K含有量はやや低かった。土壌の交換性133Cs含有量は只見で高かった。土壌の交換性K,133Cs含有量が,133Csの経根吸収と樹体内の動態に影響していると考えられた。

    Editor's pick

  • 山田 毅, 高橋 幸男, 西園 朋広, 小谷 英司, 天野 智将, 平井 敬三
    原稿種別: 論文
    2016 年 58 巻 2 号 p. 61-68
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル フリー

    間伐時の枝条収穫の違いが土壌特性や林分成長に及ぼす影響を明らかにするため,岩手県釜石市にある間伐後3年を経過した45年生スギ人工林において,全木集材,短幹集材,集材なし(無間伐)林分で毎木調査および表層の土壌調査を行い,土壌の理化学性やスギ林の成長状態を比較した。その結果,全木集材を行ったプロットにおいて,土壌の孔隙率が低かった。孔隙率の低かった全木集材プロットは林床植生による植被率が低かったために土壌の移動が激しく,孔隙量が減少したと考えられた。一方,化学特性にはプロット間に有意差はなく,枝条収穫の違いによる影響は認められなかった。スギ林分の平均直径や平均樹高は,全木集材による枝条収穫を行ったプロットで他のプロットよりも劣っている傾向を示したが,枝条収穫による成長への影響は不明瞭であった。本研究の結果は,急傾斜地での枝条収穫が土壌特性,特に物理性に影響を及ぼす可能性があることを示唆している。

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