本研究は,中国の森林認証を考える際に最も重要な東北森林区を事例に取り,先ず森林認証の導入によってもたされた効果に着目し考察を加え,次に今後解決すべきどのような課題が存在しているのかに関して明らかにすることを目的としている。中国東北地方に存在する森林認証を導入した友好林業局と白河林業局という二つの林業局を調査対象に選び,まず,それぞれの林業局に対する聞き取り調査を実施した。次に,林業局職員485人を対象とするアンケート調査を実施した。調査結果を分析した結果,以下の2点が明らかになった。(1)両林業局において森林認証制度を導入した結果,以前に比較して管理水準が高まり,企業のイメージアップも実現できていた。経済面の便益について見てみると,現在存在している市場を確保することができ,新市場への進出も展望できる。また,従業員の生活や就労環境の改善,環境意識の向上にも繋がっているなど,森林認証の導入による効果が出たといえる。(2)しかし一方,問題点として以下の点が指摘できる。外国の審査機関を招聘するため,認証過程において問題点が発生する場合が多く,認証費用もかかりすぎる。認証材・認証製品購入における消費者の行動様式はいまだに認知度が低いことに規定され,国内市場から供給される認証製品使用に向かう推進力はいまだに弱い。中国において存在している森林認証林場は外国向け輸出生産のために,受動的に認証を求める事例が多い。今後において,中国独自の認証体系の創設や宣伝など政府の活動を期待するほか,森林経営林場が認証に対する認識の水準を高めることにより,自発的に認証を求める枠組み構築が必要であろう。
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