森林立地
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62 巻, 2 号
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論文
  • 丹下 健, 染谷 祐太郎
    原稿種別: 論文
    2020 年 62 巻 2 号 p. 73-80
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    暗所保管によってスギコンテナ苗の伸長成長を停止できるが,育苗技術として確立するためには光合成生産が長期間できないことが,苗木に与える影響を明らかにする必要がある。本研究では,5月から8月にかけて週2回の頻度で潅水を行いながら4週間もしくは8週間の暗所保管を行った1年生スギコンテナ苗と暗所保管を行っていないコンテナ苗(対照区)について,植栽後の細根伸長経過を比較した。暗所保管によって植栽後の細根伸長の開始が遅れること,植栽後28日目には,細根伸長量に処理区間差がなくなることが明らかになった。また非常に乾燥した土壌条件での生残率は,対照区の供試苗の方が高かったが,対照区の供試苗も乾燥した土壌条件では細根伸長できなかった。暗所保管による伸長成長制御を行う場合には,暗所保管に伴う苗木への負の影響について考慮する必要があることを指摘した。

  • 長井 宏賢, 五十嵐 秀一, 高橋 花甫里, 市栄 智明
    原稿種別: 論文
    2020 年 62 巻 2 号 p. 81-89
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    高知大学演習林において,林相の異なる複数の小面積植生パッチが近接して形成される森林に生息する哺乳類相を把握し,主要種の生息地選択と植生との関係性を評価した。2011年~2016年の期間,自動撮影カメラを用いて哺乳類を撮影し,各種哺乳類の撮影頻度を算出した。調査地周辺の山林を5つの林相で区分した林相図を作成し,主要な出現種の撮影頻度を応答変数,カメラ設置地点から最寄りの各植生パッチまでの距離と面積を説明変数として,部分最小二乗回帰分析(PLSR)により哺乳類の生息地選択性を評価した。撮影画像を解析した結果,調査地周辺には,タヌキ,イノシシ,ニホンノウサギを主として少なくとも13種の哺乳類が生息することが判った。また,これら主要3種は生息地の選択特性が明確に異なり,タヌキは落葉広葉樹林パッチの面積が広く,皆伐地・草地パッチの距離が近いほど,イノシシは常緑広葉樹林パッチの面積が広いほど,ニホンノウサギは皆伐地・草地パッチの面積が広く,距離が近いほど撮影頻度が高かった。哺乳類は,食性を含めた種毎の生態的な特性により,選択する植生パッチやその植生への依存の程度が異なるため,広葉樹林や皆伐地・草地など林相や面積の異なる植生パッチを針葉樹人工林の近隣に配置する施業を行うことで,各種哺乳類の生息に適した環境が形成される可能性が示唆された。

  • ―岩手県安比高原を対象として―
    大貫 靖浩, 小野 賢二, 安田 幸生, 釣田 竜也, 森下 智陽, 山下 尚之
    原稿種別: 論文
    2020 年 62 巻 2 号 p. 91-100
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    森林土壌の保水機能は,利水ダム的な機能である「水持ち」と治水ダム的な機能である「容量」の二面性を有するが,過去にそれらを明確に区分して定量的に評価した研究はほとんどない。筆者らは,従来保水機能が高いと言われてきたブナ林土壌に着目し,岩手県北部の安比高原に位置するブナ林に調査地を設定して,水持ちの指標と考えられる土壌含水率と,容量の主要因子である表層土層厚を多点で測定した。また,土壌が非常に厚い地点と薄い地点で土壌断面調査を実施し,土壌の透水性と保水性を測定して,水持ちと容量の両機能それぞれを定量化した。さらに,九州・近畿・北陸に現存する火山灰の影響を受けたブナ林土壌との土壌断面形態比較を行って本調査地の代表性を確認し,火山灰の影響を受け,ほぼ同様な立地条件下のスギ林土壌の保水機能との二面的比較を行い,その大小を定量的に評価した。ブナ林土壌の水持ちに関しては,土壌中の隙間の割合が大きく,且つ降水後に水を保持する能力が高いという結果が得られた。一方,容量に関しては,表層土層厚が1 m未満と薄く,細孔隙率および現場含水率が高いため,実際の降雨時に水を容れられる余裕は少ないと判断された。他地域のブナ林の土壌断面と比較した結果,現場含水率が下層土で特に高いことが共通しており,本調査地はより湿潤な湿性型ブナ林であると推察された。スギ林土壌の保水機能との二面的比較を行ったところ,水持ちはブナ林土壌が,容量はスギ林土壌がそれぞれ大きい結果となった。

短報
  • ―スミグラフNC-22Fを用いて―
    石塚 成宏, 大曽根 陽子, 酒井 寿夫, 酒井 佳美, 岡本 透, 溝口 岳男, 田中 永晴, 金子 真司
    原稿種別: 短報
    2020 年 62 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    乾式燃焼法を用いた住化分析センターのスミグラフ(NC-22F)を使用して,鉱質土壌および堆積有機物の炭素および窒素分析を行っている過程において,既定の方法では過小評価する事例があったため,その原因と解決方法を明らかにした。土壌や堆積有機物では導入する試料の量が多いと不完全燃焼によると考えられる過小評価が発生した。燃焼時間(PUMP)を長くするとこの問題は解決できる場合があった。これらのことから,本装置を使用した場合には試料の重量とPUMPを次の範囲に設定することで,適切な分析を行うことが可能と考えられた

     1)PUMP 60秒の場合→試料量上限:A層 50 mg,B層以下 100 mg,堆積有機物 20 mg

     2)PUMP 120秒の場合→試料量上限:A層 100 mg,B層以下 200 mg,堆積有機物 20 mg

    さらに,燃焼後の試料を目視で観察し,不完全燃焼になっていないかを確認することを推奨する。また,同装置を使用している3つの分析機関による誤差は小さく,装置間の誤差は小さいと考えられた。

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