日本森林学会誌
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論文
  • 遠藤 幸子, 成瀬 真理生, 近藤 博史, 田村 淳
    2020 年 102 巻 3 号 p. 147-156
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー
    電子付録

    人工林は日本の森林の約40%を占めており,木材供給だけでなく生物にとっての適した生息場所として機能することが期待されている。しかしながら,人工林内の生物の多様性およびその生態について十分に理解されているとはいえない。本研究ではスギ・ヒノキ人工林で観察される鳥類種を明らかにし,その生態的特徴について考察した。調査は2014年から2018年の鳥類の繁殖期にあたる5月から6月にかけて神奈川県西部の3山域57地点において実施した。観察調査から8目26科45種がスギ・ヒノキ林を利用していることが明らかとなった。確認された種数およびその種組成は,スギ林とヒノキ林との間で有意な違いはみられなかった。確認された鳥類のうち留鳥10種と夏鳥2種を含む2目9科12種は,全ての山域で年を経ても繰り返し確認されており,これらはスギ・ヒノキ人工林を利用する確率の高い種であると示唆された。これら12種のうち11種は昆虫食であった。さらに,10種は樹上と樹洞に営巣する傾向があった。このように,人工林を利用する確率の高い種では,食性と営巣場所の選択において高い共通性がみられた。

  • ―表土戻し作業で表層土壌の堆積期間は必要か?―
    山崎 遥, 間宮 渉, 吉田 俊也
    2020 年 102 巻 3 号 p. 157-165
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー

    表層土壌を一定期間堆積したのちに施工地内に敷き戻す「表土戻し」は,成長の改善や埋土種子の利用の観点から,掻き起こしの代替的な改善案の一つである。その堆積期間は,ササ類の根茎からの回復を抑制するために設けられてきたが,適切な期間は検討されていない。本研究では,堆積期間を変えた(0,2,12カ月),2~3年生の施工地における競争植生および高木樹種の更新状況を,ササ地における前生植生(高茎草本類の混生)を考慮して比較した。クマイザサの回復は,堆積期間を長期化することで抑制された。一方,施工後に優占したオオイタドリは,それが前生植生として存在した場合に残存した根茎から多く発生し,12カ月堆積の場合にのみ再生が抑制された。高木樹種では,堆積期間の長期化によって,カンバ類とヤナギ類は実生数が増加し,キハダは減少した。ただし,前生植生に高茎草本がなかった場合,処理間の差は不明瞭であった。表土戻し作業における堆積期間は,前生植生に高茎草本類が混生する場合は12カ月が必要であり,混生しない場合は,堆積期間を設けない作業も選択可能であると結論づけられた。

  • 大石 康彦, 井上 真理子
    2020 年 102 巻 3 号 p. 166-172
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー

    森林教育の実践は広がっており,森林教育の研究が検討すべき対象が拡大している。森林教育の名称や定義については一定の概念整理が行われているが,森林教育の領域については十分な検討がされていない。一方,教育分野においては生涯学習に関する基本概念としてフォーマル教育,ノンフォーマル教育,インフォーマル教育の区分が行われている。本研究はこの区分に基づいた森林教育の領域の確認を目的とした。文献調査法を用いて各区分に該当する実践を確認した結果,森林教育の領域は,(1)市民を育成対象とする普通教育と,(2)森林・林業の専門家を育成対象とする専門教育の二つの区分で構成されるフォーマル教育,(3)市民を育成対象とする社会教育および林業普及と,(4)森林・林業の専門家を育成対象とする林業普及と職業訓練の二つの区分で構成されるノンフォーマル教育,(5)市民を育成対象とする家庭教育等で構成されるインフォーマル教育の,あわせて5区分で構成されることが確認された。

  • ―都市部における森林政策の多様な展開の分析―
    内山 愉太, 香坂 玲
    2020 年 102 巻 3 号 p. 173-179
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー
    電子付録

