森林利用学会誌
Online ISSN : 2189-6658
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36 巻, 1 号
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特集巻頭言
論文
  • 神原 章博, 富永 歩, 志垣 俊介, 林 英治, 藤澤 隆介
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 36 巻 1 号 論文ID: 36.5
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/03/21
    ジャーナル フリー

    日本の人工林は,約102,000km 2 であり,その約7 割はスギ・ヒノキが占めている。人工林の半数は,すでに主伐期を迎えた樹木で覆われており,これらの樹木を積極的に収穫し,国産木材として利用することで,森林循環を実現することが求められている。一方で,令和元年における林業の死傷年千人率は,他産業に比べて約2 ~10 倍であり,林業の死傷者数は群を抜いて多く, 林業分野における生産性および安全性の向上に向けた新技術の導入が求められている。本研究では,林業における毎木調査の省力化に着目した。これまでの研究で,モバイル端末や単眼カメラで撮影された樹皮画像を対象とした樹皮識別は十分に検討されていない。軽量な単眼カメラを用いての樹種識別が実現すれば,広域な山林でもドローンへ軽量カメラを搭載することで,低コストで樹種分布図を作成することが可能となり,データベース上での情報共有・一元管理を容易にすると考えられ,林業のIoT 化に貢献する。 本研究では,公開されている既存技術を統合することでスギ・ヒノキをどの程度の識別可能か検証する。樹皮画像を対象として,単眼カメラで撮影し収集した画像データセット(スギ・ヒノキの2 種類)を用いて識別器を作成し,少ない作業で80% 程度の識別率を実現するための手法を確立することを目的とする。検証の結果,作成した識別器により,画像内の樹木の識別を実現した。またその識別率は,適切に画像データを用意することで目的であった80%程度の識別を実現した。

速報
  • -高知県における流域別適用事例にもとづく検討-
    山﨑 真, 鈴木 保志, 後藤 純一, 渡辺 直史
    原稿種別: 速報
    2021 年 36 巻 1 号 論文ID: 36.13
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/03/21
    ジャーナル フリー

    作業システムの選択に用いる地形情報として一般的な平均傾斜と起伏量に加え,地形の複雑度を表す指標として等高線迂回率を併用する手法が提案されている。この手法を,高知県を6 つの流域に分けて適用し,実際の路網整備および林業機械の導入状況と比較することでその有効性と今後の整備の方向性を検討した。地形データには10 m メッシュのDEM(数値標高モデル)を用い,オープンソースのGIS により地形情報の評価指標を算出し,適する作業システムの分類を行った。作業システムの分類結果と実際の状況は,従来架線とタワーヤーダの適地が多い県の中部および東部では一致度が高いものの,西部では分類結果に比較して直接集材・単曳きや簡易架線向きの中小型の機械の導入割合が高い傾向であった。地形から判断すると県全体ではタワーヤーダ等の中長距離架線が有利な箇所が多いが,路網整備や機械導入の経緯などから実情が異なっている可能性が考えられた。

  • 中澤 昌彦, 松村 ゆかり, 田中 亘, 上村 巧, 加藤 英雄, 宗岡 寛子, 𠮷田 智佳史, 瀧 誠志郎, 有水 賢吾, 伊神 裕司, ...
    原稿種別: 速報
    2021 年 36 巻 1 号 論文ID: 36.21
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/03/21
    ジャーナル フリー

    本研究では,原木品質自動判定装置を備えたハーベスタを有効に活用するために,海外の先進的な動向と国内の原木取引の現状を調査し,日本の原木取引に適応し川上から川下までの関係者間で原木の情報共有が可能なシステムの開発を行った。 林業のICT 化進んでいるスウェーデンの先行事例を参考に,StanForD 2010 をシステムのベースとし,この拡張可能な領域を活用して,日本の原木取引に適した項目等を追加した。追加した項目は,品質として開発機から得られる矢高,ヤング係数,密度の他に,元口径等である。また,クラウドサーバ上で操作する原木に関するデータの出入力,マップインターフェース,原木輸送,データコンバージョン等のツールを付加した。

研究・技術資料
論文
  • 宗岡 寛子, 白澤 紘明, 図子 光太郎, 鈴木 秀典
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 36 巻 1 号 論文ID: 36.43
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/03/21
    ジャーナル フリー

