日本森林学会誌
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100 巻 , 4 号
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論文
  • 相楽 美穂, 横田 康裕, 百村 帝彦
    2018 年 100 巻 4 号 p. 93-101
    発行日: 2018/08/01
    公開日: 2018/10/01
    ジャーナル フリー

    開発・保全プロジェクトの経験から得られた地域コミュニティが救済されるための紛争解決制度の要件を,REDD+プロジェクトの紛争解決制度が満たしているかにつき10事例のプロジェクト設計書の内容から分析した。その要件は,(1)紛争解決制度の設計や運営に地域コミュニティが関与すること,(2)問題が深刻化した場合に斡旋・調停する者が地域コミュニティから信頼され,その選定に際し地域コミュニティの意見が反映されることの2点である。分析の結果,2要件とも満たすプロジェクトはなかった。要件(1)を満たす場合は,地域コミュニティの既存の意思決定組織が制度に関与する事例が多く,さらにプロジェクトの実施主体でもある事例が多かった。加えて要件(2)の後半部分である斡旋人・調停人選定時の地域コミュニティの意見反映が満たされている事例も多かった。逆に要件(1)を満たさない場合は,地域コミュニティはプロジェクトの受け手となっており,プロジェクト実施主体が民間企業で構成されている事例が多く,その場合は,要件(2)に関して斡旋人・調停人の選定での意見反映に関する詳細が公開されていない事例が多いことが明らかとなった。

  • 佐原 奈々美, 中村 俊彦, 逢沢 峰昭, 大久保 達弘
    2018 年 100 巻 4 号 p. 102-109
    発行日: 2018/08/01
    公開日: 2018/10/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    亜高山帯落葉樹林の実生の発生・定着におけるコケ群落の役割について明らかにするため,日本中部の亜高山帯において常緑針葉樹林の伐採約60年後に成立した落葉広葉樹優占林の森林構造および実生・稚樹の発生・生育状況についての調査を行った。その林分ではダケカンバ等の落葉広葉樹が高木層・亜高木層に優占し多量の種子を生産しているにもかかわらず低木層以下では落葉広葉樹よりシラビソやオオシラビソ等の常緑針葉樹が優占していたことから,今後この林分の常緑針葉樹林への遷移が示唆された。林床では地表面でカニコウモリ型とコミヤマカタバミ型の草本群落,また倒木上ではキヒシャクゴケ型とタチハイゴケ型のコケ群落が存在した。倒木上の2種類のコケ群落では多くのシラビソとオオシラビソの実生・稚樹がみられ,その高さと年齢はキヒシャクゴケ型よりタチハイゴケ型で高かった。シラビソとオオシラビソの実生・稚樹の成長を調べ,またシラビソの種子落下および播種試験を実施した結果,コケ群落による落下種子の捕捉および発芽床としての効果が確認され,亜高山帯林での常緑針葉樹の実生・定着に倒木上のコケ群落が大きな役割を果たしていることが明らかになった。

  • 佐藤 弘和, 津田 高明, 倉本 惠生, 飯田 滋生, 橋本 徹
    2018 年 100 巻 4 号 p. 110-115
    発行日: 2018/08/01
    公開日: 2018/10/01
    ジャーナル フリー

    トドマツ人工林内に設置された集材路において車両走行による土壌の締固めの回復過程を評価するために,間伐前,間伐直後,間伐5年後と6年後における表層土壌の土壌貫入抵抗を測定した。土壌貫入抵抗の鉛直プロファイルから,間伐直後では表層から深さ0.2mまでに硬い層が形成された。しかし,間伐6年後において,間伐直後の値に比べ土壌貫入抵抗は低下した。これより,集材路において車両走行により締め固められた土壌硬度は,間伐後5~6年で回復したことが示唆された。また,本論では,表層土壌の締固めを評価する土壌締固指数(SCI)を考案した。SCIにより,土壌の締固め程度を一つの数値で表すことができた。

  • ―遺伝解析に基づく検証―
    岡崎 千聖, 逢沢 峰昭, 森嶋 佳織, 福沢 朋子, 大久保 達弘
    2018 年 100 巻 4 号 p. 116-123
    発行日: 2018/08/01
    公開日: 2018/10/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    群馬県では県北部のみなかみ町において2010年に初めてナラ枯れが発生した。このような飛び地的被害を起こしたカシノナガキクイムシ個体群の由来について,隣接県から近年自然または人為的に移入した,遠方から人為的に移入した,在来由来の三つの仮説が考えられた。もし,移入個体群であれば遺伝的多様性の低下や遺伝的に遠い系統がみられると予想される。本研究ではこれらの仮説を遺伝解析に基づいて検証した。みなかみ町およびナラ枯れの起きている近隣6県において,カシノナガキクイムシ試料を採集し,核リボソームDNA,ミトコンドリアDNAおよび核マイクロサテライト(SSR)を用いて遺伝解析を行った。核リボソームDNAおよび核SSRの遺伝構造解析の結果,群馬個体群は福島や新潟と同じ日本海型の北東日本タイプに属したことから,南西日本から人為的に移入したものではないと考えられた。また,ミトコンドリアDNAと核SSRを用いて各個体群の遺伝的多様性を調べた結果,群馬個体群の遺伝的多様性は低くはなく,他個体群と違いはなかった。よって,群馬個体群は近年の移入由来ではなく,在来由来と考えられた。

短報
  • ―高知県の帯状皆伐区での10年間の観測事例―
    伊藤 武治, 奥田 史郎, 酒井 敦
    2018 年 100 巻 4 号 p. 124-128
    発行日: 2018/08/01
    公開日: 2018/10/01
    ジャーナル フリー

    放置竹林の循環利用または駆除を進めるため,落葉量の長期的な変動や伐採に対する応答など基礎的な生態を明らかにした。竹林に6m幅の帯状皆伐区と対照区を設け,その後10年間における竹稈の本数と落葉量の変化を調査した。あわせて,伐採後の経過年数別に葉面積指数(LAI)を測定した。長期観測によって,落葉量は5~6月をピークとする季節変動を示し,落葉量の年変動および季節変動は隔年周期のパターンを示すことが明らかになった。落葉量とLAIの測定から,葉量は伐採後4年で対照区と同程度に回復すると推定された。一方,竹稈の本数密度は伐採後10年経過しても対照区の47.4%までしか達していなかった。竹林の帯状皆伐においては,循環利用を考えた場合,10年程度では竹稈の本数密度が回復しない可能性がある。一方,駆除を考えた場合は,葉量が回復する4年より短い周期で伐採するなど徹底した防除が必要であると考えられた。

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