森林計画学会誌
Online ISSN : 2189-8308
Print ISSN : 0917-2017
52 巻, 2 号
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森林計画学会誌 第52巻 第2号
論文
  • 山田 祐亮
    原稿種別: 論文
    2019 年 52 巻 2 号 p. 49-57
    発行日: 2019/04/25
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    持続可能な森林管理の実践に対しては,地域レベルに適応した基準・指標の活用が有効である。基準・指標の計画への組み込みを企図するにあたり,実際に運用されている事例から学ぶことは多い。本研究では,先進的に計画策定に指標を活用している市町村(豊田市,新城市,長浜市,対馬市)を対象とし,聞き取り調査により計画策定・運用プロセスを明らかにする。そして,指標策定プロセスの類型化を試み,指標策定・運用に関して共通する課題を示す。調査の結果,指標は地域の特色や事情を色濃く反映していた。指標策定には,トップダウン型とボトムアップ型,アウトプットとアウトカム,需要型と現状型といったアプローチが見られる。また,指標の網羅性,計画や指標間の整合性,周知方法,妥当性の検証に関する課題を抱えていた。 今後,意欲のある市町村が計画に指標を取り入れ,その効果を高めていくことが期待される。そのためには,計画や指標間の関係性の把握や,意欲のある市町村をバックアップする制度の整備が特に重要である。

  • 高嶋 敦史, 大島 順子
    原稿種別: 論文
    2019 年 52 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2019/04/25
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    大径木は,亜熱帯性照葉樹林の保全において重要な指標であると考えられている。そこで本研究では,沖縄島やんばる地域に広がる約65年生の二次林において,大径木の分布と地形の関係を小流域レベルで調査した。その結果,胸高直径30cm以上の大径木の密度は全樹種合計で91.0本/haであり,そのうちイタジイが65.2%,イジュが20.9%,オキナワウラジロガシが6.4%を占めていた。やんばる地域の非皆伐成熟林を調査した既往の研究と比較すると,大径木の密度は半分以下に留まっていた。調査対象の小流域を尾根,中間斜面,谷の3つの地形に区分して大径木の密度やサイズを比較したところ,尾根では大径木の密度が谷や中間斜面の半分以下であった。また,イタジイやイジュは,尾根より谷でサイズが大きくなっていた。このように,やんばる地域の約65年生の二次林では,谷を中心にサイズの大きな幹が分布していた。また,谷から中間斜面にかけては過去の伐採を免れた老齢な大径木も僅かながら残っており,谷や中間斜面は二次林においても生態系管理や生物相保全の面で大きな役割を果たす重要な立地である可能性が示唆された。

  • 長島 啓子, 吉永 生, 田中 和博
    原稿種別: 短報
    2019 年 52 巻 2 号 p. 67-74
    発行日: 2019/04/25
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    本研究は京都府綾部市の民有林を事例に,低規格高密度路網による小規模搬出間伐システムの路網作設作業のコスト,搬出間伐作業における素材生産コスト,生産性および採算性を把握した。その結果,本システム導入により路網作設費は安価に抑えられること,高い生産性と素材生産コストの低減が見込まれること,現行の補助金制度において採算性が見込めることが判明した。一方補助金が無い場合,搬出間伐作業・事業全体は赤字となり,採算がとれる林業の実現には,詳細な研究による問題点の抽出や高密度路網が可能にする行き届いた施業による質の高い材の提供などの収益性の向上が重要と考えられた。

短報
  • 中川 昌彦
    原稿種別: 短報
    2019 年 52 巻 2 号 p. 75-81
    発行日: 2019/04/25
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    十勝平野北部の北海道士幌町上居辺で2016年冬から2017年春に発生した冬期乾燥害による常緑針葉樹の耕地防風林の枯損状況を調査した。サンプル数はトドマツで8帯,924本,アカエゾマツで1帯,243本,チョウセンゴヨウで8帯,923本,リギダマツで1帯,143本であった。8帯中3帯のトドマツで,924本中の6%に枯損がみられたが,他樹種の枯損はみられなかった。本調査の結果,十勝平野にトドマツを植栽した場合には,過去に報告されてきた造林地や防風保安林以外に耕地防風林においても冬期乾燥害がおきること,及び寡雪年だけでなく平均的な降雪量のある年でも常緑針葉樹の耕地防風林に冬期乾燥害が発生すること,の2点が明らかになった。

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