    将来的な豪雨頻度と林道延長の増加に応じた林道施設災害発生箇所数の予測を可能にするため,単位延長林道区間内災害発生箇所数の期待値を降雨強度別に推定した。期待値の推定には,解析雨量データ,富山県内民有林における過去21 年間の林道施設災害データおよび同県の林道路線基本データを用いた。最大24 時間雨量100 mm 以上150 mm 未満の降雨イベント1 回の発生下における1 km 林道区間内被災箇所数の期待値は10-3 のオーダー(1,000 km に数箇所程度)であるが,300 mm 以上350 mm 未満の降雨イベント発生下では10-1 のオーダーまで増加すると推定された。推定された期待値を用いれば,将来的な豪雨頻度と林道延長の増加予測を入力値として,対象とするエリア・期間中の合計被災箇所数の予測が可能になると考えられる。

速報
  • 吉田 智佳史, 佐々木 達也, 瀧 誠志郎, 中澤 昌彦, 上村 巧, 田中 良明, 中島 泰生, 千原 敬也
    原稿種別: 速報
    2021 年 36 巻 1 号 論文ID: 36.51
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/03/21
    ジャーナル フリー

    全木・全幹集材方式による車両系集材作業システムの構築を目的に,わが国の伐出作業条件に適した新たなスキッダを試作した。本機は,比較的小型の車体にゴムクローラ式の走行装置,クラムバンク型の把持装置,積載用グラップルローダ等を装備する構造とした。材の牽引走行を想定した性能試験を行った結果,牽引による走行速度の低下は小さいこと,およそ65 kN の最大牽引力があること,履帯のスリップ率は5 % と比較的小さいこと等から十分な実用性があることが確認された。また,スギ・ヒノキ林の皆伐作業地3 か所において試作機による全木集材と同クラスのフォワーダによる短幹集材の比較試験を行った。その結果,フォワーダに比べスキッダは,積載量が平均26 % 多いこと,作業時間あたりの積載量は荷積みが概ね同等で荷降しが18 %高いこと,走行速度は空走行,実走行ともにスキッダの方がおよそ1割低いこと等が示された。サイクルタイムと積載量を用いて集材作業の生産性を求めた結果,フォワーダに比べスキッダの方がおよそ4 割高いことがわかった。また,搭載するグラップルローダの性能向上や木寄せされた全木材の集積方法の工夫等により生産性はさらに向上する可能性が示唆された。

  • 松本 武, 日吉 沙絵子, 岩岡 正博
    原稿種別: 速報
    2021 年 36 巻 1 号 論文ID: 36.57
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/03/21
    ジャーナル フリー

    森林作業道切土のり頭に残されたヒノキ立木の引き倒し試験を行った。道側(斜面下方)への引き倒しと,山側(斜面上方)引き倒しでは最大抵抗モーメントに有意な差はなかった。最大モーメントに達するまでの樹幹の変位角は上方の方が小さかった。最大抵抗モーメントは胸高直径,樹高および形状比と有意な関係にあった。本研究では道側の根系すなわち,立木の根系の半分が除去された状態で引き倒し試験を行い,既報の引き倒し試験と比較して抵抗力に差はなかった。しかしながら根系の引き倒し負荷に対する弾性限界が小さいことが示された。

  • 有水 賢吾
    原稿種別: 速報
    2021 年 36 巻 1 号 論文ID: 36.63
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/03/21
    ジャーナル フリー

    森林内での位置情報の取得は森林管理から素材生産まで幅広く利用可能な重要な技術である。しかし,森林内ではGNSS を利用してリアルタイムで正確な位置情報を取得することは困難である。特に近年注目されている林業機械の自動走行について考えると,リアルタイムでの位置情報の取得は必要不可欠である。本研究では林内の自己位置推定技術として測域センサおよびRGBD カメラによるSLAM に着目し,精度の検討を行った。Robot Operating System 上で実装があるSLAM として,測域センサを利用したLOAM,hdl graph slam,RGBD カメラを用いたVisual SLAM としてORB-SLAM2,RTAB-Map について検討を行った。それぞれ,水平方向のRMSE がLOAM では0.526 m,RTAB-Map では0.619 m という結果が得られ,他センサと統合することでGNSS を十分に使用できない林内環境においてLRF およびRGBD カメラを用いたSLAM は位置推定手法として十分に適用できる可能性があることが示唆された。

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