森林環境における正確な位置情報は ICT 林業の実現に必要不可欠 な基盤的情報であり,その精度向上が目下の重要課題となっている。本研究では,低コスト 2 周波 GNSS 受信機とソフトバンク の高精度測位サービスを用いて造林地における周囲測量(閉合トラバース測量)を RTK 測位で行った。次に,その結果を森林・ 林業分野で一般的なマッピング用 GNSS 受信機(単独測位および後処理補正)と正確度誤差,精密度誤差を指標として比較した。 分散分析で測位誤差に影響する要因について分析を行った結果,精密度誤差では測位方法と測点,正確度誤差では測位方法と測 位時間が有意になり,いずれも低コスト 2 周波 GNSS 受信機による RTK 測位の優位性が示された。この方法では正確度誤差の みならず精密度誤差が小さいことから,測位時間が短時間であっても高い測位精度が実現できることが示唆された。また,この 方法で周囲測量を行ったエリアの面積は,真の面積に対する誤差が -0.1 ~ 0.2 % と非常に小さく,面積計測においても低コスト 2 周波 GNSS 受信機による RTK 測位が極めて有効であることが示された。
本報では,安全性を確保しつつ広葉樹の伐出の生産性を向上させることを目的に,汎用性の高いフェラーバンチャ機構付きバケットを使った機械伐木手法を検討し伐木生産性等を求めた。また,造材工程においても同機および国内で一般的なプロセッサを使った造材生産性等を求めた。フェラーバンチャ機構のカッターの先で同じ高さで少しずつ切り進めて切断する複数切り型機械伐木手法では,安全性に関係する野外での人力作業時間の割合が通常のカッターにより一度で切断する一度切り型の24%から10%に減少するとともに,生産性が7.5 m3/人時から8.3 m3/人時に向上した。先行してチェーンソーにより受け口を作成しておき,カッターにより追い口をいれる受口先行型機械伐木手法では,人力作業時間割合が45%に増加し,労働生産性が5.4 m3/人時に減少するものの,建築等用材として商品価値の高い一番玉への損傷を抑えることができた。造材工程においては,本機の生産性が1.7 m3/人時と,プロセッサの生産性4.7 m3/人時に比べ低く,広葉樹の造材が困難であることを確認した。
長野県の民有林林道を対象に林道台帳を集計することで,林道施設災害復旧事業費の実態解明を行った。 その結果,次のことが明らかとなった。集計路線(n=1504)の約36% では,林道施設災害が発生していなかった。1 被災箇所あたりの復旧費の標準偏差は2602.4 万円と大きくばらつくとともに,年代クラスにより分布形態が異なった。各年の総復旧費の内訳をみると,全被害額の5 割が路線数にして1 割強の被災路線に起因した。復旧単価(円/年・m)の平均値は222 円/年・m,中央値は55 円/年・m,標準偏差は436 円/m・年であった。単位時間・単位長さあたり復旧費は,集計路線の約59% で100 円/年・m以下,約95% で1000円/年・m以下であり,右裾が重い安定分布に類似していた。開設後経過年数と復旧単価の間に明瞭な比例関係は認められなかった。規格別の復旧単価の中央値は,1 級林道が185 円/年・m,2 級林道が71 円/年・m,3 級林道が37 円/年・m であり, 1,3 級および2,3 級の間に1% 水準で有意差が確認された。既往手法を用いて算出した復旧単価の推計値と実績値の残差標準偏差は464 円/年・m であった。