日本森林学会誌
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101 巻, 6 号
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論文
  • ―竹加工業者に対するアンケート調査を通じて―
    孫 鵬程, 柴田 昌三, 貫名 涼
    2019 年101 巻6 号 p. 257-265
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    近年,日本では竹資源の持続的利用が重要な課題となっている。本研究は鹿児島県内の竹材とタケノコ関連業者を対象に,アンケートによって竹資源利用の現状を明らかにし,竹産業の構造変化および影響要因について検討したものである。調査は2018年9月に,県内全地域の合計45の関連会社に調査票を配布して行った。回収率は64.4%,有効回答は23枚であった。解析の結果,竹製輸入品の増加,職人の高齢化などの影響が見られ,業者数が1974年から2018年にかけて大幅に減少し,多くの伝統的竹工芸品を生産してきた業者が消失していた。一方,現在も操業している業者では,竹材製品の生産は便利さや実用性を持つ現代生活にマッチした多様な製品の量産化に主たる内容が変化していた。すなわち,これらの業者は製品の改良,高付加価値化および販路の開拓を通じて経営を維持していた。今後,伝統的竹工芸品生産業者がさらに減少することが懸念される。竹産業の維持には,良質な竹材生産ができる竹林の確保,および地元特有の竹材加工技術や知恵を継承していくこと,中国などの竹製品輸出国における竹製品の生産・流通の実情を把握することが重要であると考えられた。

  • 知念 良之, 芝 正己
    2019 年101 巻6 号 p. 266-271
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    沖縄県における一般的な住宅構造は,鉄筋コンクリート造であったが,近年は戸建を中心に木造率が増加傾向にあり,1990年代以降は県外産プレカット材を移入する動きが報告されてきた。2015~2016年に,二つのプレカット工場が経済特区へ進出すると,木造建築はさらに活発化した。本研究では,関連事業者に対して,進出の動機や活動実態,県外出荷に係る公的助成制度の利用についてインタビュー調査を行い,沖縄県における木造住宅の拡大とプレカット工場の関係を明らかにした。プレカット工場の進出は,県内の木造需要増加への対応と遠隔地特有の流通に不利な条件を緩和する目的があった。供給する住宅には,主に人工乾燥材または集成材が使用されており,台風対策や耐震性の向上が図られていた。工場には,公的助成制度を利用して県外にも出荷するものと県内専売のものがあり,使用する主な原材料や工場の立地選択に違いがみられた。一方,県内における木材産業に対する認知度の低さや木造関連技術者の少なさから,住宅生産が制限されていた。また,ボイラー燃料需要がなく,産業廃棄物として排出されるオガ粉や端材の処理費用の負担が大きい課題があった。

  • 山下(中森) 由美子, 栗生 剛
    2019 年101 巻6 号 p. 272-277
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    ナラ枯れは,カシノナガキクイムシの穿入により樹幹内に持ち込まれた真菌類の繁殖によって樹木の水分通道が阻害され枯死に至る萎凋病である。カシノナガキクイムシによる穿孔被害林分の更新手法を検討するため,穿孔程度がウバメガシの萌芽更新に及ぼす影響を調べた。和歌山県串本町の穿孔被害林伐採地2林分において,ウバメガシの切株状態の個体を対象に穿孔状況と横断面に対する木部変色の割合を調査し,伐採1年後と伐採約5年後の萌芽更新状況を調査した。1年後と約5年後とも個体の枯死率に穿孔の有無による違いはみられなかったが,約5年後の枯死率は1年後よりも高かった。1年後と約5年後の萌芽数と萌芽サイズに穿孔の有無による違いはほとんどみられなかった。1年後の萌芽数は100 cm2当たりの穿孔密度が高いほど少なかったが,伐根直径が大きいほど穿孔密度と木部変色の割合が高かったため,伐根直径と穿孔程度のどちらが萌芽数に影響するか分からなかった。以上から,ウバメガシの穿入生存木を伐採した後も,直ちに個体は枯死せずに多くの個体で萌芽が発生し成長することが確認された。

