森林立地
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論文
  • ―人工ギャップ形成後10年間の経年変化から
    島田 和則, 岩本 宏二郎, 大中 みちる, 長谷川 絵里, 阿部 真, 設樂 拓人, 九島 宏道, 勝木 俊雄
    原稿種別: 論文
    2025 年67 巻2 号 p. 35-42
    発行日: 2025/12/25
    公開日: 2026/02/05
    ジャーナル 認証あり

    都市近郊の放置林の植物多様性保全を目指した管理手法の1つとして,人工ギャップ形成の効果について評価することを目的に,針葉樹人工林6箇所,常緑広葉樹林と夏緑広葉樹林各2箇所において,10 m四方の試験区を設けて上層木のみをすべて伐採し,伐採前と伐採後10年間の林分再生と植物種構成の経年変化を調査した。その結果伐採後10年間で,大半の試験区で最上層または下層で常緑広葉樹が卓越する再生パッチが形成された。出現種数の経年変化をみると,どの試験区も伐採直後は種数が増加するが伐採後2~5年でピークに達し,その後減少に転じた。種構成の経年変化を見ると,生活形では夏緑種,生育環境区分では非森林生の種数の一時的な増加が目立った。植物多様性の観点から人工ギャップ形成の効果を評価すると,伐採面積が小さいので林分全体から見ると多様性保全に対する効果は局所的で,かつ一時的であった。今後検証する必要があるが,この結果から人工ギャップ形成後再生パッチの種数がピークとなる2~5年の頻度で,対象林分内で新たに人工ギャップ形成を継続的に繰り返すことによって,林分全体で非森林生の種を含む多様な種を維持できる可能性が考えられる。

  • 山田 毅, 長倉 淳子, 小笠 真由美, 平井 敬三
    原稿種別: 論文
    2025 年67 巻2 号 p. 43-49
    発行日: 2025/12/25
    公開日: 2026/02/05
    ジャーナル 認証あり

    育苗培土への木質バイオマス燃焼灰の添加がヒノキ苗の成長と土壌化学性に及ぼす影響を明らかにするため,森林総合研究所構内のガラス温室において,灰添加と灰添加なし(対照)でヒノキ苗の育成試験を行い,ヒノキの成長状態や土壌の化学特性を比較した。灰添加区では,木質バイオマス発電所(専焼)の主灰10 gと土壌(生土)2kgを均質に混合した培土でヒノキ苗を育成し,試験期間中に10 gずつ灰を5回土壌表層に追加添加した。対照区の培土には灰を添加しなかった。その結果,試験開始時の土壌のpH値,EC,交換性Ca,Mg,K濃度は対照区に比べ灰添加区で有意に高い値を示した。また,その後5回の灰の追加添加により,灰添加区の0-5cm深で,土壌pH値や交換性Ca,K濃度の上昇と全炭素(TC)・全窒素(TN)濃度の低下が認められた。5cm以深の土壌では交換性K濃度の上昇とTN濃度の低下が認められた。したがって,追加添加した灰の土壌への影響は,交換性Kを除き,概ね表層土壌(0-5cm深)に限られた。一方,ヒノキ苗の主軸長や根元直径の成長およびバイオマス量には灰添加による有意な違いはなかった。したがって,重量比6%程度の主灰を添加した本研究の結果から見る限り,灰添加はヒノキの成長に顕著な影響を及ぼさないことを示している。

  • 三田村 英亮, 久保田 将之, 奈良 雅代, 新井 一司
    原稿種別: 論文
    2025 年67 巻2 号 p. 51-60
    発行日: 2025/12/25
    公開日: 2026/02/05
    ジャーナル 認証あり

    東京都の多摩地域において,再造林後約10年を経過した林分に,集団的に葉枯れしたスギ(スギ褐色葉枯症)の発生が確認された。このスギ褐色葉枯症の発生した林床の土壌は,良好な生育が見られた箇所に比べ,土壌水分が降雨後も一定して低く,またスギ褐色葉枯症の林床土壌には,極めて強い撥水性が発現していたことから,この症状のスギは常に水ストレス下にあったことが示唆され,スギ褐色葉枯症は生育不適地への植栽によって,スギの生育不良が引き起こされたものと考えられた。こうしたことから,今後の植栽において,スギ褐色葉枯症を回避するため,スギの適地・不適地を判定する地図の開発を目指した。スギ褐色葉枯症の林床において植生調査を行ったところ,スギの生育不適を示す指標植物が数種確認された。本報告では,この指標植物のうち,アセビについてその空間分布を調査し,地形条件(標高,斜面方位,傾斜角,平均曲率)との関係を数量化Ⅱ類により解析した。アセビの空間分布は,平均曲率に最も大きな相関が認められ,尾根部に集中して分布する傾向が確認された。数量化Ⅱ類により算出された判別要因(地形条件)ごとのカテゴリースコアの累積値を用いて,アセビの空間分布の傾向を数値化し,スギの生育不適地として示した地図を作成した。この地図におけるスギ生育不適地とスギ褐色葉枯症の分布は重なっており,スギの植栽時において,生育の適・不適の判定に活用できる。

短報
  • ―予報―
    大貫 靖浩, 新田 響平, 和田 覚, 森下 智陽, 山下 尚之
    原稿種別: 短報
    2025 年67 巻2 号 p. 61-67
    発行日: 2025/12/25
    公開日: 2026/02/05
    ジャーナル 認証あり

    筆者らは,斜面の微地形に着目した表層土層厚分布と土壌物理性の特徴から,ブナ林土壌の保水能(渇水緩和機能および洪水調節機能)を量的に評価する研究を北東北の岩手県と秋田県で進めている。本稿では,秋田県北部の森吉山麓高原に位置するブナを主体とする天然林の一部を対象として,保水能に大きく寄与する表層土層厚の多点測定結果と,土壌が非常に厚い地点における土壌の透水性と保水性の測定結果について検討した。その結果,本調査地の表層土層厚は,全体の2/3を占める尾根から中腹にかけての微地形単位で平均2 mを超え,谷部と比較して非常に厚かった。また,代表土壌断面掘削直後に測定した深度別土壌含水率は,最表層のA1層を除き40~50%の値を示した。飽和透水係数はA1層とAB層で10−4 ms−1オーダーの他は10−5 ms−1オーダーであった。全孔隙率は最表層から深層に向かい徐々に低下する傾向にあったが,細孔隙率には大きな変化は認められなかった。以上の測定結果から,森吉山麓高原のブナ林土壌は,土壌が厚く含水率も高いため,渇水緩和機能・洪水調節機能ともに良好である可能性が高いことが明らかになった。

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