    市町村を主体とした森林経営管理制度の推進等を背景に,森林環境税および森林環境譲与税が創設されている。都市部の自治体にも同譲与税は配分され,基礎自治体で最も譲与額が大きくなる横浜市などに注目が集まる。都市部では,木材利用の推進,普及・啓発(地域との連携を含む)等が促進されることが期待されている。現在と今後の制度設計のあり方を考察するうえでも,森林環境譲与税の配分を受ける都市部の自治体の対応実態の解明も必要となる。そこで本研究では,都市規模の大きい政令市を対象に,同譲与税を基にした重点政策,導入の組織的影響等について速報的な調査,考察を行った。結果,木材利用の推進等が重視されるという政令市に共通する傾向がみられた。ただし,政令市における対応は都道府県と比較して全体的に多様であることが把握された。集積計画の推進といった各政策項目に対して重点を置く度合いと各市の環境条件の関係性について試行的な分析を行ったところ,その多様性の背景には,各市の環境条件の差異も含まれる可能性が示唆された。環境条件と重点政策項目の関係性の詳細な分析は今後の課題である。

  • 高山 範理, 讃井 知, 山浦 悠一
    2020 年 102 巻 3 号 p. 180-190
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー
    電子付録

    主伐の時代を迎えた日本で林業が社会的に受け入れられるためには,伐採地の風景的価値を考慮した上で,生物多様性の保全や林業としての経済的合理性に配慮して,適切な主伐方法を選択する必要がある。そこで本研究では,針葉樹(トドマツ)人工林の皆伐地,群状に植栽木を残した伐採地(群状保持),ha当たり10本,50本,100本の広葉樹を単木的に残した伐採地(単木保持),広葉樹老齢木を残した伐採地,伐採前の人工林の7種類の異なる林分状況からなる写真を刺激として,非専門家が伐採地に懐く風景的価値(認知・評価)を調べ,さらに非専門家と専門家間で生物多様性の保全および林業としての経済的合理性に対する伐採地の評価を比較した。その結果,1) 非専門家は皆伐や老齢木保持をポジティブに認知する一方で,群状保持はネガティブに認知する可能性があること,2) 非専門家は樹木の伐採に抵抗感があるため,主伐の実施にあたってはその必要性や生態系保全への配慮,植林の実施等の情報を供与し理解を求めることが有効であること,3) 林業としての経済的合理性の評価については,非専門家と専門家の間にギャップがあり,非専門家の理解を得るためには情報交換や議論を重ねる必要があることなどが明らかになった。

  • 山﨑 菜々子, 堀場 大生, 田村 美帆, 倉本 哲嗣, 清水 邦義, 渡辺 敦史
    2020 年 102 巻 3 号 p. 191-197
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー
    電子付録

    最近,爽春の連鎖地図に基づいて雄性不稔を引き起こす原因遺伝子が座乗する候補領域が推定された。候補領域に座乗し,原因遺伝子と強く連鎖することが示唆されたreCj19250と同一領域には,糖代謝に関連すると推測されたreCj11611も座乗しているもののこれまで詳細な解析は行われていなかった。そこで本研究では,reCj11611の花粉形成時期における遺伝子発現解析,雄花中の糖または澱粉含有量の測定および爽春特異的な変異の検出を行った。その結果,花粉形成期における糖および澱粉含有量の測定結果から爽春は糖代謝に何らかの異常があることが示唆された。しかし,遺伝子発現解析からはreCj11611が爽春の糖代謝異常と関係する明確な証拠は得られなかった。reCj11611には,3′非翻訳領域に爽春特異的な20 bpの欠失が存在しており,この欠失を特定するDNAマーカーを利用して約760スギクローンに適用した結果,6クローンでヘテロ接合体を示した。このうち5クローンは,reCj19250から得られた結果とは一致しなかった。同一領域に座乗していた両遺伝子は近傍の異なる位置に座乗することが明らかとなった。

短報
  • 榎木 勉, 村田 秀介, 内海 泰弘
    2020 年 102 巻 3 号 p. 198-201
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー

