森林環境の保健休養機能とヒトの心理構造の関係を明らかにするため,カラマツ,アカマツ人工林を対象に立木密度,広葉樹混交率を変えた4試験区を設定し,実験時期と被験者が異なる延べ6回のSD法による実験を行った。各回の実験ごとの分析から,各グループの被験者に共通した心理構造として空間因子軸,価値因子軸が認められ,両因子軸から成る心理空間上に試験区の違いが反映して布置された。全被験者を一括した分析では,空間因子軸と価値因子軸で心理構造の大半が説明でき,両因子軸から成る心理空間上では,低密度の試験区が他の試験区と隔絶されるなど試験区の特性が反映された。さらに,空間因子は立木密度の上昇にともない,1000本/ha以下では急激に,1000本/ha以上ではゆるやかに閉鎖側に移行することがわかった。以上から,針葉樹人工林下における主要な心理構造が空間因子軸,価値因子軸を構成要素とすること,立木密度等の違いが空間因子の反応に影響することを客観的に明らかにした。
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