今や砂漠化は世界各地で進行し,地球上全陸地の約4分の1,世界人口のほぼ6分の1が砂漠化の影響を受けているとされる。砂漠化地域における森林の造成,緑化の推進は喫緊の課題である。一方,中国は世界有数の砂漠国である。広大な砂漠が森林の拡充にとって障害となるばかりでなく,黄砂の発生源にもなるため環境の維持に悪影響を及ぼしている。この状況を打開するため,1989年,寧夏地域で日中協力による砂漠緑化のための実験プロジェクトがスタートした。本稿では,森林復旧指針策定調査に始まり,アグロフォレストリー技術の適用,ポプラ造林地の虫害対策などを経て,2004年大規模植林プロジェクト(無償植林)が終了するまでの長期間にわたって寧夏地域で展開された一連のプロセスについて,分析と評価を行った。砂漠に圧迫され続けたこれまでの状況から脱し,砂漠を押し返し緑を拡大することが可能であるとの自信と希望を人々に与えた事実が密接な国際連携によってもたらされたことを重視すべきである。
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