地際から2m以上の位置で多数の幹分かれが見られる台杉状の天然スギ群落が新潟県内に点在している。本研究では,文献調査と,嘗て実際に天然スギを伐採利用した住民に対する聞き取り調査および住民の住宅を確認することによって,糸魚川市大所集落における集落有林内天然スギの特異な形態と住民の利用方法との関連性について調査した。天然スギは集落内の住宅部材として使用されてきた。木材の伐出は積雪が深くかつ締まった3月から4月に人力で行われ,住宅の部材として適当な大きさの幹が鋸で択伐され,玉切りされ,雪橇で搬出された。冬期に雪上で伐採されたため高い位置での伐採となって多数の幹分かれが見られる特異な形態となった。本研究の対象地は江戸時代以来,基本的に集落内の住人の自家利用に限定されてきたため,このような特異な形態の天然スギ群落が残存したといえる。
トドマツ人工林内に天然更新したトドマツ稚幼樹の上木皆伐後の生残と成長を調査した。伐出時の被害率は3.8%であった。皆伐から3年半後の生存率は57%であった。伐採から3ヶ月後には稚幼樹の葉が褐変したが,その後褐変率は減少し,皆伐2年後には対照区と同等の水準となった。皆伐1年後から平均樹高が大きくなる傾向が見られた。伐採後に着葉率が低下したが,伐採1年半後には対照区と同程度に回復し,2年半後には対照区よりも高くなった。上木の皆伐によってトドマツ前生樹の成長を促すことが可能な場合もあると考えられた。