森林利用学会誌
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33 巻, 1 号
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特集巻頭言
論文
  • 倉本 惠生, 伊藤 宏樹, 関 剛, 津山 幾太郎, 石橋 聰
    2018 年 33 巻 1 号 p. 5-13
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    トドマツ人工林主伐後に天然更新を誘導するための,重機による地表処理方法を検討した。油圧ショベルに取り付けたグラップルバケットと,グラップルローダによって地表部の植生をはぎ取る処理を行い,作業幅とアタッチメントの操作方向による作業功程とササの除去効果を調べた。グラップル作業の作業功程は処理幅によって異なり,およそ5 m 程度の処理幅で最も効率が高くなった。また,同じ面積の区画を処理する場合は全面処理よりも5 m 幅の筋状処理の効率が高かった。グラップルバケットでの異なる2つのアタッチメント操作を比較した結果,作業効率は両者で差は見られなかったが,バケットを機体側に引き寄せる操作の方が,バケットの背で前方に押し出す操作よりも,植生の除去効果が高かった。

  • 大矢 信次郎, 中澤 昌彦, 猪俣 雄太, 陣川 雅樹, 宮崎 隆幸, 髙野 毅, 戸田 堅一郎, 柳澤 賢一, 西岡 泰久
    2018 年 33 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    皆伐と再造林を一連の作業として行う伐採・造林一貫作業が全国各地で実施され始め,皆伐時に使用した伐出機械を地拵え等に利用することにより,再造林作業の効率化とコストの低減が期待されている。本研究では,長野県の皆伐地4 か所の緩傾斜地から中傾斜地において,バケットおよびグラップルローダによる機械地拵え作業を行い,その生産性とコストについて人力地拵え作業と比較した。その結果,同試験地・同傾斜の人力作業と比較して,両機械による地拵えの労働生産性は約2~12 倍に増加,コストは14~90% に減少し,コスト削減効果が認められた。枝条量が少ない場合は両機械ともコスト削減効果が高い一方,枝条の量が多い場合は特にグラップルでは低コストになりにくいことが示され,機械地拵えのコストには枝条量が大きく影響していた。また,バケット及びグラップル地拵えの生産性と傾斜及び枝条層積の関係から重回帰式を求め,伐採前の林況から皆伐後の枝条量を推定した結果,バケット地拵えの生産性は予想枝条量と傾斜から皆伐前の予測が可能と考えられた。

  • 山崎 真, 山崎 敏彦, 鈴木 保志, 三谷 幸寛, 森本 正延, 長澤 佳暁
    2018 年 33 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    高知県の南国市黒滝地区において,森林組合が施業地を集約化し,スイングヤーダや欧州製のタワーヤーダによる効率的な集材作業と10 t トラックによる現場から市場への直接運材を導入するため,既設の低規格な作業道を改良し事業地の幹線となる高規格な作業道を作設した。作設経費については,改良経費に低規格作業道の開設費を加えても,高規格作業道を新設するよりも安価となった。作業道改良前後の伐出作業の労働生産性は,改良前の単線地曳集材と小運搬作業による生産性が0.45m3 /人時であったのに対し,改良後に可能となったタワーヤーダ集材では0.98m3 /人時となった。伐出作業調査の生産性を用いると,作業道の開設費用も含めた伐出経費は作業道改良前後で13,817円/m3 から8,895円/m3 に削減される結果となった。ただし,単木材積が小さくなるとコストは必ずしも低くならないことから,タワーヤーダがその性能を生かし,低コストで集材するためには単木材積が一定以上大きいことが必要である。

速報
  • 片桐 智之
    2018 年 33 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    岡山県における車両系作業システムおよび架線系作業システムに よる皆伐作業の生産性を明らかにし,皆伐作業準備を含めた生産コストの比較を行った。本研究で得られ た生産性および予測式から試算した皆伐作業準備を含めた生産コストは,車両系作業システムが 1,404 千円 /ha(3,868 円 /m3),架線系作業システムが 1,019 千円 /ha(2,806 円 /m3),車両系作業システム(2 人作業) が 949 千円 /ha(2,616 円 /m3)となった。また,システム生産性は,車両系作業システムが 17.74 m3/ 人日, 架線系作業システムが 21.56 m3/ 人日,車両系作業システム(2 人作業)が 25.50 m3/ 人日となった。これら のことから,急傾斜地での高密度路網と車両系作業システムの組み合わせが主流である岡山県における皆 伐作業について,架線系作業システムおよび車両系作業システム(2 人作業)が,効果的な作業システムで あることが示唆された。

  • 野村 久子, 北川 雅義
    2018 年 33 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    三重県南部地域において2003 年から2015 年に行なわれた皆伐71 現場の日報調査を行い,一貫作業の工程を含む,地拵え59 事例,獣害防護柵設置47 事例の作業条件と作業人工数を把握し,作業条件が単位あたりの作業人工数に与える影響を解析した。その結果,一部の工程で一貫作業を行っていた事例の単位当たり作業人工数は,行わなかった場合に比べ有意に小さかった。また,目的変数を各作業の単位当たり人工数,説明変数を作業要因とした重回帰分析を行ったところ,伐出時に林地から枝葉の搬出を行った場合8.9 人工/ha,伐出時の集材機械を利用して獣害防護柵資材を運搬した場合1.0 人工/100 m の効率化が可能と考えられた。