  • ―ベイジアンネットワークを用いた分析―
    美濃羽 靖, 尾張 敏章, 中島 徹, 犬飼 浩
    2019 年101 巻6 号 p. 278-288
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,天然林択伐施業に関わる立木の外観指標に対し,ベイジアンネットワークを用いて外観指標間の関連性を把握することを目的とした。解析には,東京大学北海道演習林の天然林施業試験地内に成立する立木184本を用いた。7つの学習モデル(model1からmodel7)に対し,二つの検索アルゴリズム(HC(pattern1からpattern3),SA(学習回数=1,000 回,10,000 回,100,000 回))を用いてベイジアンネットワークモデルを構築した。学習モデルの性能評価にはMCC(マシューズ相関係数)を用い,未知事例に対する分類精度の評価にはm重交差検証法を用いた。解析結果より,最も高い分類精度を示した学習モデルは,交差検証なしではSA(学習回数=10,000 回,100,000 回,MCC=0.87),交差検証ありではHC(model1,pattern2,MCC=0.44)であった。また,外観指標間の関連性に関しては,選木に関わる親ノードが,HCでは三つの外観指標,SAでは五つの外観指標となり,そのうち二つの外観指標が共通して見られた。

短報
  • 布野 隆之, 関島 恒夫, 望月 翔太, 村上 拓彦, 真保 藍子, 阿部 學
    2019 年101 巻6 号 p. 289-294
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    林野庁は,森林施業によるイヌワシの採餌環境の創出事業を全国的に実施している。しかし,本種の採餌行動が可能な空間サイズや形状が十分に理解されていないこともあり,その空間特性に基づいた有効な環境創出ができていないことが課題となっている。そこで本研究は,新潟県の1つがいを対象に,採餌場所の特定と,そのサイズと形状の計測を実施し,本種に有効な採餌環境の創出方策の検討に必要な情報を蓄積した。落葉広葉樹林の林冠ギャップは,冬期および夏期におけるイヌワシの採餌場所となる傾向にあった。また,落葉広葉樹林の林冠ギャップは,開空部の広さや形状にかかわらず,イヌワシの採餌場所となる可能性があると推察された。その一方,雪原および疎林は,調査範囲内における現存面積に反してその利用頻度は低く,好適な採餌場所となっていない可能性があった。今後はイヌワシによる雪原および疎林の利用状況を詳細に評価する必要がある。

特集「国産漆の使用100%化に向けてどう対応するべきか?」
巻頭言
論文
  • 渡辺 敦史, 田村 美帆, 泉 湧一郎, 山口 莉未, 井城 泰一, 田端 雅進
    2019 年101 巻6 号 p. 298-304
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    二つのDNAマーカー,EST-SSRマーカーとgenomic SSRマーカーを利用してウルシ林の多様性評価を行った。EST-SSRマーカーは次世代シーケンサーを利用して新たに開発した。得られたEST情報から2塩基または3塩基モチーフの一定繰り返し数以上を示した21領域にプライマーを設計した結果,最終的に8マーカーが利用可能であった。8 EST-SSRマーカーおよび7 genomic SSRマーカーを利用して,全国各地のウルシ林9集団から採取した377個体を対象として分析した。ウルシは,渡来種であり,クローン増殖が容易であることから遺伝的多様性の喪失が懸念されたが,遺伝的多様性は近縁種であるハゼノキよりもやや高く,著しい喪失は認められなかった。クラスター分析・主座標分析・STRUCTURE分析の結果は,集団によっては特異性が維持されていることを示す一方で,種苗が移動したことによる集団内の遺伝構造の存在を示していた。クローンの存在や小集団化に伴うボトルネックは限定的であり,現在のウルシ林を適切に保存すれば,ウルシ遺伝資源は維持できると考えられる。

  • 船田 良, 保坂 路人, 山岸 祐介, 塚田 健太郎, Md Hasnat Rahman, 田端 雅進, 半 智史
    2019 年101 巻6 号 p. 305-310
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    漆生産量の異なるウルシ(Toxicodendron vernicifluum)の3クローンの樹皮の組織構造を解剖学的方法で観察したところ,基本的な構造に違いは認められず,すべての供試木の内樹皮に,正常樹脂道とともに傷害樹脂道が形成された。低温走査電子顕微鏡(cryo-SEM)による観察の結果,内樹皮のすべての樹脂道が樹脂で満たされていた。一方,漆生産量が多いクローンの解剖学的特徴として,内樹皮が厚く,内樹皮における単位接線幅当たりの樹脂道数が多く,樹脂道合計断面積が大きいことが明らかになった。また,漆生産量の多いクローンの形成層付近の内樹皮には,漆生産量が少ないクローンに比べて,多くの傷害樹脂道が形成された。したがって,樹脂道の量や断面積などの樹皮の組織構造や漆掻きによる傷害への師部細胞の応答性の違いは,漆生産量が多いクローンを選抜する上での良い指標になるといえる。

