東日本大震災の津波被害を受け,仙台平野の沿岸部では海岸林の津波軽減機能強化を目指して主要植栽木となるクロマツの根系発達の促進を目的とした植栽基盤の盛土造成が行われた。だが,実際に植栽されたクロマツには生育不良が生じている。本研究では宮城県名取市の海岸林再生現場における2014年度植栽エリアに3つの方形区(№2,№4-1,№4-2)を設置し,毎木調査と多地点土壌観測を行い,その結果をもとに植栽基盤の生育環境評価を行った。毎木調査の結果,3つの方形区は同一植栽年度であるにも関わらずクロマツの生育状況に大きな差がみられた。また,多地点土壌観測の結果,異なる方形区の間には土壌物理性・化学性において顕著な相違が認められ,生育が不良であった№4-1,№4-2では貫入抵抗値2,500 kpa以上の固結層の形成,含水率45%以上におよぶ土壌水分,pH3.5未満の土壌反応,電気伝導度(EC)1 mS/cm以上など,植栽されたクロマツの生育には不適当と考えられる環境であることがわかった。さらに,各土壌特性値が数m単位で大きく変化したことから,調査地における植栽基盤の土壌環境は極めて不均一である可能性が推察された。クロマツの生育指標を目的変数として重回帰分析を行った結果,全ての方形区において有意な重回帰式を得ることができたため,採用した分析項目は植栽したクロマツの生育に影響を持つと考えられた。しかし,クロマツの生育阻害因子を定量的に表現することはできなかった。
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