東京都の多摩地域において,再造林後約10年を経過した林分に,集団的に葉枯れしたスギ(スギ褐色葉枯症)の発生が確認された。このスギ褐色葉枯症の発生した林床の土壌は,良好な生育が見られた箇所に比べ,土壌水分が降雨後も一定して低く,またスギ褐色葉枯症の林床土壌には,極めて強い撥水性が発現していたことから,この症状のスギは常に水ストレス下にあったことが示唆され,スギ褐色葉枯症は生育不適地への植栽によって,スギの生育不良が引き起こされたものと考えられた。こうしたことから,今後の植栽において,スギ褐色葉枯症を回避するため,スギの適地・不適地を判定する地図の開発を目指した。スギ褐色葉枯症の林床において植生調査を行ったところ,スギの生育不適を示す指標植物が数種確認された。本報告では,この指標植物のうち,アセビについてその空間分布を調査し,地形条件(標高,斜面方位,傾斜角,平均曲率)との関係を数量化Ⅱ類により解析した。アセビの空間分布は,平均曲率に最も大きな相関が認められ,尾根部に集中して分布する傾向が確認された。数量化Ⅱ類により算出された判別要因(地形条件)ごとのカテゴリースコアの累積値を用いて,アセビの空間分布の傾向を数値化し,スギの生育不適地として示した地図を作成した。この地図におけるスギ生育不適地とスギ褐色葉枯症の分布は重なっており,スギの植栽時において,生育の適・不適の判定に活用できる。
抄録全体を表示