TLS,UAV,航空機などさまざまな媒体を用いたLiDARによる森林資源情報や地形情報,二周波GNSS受信機の低価格化などによって手軽に高精度化が可能となった位置情報,いわゆるスマートハーベスタに代表される資源情報と生産情報など,林業でもICTの導入によるスマート化,情報化は着実に進みつつあります。本誌でも第36巻,第40巻でそれぞれ林業のICT導入やデジタル化をテーマに特集を組み,36号では深層学習を用いた樹皮による樹種の判定(神原ら 2021),DEMを用いた最適作業システムの選択と適用例(山崎ら 2021),StanForDを基軸とする原木情報の共有システム(中澤ら 2021),UAVによる資材輸送の試み(石川ら 2021)が紹介され,第40巻ではフォワーダ荷台への最適な積載位置の判定(伊藤ら 2025),LiDARデータのみを用いた森林作業道の開設優先度の判定(田中ら 2025)が紹介されてきました。
このような林業のスマート化は研究開発から現場への普及,実証へと移行し,さらに複数種の技術を連携させて木材SCM全体のスマート化を図る段階へと進みつつあります(林野庁 2025)。さらに2024年ごろから対話型エージェントが一般に広がりをみせはじめたこともあり(総務省 2025),産業,研究いずれの視点からもAIの活用もごく身近なものになってきており,今後の林業での普及も期待されています。
このように急激に導入が進む各種の新技術に対し,森林利用学会では2年連続でスマート林業をシンポジウムの題材としてとりあげ,2025年度シンポジウムで「スマート林業の現場実装の加速に向けた課題」と題して議論を交わしました。本シンポジウムでは川上から川下までを情報でつないだ導入事例や,行政におけるスマート林業の普及に向けた取組の紹介という,ユーザーサイドにも視座をおいた話題提供や議論が展開され,森林利用学会らしいシンポジウムとなりました。これを踏まえ,会誌41巻1号に同題で特集の原稿を募集しましたところ,論文1報,速報2報の投稿をいただき,42巻1号では論文1報が掲載の運びとなりました。以下に内容を紹介いたします。
41巻1号では論文「大規模言語モデルを利用した予防安全システムのための危険度推定手法の提案」を掲載いたします。本研究では作業の自動化において不可欠である事故防止のための判断システムとして大規模言語モデル(LLM)を利用することを想定し,事前学習済みモデルを用いて「林業」「伐倒木の状態(かかり木であるか否か)」「道路の状態(機械が走行可能であるか)」という三つの判断を労災の発生状況報告書およびそのような状況を描写した写真について数種のLLMに判別させて結果を検討したものです。
本特集が研究段階,試験段階にある新技術の現場への橋渡しとなり,スマート林業普及の一助となることを願ってやみません。