    2015年5月に九州大学北海道演習林内のカラマツ人工林に発生した山火事跡地において,焼失したミヤコザサの回復過程と,林床における木本および草本植物の更新動態を調査した。2015年7月,山火事跡地(山火事区)において山火事後に回復したミヤコザサの被度,稈高,バイオマスは,隣接する非焼失地(対照区)のそれぞれ83,70,38%であった。2016年7月,2017年7月とも山火事区のミヤコザサの被度,稈高,バイオマスは対照区と有意な差がなかった。2016年に山火事区の林床に出現した草本・木本の種数は対照区の2倍近くあった。出現種数は2017年も同様であったが種組成は変化した。山火事区と対照区の群集の違いをPERMANOVAにより検定した結果,山火事区では山火事発生後に対照区と異なる組成の植物群集が形成され,その後2年間は維持されたと考えられた。

  • 野宮 治人, 山川 博美, 重永 英年, 伊藤 哲, 平田 令子, 引地 修一
    2020 年 102 巻 3 号 p. 202-206
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー

    平均苗高160 cmのスギ大苗を植えた試験地で植栽後4年間に発生した,キュウシュウジカによる主軸および側枝に対する折損被害の特徴を明らかにした。主軸の折損は1~2年目に,側枝の折損は4年目に集中して発生した。調査期間中に折損が原因の枯損は確認されなかったが,主軸を折損した個体では樹高成長は遅れた。折損部の高さは120 cm前後に集中し,折損部の直径は6.5~15.8 mm(中央値12.2 mm),折られた主軸の長さは17~85 cm(中央値53 cm)であった。折損部の高さに対して斜面傾斜の影響は小さかった。以上の結果から,主軸や側枝の直径が16 mmを超えると折損されにくいと推察される。また,防鹿柵を設置してもシカが侵入する危険はあるので,スギが折損被害を受けないサイズに成長するまでは注意が必要である。

  • 小笠 真由美, 山下 直子, 飛田 博順, 奥田 史郎, 宇都木 玄
    2020 年 102 巻 3 号 p. 207-211
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー
    電子付録

    部分摘葉がヒノキコンテナ苗の水分状態および木部の水分通導に与える影響を明らかにするため,7月に地際から相対苗長75%の高さまでに分枝する側枝を切除し,苗への潅水停止の前後でシュートの水ポテンシャル,主軸木部の通水阻害率および各器官の乾燥重量を測定し,対照区の個体と比較した。潅水停止後6日目に対照区の全個体で水ポテンシャルが計測不能となり枯死したが,摘葉個体では5個体中4個体が生残し,個体当たりの葉重が小さいほど水ポテンシャルが高かった。摘葉個体の通水阻害率は個体によるばらつきが大きく,摘葉処理により木部で局所的に通水阻害が生じたと考えられる。以上より,摘葉処理は,わずかな通水阻害の発生を伴うものの,摘葉量に応じた個体の脱水遅延効果があることが明らかとなった。

総説
  • 鈴木 覚
    2020 年 102 巻 3 号 p. 212-220
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー

    本稿では落雷害研究の現状として,地形と落雷・落雷害との関係,樹種と落雷害との関係,並びに単木枯損,集団枯損の被害形態,および被害発生機序についてまとめた。これらの研究の多くは落雷痕跡を落雷害発生の根拠としたものであった。外見上の主観的判断に被害発生の判断を頼らざるをえないことに落雷害研究の根本的な問題があり,落雷先をピンポイントで特定することによって,落雷害研究は大きく進展できると考えられた。また,被害形態と被害発生機序に関しては,幹に裂傷が生じるメカニズムは材の電気抵抗で説明されているが,実証されておらず,また,発煙・発火メカニズムはいくつか考えられるが特定されていない。樹木への落雷過程を解明することによって,被害発生機序を特定・実証できると考えられた。落雷位置を精確に特定する技術や落雷過程を記録する技術が一部の研究者によって実用化された。こうした技術が普及すれば,落雷害研究はブレイクスルーを果たせると考えられた。

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