林業機械や油圧ショベル等の機械を操作したことがない未経験のオペレータ4 名を対象に,グラップルローダを使った丸太の荷役作業における習熟過程を追跡調査した。1車両分の丸太積みおろし作業にかかる作業所要時間は経験時間とともに減少し,その習熟は決定係数0.9以上で対数線型習熟モデル式に近似された。観察数が習熟モデルの精度に与える影響を調べた結果,各オペレータに対して5回以上の作業の観察を行うことで平均予測誤差率10%程度の習熟モデルが得られることが分かった。次に,機械の動作計測手法を用いて機械操作における技術的な変化を計測し,習熟に関わる要因について分析した。作業開始から経験時間5〜6時間頃までは,機械操作方法の理解と機械の動作特性への慣れが習熟の大半を占めたと考えられ,経験時間20時間頃までは顕著な技術的変化は確認できなかった。しかし20時間を超える頃から同時操作時間の割合が大きく増加するなど操作技術の向上が確認された。丸太の中心付近を掴む等の作業方法の習得やポンプで発生させた圧油の利用率の向上などは作業経験とともに徐々に進んだ。このように林業機械作業の習熟は,機械操作技術,作業方法等,複合的な技術レベルの向上によるものであると言える。
さまざまな習熟レベルのオペレータを対象に,グラップルローダを使った丸太の積み込み作業における荷つかみ本数と作業所要時間との関係を調査した。積み込み作業には,グラップル面積0.16m2のグラップルおよび平均径13.8cmの丸太2.35m3を使用した。作業所要時間の違いにより観察データを「作業が速い」(20分未満),「作業がやや速い」(20~30分),「作業がやや遅い」(30~40分),「作業が遅い」(40分以上)の4つのグループに分類し,それぞれの特徴を分析した。その結果,「作業が速い」「作業がやや速い」,グループでは荷つかみ本数が多いほど生産性が向上し,最大荷つかみ本数は13本であった。一方,「作業が遅い」,「作業がやや遅い」グループでは,生産性が最大値となる本数は,それぞれ9.0本,5.7本と試算され,多くの丸太をつかみすぎると逆に生産性が低下する傾向を示した。生産性が低下した要因には,しっかり材が保持されていないために実移動中に荷崩れが起こり修復作業に時間を要したこと,荷台上で材が散らばることにより材を整列させるために時間を要したことなどが挙げられる。これらのことから,習熟度の低いオペレータでは,積み込み作業時にそれぞれの技術レベルに応じた荷つかみ本数で作業を行うことにより,生産性が高まる可能性がある。