システム収穫表は,様々な林分構造や施業方法に対応できる柔軟な構造をもっている。本報告ではこの特徴を活用し,東京大学秩父演習林の人工林を対象にシミュレーションによる比較検討を行い,施業の目的,樹種によってどのような施業方法が適当であるのか,また,システム収穫表が平均樹高や立木本数の異なる複数の林分を集めた「事業区レベル」での意思決定にあたりどのような役割を果たし得るかについて検討した。その結果,以下のことが明らかになった。(1)伐期齢までの幹材積収穫量の年平均は伐期齢60年前後に最多となる。(2)丸太材積収穫量の年平均が最多となる伐期齢は幹材積よりやや高くなる。(3)ヒノキとカラマツでは丸太収入の年平均が最多となる伐期齢が幹材積収穫量より15年高くなる。(4)地位と立木度が高い林分ほど幹材積,丸太材積,丸太収入の各指標の年平均が最多となる伐期齢が低くなり,この傾向は幹材積よりも丸太収入において顕著に現れて,立木度よりも地位の与える影響の方が大きい。(5)システム収穫表では個々の林分ごとのシミュレーションが可能であるので,林分の状況に応じたきめの細かい意思決定が可能となり,分期別の伐採量の分布を齢級別面積に比べて分散させることができる。
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