  • 亀山 翔平, 吉岡 拓如, 井上 公基
    2018 年 33 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,多摩木材センターの市売り取引資料の分析をもとに,花粉対策事業が多摩木材センターの取扱量および多摩地域の林業に与えた影響について検討することを目的とした。調査は多摩木材センターでの市売り取引資料の分析および多摩地域で素材生産を行う事業体へのアンケートを実施した。多摩木材センターの取扱量から,花粉主伐事業の取扱量の増加が多摩木材センターの取扱量の安定ならびに多摩認証材の持続的な確保につながった。また,アンケート調査からは木材価格,花粉対策事業後の将来を不安視する回答が多くみられた。花粉対策事業の枠組みのなかの主伐事業ではあるが,継続的な森林管理が可能となれば,人工林の高齢化や放置林の整備等の問題解決に効果的なものであると考える。今後,2020 年のオリンピック等に向けて東京都の木材需要は高まることが予想される。また,将来的には事業による推進が行われなくても民間が主体となり伐採・更新を進めていくべきだが,現状の木材価格では全てを民間に委ねるには厳しい現状にある。そのため,当面は公的な援助の継続が必要であると考える。

  • 仲畑 力, 山本 嵩久, 斎藤 仁志, 有賀 一広
    2018 年 33 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,2014 ~ 2016 年度に栃木県宇都宮市で行われた 皆伐の素材販売実績を整理し,その結果を基に素材の販売先の選択や中間土場の活用を踏まえた販売方法 の違いが,皆伐から下刈 5 年目までの再造林にかかる採算性に与える影響について分析した。その結果,製 材工場などの川中業者に直送販売された直送材は,実績の多い調査地でも一般材のうち 14.7% と少なかった が,共販所で公売された一般材からその規格に適した丸太を集計すると,山土場での検知や選別の効率化 が課題ではあるが,30.6 ~ 44.1% まで増加する試算となった。これを中間土場まで運搬し,川中業者に引き 渡した場合,2014 年度の調査地では,共販所の素材価格の変動などにより 9.0 千円 / m3 と低かった平均販 売単価が 10.5 千円 / m3 まで上がり,運搬費などの販売経費はすべての調査地で 0.3 ~ 0.5 千円 / m3 低減し たため,2015,2016 年度は売上と補助金から経費を差し引いた利益の増加分が 21.7,13.7 万円 /ha,採算性 が低かった2014年度では64.5万円/haの増加となり,採算性が大幅に改善される結果となった。これより, 川中業者との協定販売により素材価格や出材量の長期的な安定性を図ることが,皆伐再造林を推進するた めに重要であることが示唆された。

  • 山田 健, 佐々木 尚三, 倉本 恵生, 上村 章, 原山 尚徳, 宇都木 玄, 斎籐 丈寬
    2018 年 33 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    造林作業機械化の一環として地拵え用ク ラッシャを導入し,レーキを付加する改造の上,下川町有林のカラマツ及びトドマツ伐採跡地で地拵え作 業試験を行った。作業功程を測定したところ,緩傾斜地では従来型バケット地拵えと同等であったが,傾 斜角が大きくなると作業功程が低下した。さらに,バケット,クラッシャ,クラッシャ+レーキ地拵え後 の植付け作業功程を測定したところ,クラッシャ地拵えが作業功程を低下させる可能性があること,レー キ地掻きは前生植生量と植栽苗木の種類の組合せによって作業功程を向上も低下もさせることが推測され た。またバケット地拵えで生じる排根線によるつぶれ地面積は伐採跡地面積の 28.3% に及ぶことが判明した。

  • 図子 光太郎
    2018 年 33 巻 1 号 p. 73-80
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    乾燥期の植栽におけるスギ裸苗に対するコンテナ苗の優位性を検証するため, 富山県で最も降水量の少ない 5 月にスギコンテナ苗と裸苗を植栽し,活着,初期生長および積雪被害の発 生状況を比較した。また,コンテナ苗についてはディブルを用いて通常の深さで植栽するディブル普通植え, 深めに植えるディブル深植え,鍬を用いて植える鍬植えを設けた。その結果,植栽から 18 日までに,裸苗 は全体の 8 割以上が枯死したのに対し,コンテナ苗の枯死率は 1 割に満たなかった。このことから,乾燥 条件下での植栽において,スギコンテナ苗は裸苗に比べ高い活着性能を有することが示された。植栽 1 年 目の成長を比較すると,直径成長率は裸苗に比べコンテナ苗で優れ,樹高成長率はコンテナ苗ディブル普 通植えを除けば,裸苗とコンテナ苗に明確な差はなかった。1 積雪後の積雪被害の状況について,コンテナ 苗,裸苗ともに根抜け被害の発生は認められなかった。一方,倒伏被害はコンテナ苗ディブル普通植えに おいて顕著であったが,コンテナ苗ディブル深植えでは被害が軽減された。

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