志水克人:stemv: 日本における立木幹材積計算のRパッケージ,森林計画誌58:55~60,2024 立木幹材積の計算は森林管理の実務や研究解析で重要となる。日本において全国の主要樹種を網羅した立木幹材積表とその計算式は存在するが,利用者自身で該当する計算式を抽出し必要な補正を実行するには多くの労力を要する。本稿では,日本における立木幹材積計算のために作成されたRパッケージの機能を記述し,既存の計算プログラムによる計算結果と比較した。また,Rパッケージ計算による利点についても論じた。計算には林野庁が発行する83種類の材積式等を用い,細田ら(2010)の修正方法に従い胸高直径と樹高から立木の幹材積を計算できるようにした。仮想データを用いた比較では7種類の材積式等で既存の幹材積計算プログラムと差異があったが,0.01m3以上の差があったのは全体の0.19%であり計算結果は概ね一致した。森林生態系多様性基礎調査データを用いた処理では,解析に充分な速度で計算を実行できることが示された。R言語で幹材積計算が可能になることによってオープンソースでより再現性の高い研究解析が実行できるようになることが期待される。
渡部優・斎藤仁志・當山啓介:林業収益性と山地災害リスクを基準とした森林ゾーニングの広域適用,森林計画誌58:83~91,2024 近年,人工林の高齢級化や気候変動の進行により,木材生産促進や山地災害リスク管理といった多目的森林管理の重要性が増している。今後の森林管理と国産材供給に関する政策決定を行うためには,素材生産と山地災害リスクの2つの基準からみて,どのようなポテンシャルを有した土地がどの程度存在するかを定量的に把握する必要がある。本研究では,収益性と災害リスクを基準としたゾーニングを,岐阜県民有林人工林へ適用し各ゾーンの面積比率を明らかにした。その結果,県全域では,要注意林業地(高収益,高リスク),林業適地(高収益,低リスク),潜在的林業地(低収益,低リスク),林業不適地(低収益,高リスク)のゾーンは,それぞれ面積ベースで10%,29%,31%,29%を占めていた。さらに,ゾーンごとに各基準のスコア構成を調べた。同じゾーンであっても,スコアの高低とその組合せを詳細にみることで,ポテンシャルに応じた解像度の高い管理方針の提案を行える可能性が示唆された。
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