  • 小野 賢二, 平井 敬三, 田端 雅進, 小谷 二郎, 中村 人史
    2019 年101 巻6 号 p. 311-317
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    今後の国産漆の資源増産に対応して着実にウルシの植栽を増やすには,これまで植栽適地に関する既往データや知見が十分でないことから,それらを蓄積し適地判定に活用しうる土壌条件を検証可能な形で明示する必要がある。本論は漆産地4地域の生育良・不良地8林分で土壌の断面調査と理化学性分析を行って土壌特性と生育の関係を検討した。生育良好地土壌は不良地に比べ,肥沃度を指標する陽イオン交換容量が高く,根が伸長可能な有効土層が厚く,通気性や透水性を担保する土壌孔隙が多い傾向を示した。断面調査から,良好地は「林野土壌の分類(1975)」の適潤性土壌に該当する特徴を示すのに対し,不良地は総じて排水不良で,過湿なグライ土壌群や泥炭土壌群に相当する特徴を示した。以上は「ウルシは肥沃で,軟い表土が深く,排水良好で乾燥し過ぎない適潤な土地を好む」とする植栽適地の既往報告の要件と一致した。土壌酸度や土性は,本研究では既往報告と異なり,ウルシ生育との関係性が明確でなかった。不良地は全てにおいて,排水設備が未整備の水田と水が集中する斜面底部平坦面の牧草地からの転換林だった。ウルシ植栽の際には過湿環境になり易い立地を避けるべきで,地形的特徴や土地利用履歴にも留意する必要がある。

  • 升屋 勇人, 田端 雅進, 市原 優, 景山 幸二
    2019 年101 巻6 号 p. 318-321
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    国産漆の需要拡大とともに国産漆増産の機運が高まる中,これまでに多くのウルシの植林が全国で行われてきたにも関わらず,漆液の収穫にこぎつけている地域は多くない。そこにはウルシの育成時における何等かの阻害要因が存在すると考えられた。実際に全国で植林したウルシの衰退傾向が著しい地域において調査を行った結果,北海道や岩手県を除く衰退林のほとんど全てで土壌より植物疫病菌の1種Phytophthora cinnamomiが検出された。分根苗を用いた土壌混和による接種試験では,菌を入れていない土壌と比較して明らかな衰退枯死が見られた。本研究により,P. cinnamomiは日本のウルシ植林において阻害因子の一つとなり得ると考えられた。また,本病害を新病害「ウルシ疫病」とすることを提案した。

  • 田端 雅進, 小谷 二郎, 石井 智朗, 井城 泰一, 白旗 学
    2019 年101 巻6 号 p. 322-327
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    ウルシ萌芽木の成長に及ぼす本数密度と胴枯病の影響を明らかにする目的でウルシ林伐採後の萌芽更新地に密度調整区(対照区,1,600 本/ha区,3,000 本/ha区,6,000 本/ha区)を設置し,密度調整後2年間にわたり樹高,地際直径および胴枯病被害を調査した。調査の結果,地際直径成長量において有意な差が認められ,1,600 本/ha区が他の区に比べ,2年間を通して成長が良好となる傾向がみられた。密度調整区や対照区において胴枯病が発生し,主に枯死,再萌芽,癌腫の三つの症状が確認された。全萌芽木における胴枯病の被害率は49.6%であった。1,600 本/ha区は再萌芽が少なく,本数密度が小さかったために成長量が大きかったと考えられた。以上の結果から,ウルシの萌芽更新後の本数密度は,胴枯病がみられた場合罹病木を除去し,1,600 本/haに誘導することが有効であると考えられた。

  • ―収益性に着目して―
    林 雅秀
    2019 年101 巻6 号 p. 328-336
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究は岩手県北部地方のウルシ所有者への聞き取り調査に基づいて,過去のウルシ植栽時にウルシとそれ以外の作物をどのように選択したかを,ウルシを植栽した際の収益性に着目して明らかにすることを目的とした。調査の結果,ウルシ植栽という選択は,雑穀・タバコ・果樹などの跡地になされる場合が多かったこと,ウルシとそれらの作物を比べると少ない労力で収益を得られる点でウルシが優れていたこと,ウルシとスギを比較した場合には収益までの期間が短い点でウルシが優れていたことなどから,土地所有者たちがウルシを選択してきたことが明らかとなった。また,ウルシ立木生産の収益性に関しては,下刈り回数が少ない場合には高い収益率を実現できることなどが明らかとなった。

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