日本森林学会誌
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最新号
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論文
  • ―料理雑誌・漫画記述や採取者の意識から―
    泉 桂子, 佐々木 理沙
    2021 年 103 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル フリー
    電子付録

    現在マツタケは生育場所となるアカマツ林の荒廃と減少によりその生産量が減少しているが,季節の食材として珍重される。料理雑誌・漫画を資料に用い,マツタケの高級食材としての評価は家庭料理においていつ頃定着したのかを明らかにした。1950年代後半から1960年代の消費者にとってマツタケは一面では惣菜用のキノコであった。料理書では他のキノコの代替や節約料理の材料となり,洋食や中華料理にも用いられ,多様な調理方法,切り方や加熱法が見られた。レシピサイトを用いて家庭料理におけるマツタケの代替物を調査した。限られた資料からではあるがエリンギ単独,またはマツタケ味の吸い物の素(1964年発売)と組み合わせたマツタケ代替レシピが確認された。さらに,岩手県内の山村を事例として,マツタケの採取や生育環境づくり,その後の稼得機会の獲得,調理,贈与,保存の楽しみや技術について聴き取り調査を行った。採取者は高齢となってもマツタケ採取に熱中し,現金収入や共食,贈与を楽しみに採取のためアカマツ林の採取地に入り込んだり,環境整備を行ったりしていた。これら採取者の調理は和風料理であり,保存には冷凍や真空パックを用いていた。

  • 木村 憲一郎
    2021 年 103 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル フリー

    本研究では,政府統計資料や公開文書を用いて,福島第一原発事故が特用林産物の生産・流通に与えた影響を明らかにし,今後の研究課題を検討した。その結果,事故後の政策において,食品安全策としてのモニタリング検査件数は高止まりが続き,振興策は生産の再開や維持に主眼が置かれた。福島県と周辺4県では多くの品目が震災直後に生産量を大きく落とし,その後も回復の兆しはみられない。原材料を福島県産の原木に依存した栽培きのこや木炭の落ち込みは激しく,影響の範囲は西日本の一部にまでおよび,背景には営林活動の制限と指標値設定に伴う原木の供給低下があった。福島県と周辺4県の生産者数は急減し,販売価格の低迷と原木価格の高騰が進み,生産者の経営悪化が懸念された。原発事故の影響は長期に,かつ広範囲に及んでいる。今後は,原材料の流通実態の把握,販売価格低迷の要因分析,地域レベルの詳細分析が必要となる。

  • ―全国の森林組合へのアンケート調査を通じて―
    笹田 敬太郎, 都築 伸行
    2021 年 103 巻 1 号 p. 22-32
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル フリー

    本研究では,全国の森林組合へのアンケート調査結果の分析により,森林組合から組合員への働きかけと森林組合と組合員を繋ぐ「境界連結者」の役割を担う「地区委員」・「地域組織」の実態と課題を明らかにした。その結果,近年の林産事業の増加に伴い組合員への働きかけを行う組合の割合は増加しており,地区委員・地域組織は,設置組合数や活動日数が減少しつつも回答組合の約4割に存在し,活動内容は,広報誌の配布や情報伝達,説明会の連絡などと多様性がみられた。その中でも,地区委員・地域組織が集落・団地内の事業の取りまとめを実施している組合では,組合員とのコミュニケーションが積極的に行われ,林産事業量も活発であった。その一方で,取りまとめ役が機能せず事業展開が困難化する組合も多く存在しており,二極化の傾向にあることが示唆された。地区委員・地域組織の機能向上や担い手の確保のためには,コミュニケーション頻度の向上,目標や情報の共有,メリットの還元が必要であり,地区委員・地域組織役員らが境界連結者として活躍できる条件を整備することが,森林組合の事業展開の上でも住民らによる自律的な森林管理を進めるためにも重要である。

  • ―六甲山の森林管理と地域活性化を事例として―
    田畑 智博, 周 俊男, 大野 朋子, 村山 留美子, 井口 克郎, 片桐 恵子
    2021 年 103 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル フリー

    SDGsに示された17目標・169ターゲットを実行することは,地方自治体にとって重要なことである。一方で地方自治体は優先すべき施策があり,SDGsに新たに取り組む余力が乏しい自治体も存在する。そこで本研究では,SDGsを地方自治体の施策にローカライゼーションするためのアイディアを提案した。先ず,日本の森林管理に関する施策を事例として,日本政府のSDGs関連施策との関連性を整理した。続いて,森林施策に関する国連のSDGsの目標・ターゲットを,エキスパートジャッジにより抽出した。11目標・20ターゲットが抽出されたが,これらはあらゆる施策を対象としたものであるため,地方自治体が森林管理に使用しやすいように目標・ターゲットの文言を変換した。SDGsの目標・ターゲットの変換の作業を通じて,森林管理の政策との関係性を可視化した。また,森林管理に関係する目標の実施に係る優先順位を決定するため,地域住民を対象としたアンケート調査と一対比較により各目標の重要度を測定した。結果として,水資源や生物多様性に関する目標が重要視されていることがわかった。

  • 糟谷 信彦, 武永 葉月, 村田 功二, 宮藤 久士
    2021 年 103 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル フリー

    センダンの直まき造林技術の確立に向け,まき付ける場所の立地環境,光環境および母樹の違いによる発芽特性や生育特性を評価することを目的とし,以下三つの試験を行った。長野県から岡山県にかけて14カ所の林地に同一母樹由来のセンダン果実をまき付けて発芽および発芽後の苗木の成長を測定したところ,発芽果実率は0~81%,2年目の平均苗高は5~84 cmとまき付け場所により大きく異なり,谷部に近い斜面での成長が良いことがわかった。また,同一母樹由来のセンダン果実を,開空度の異なる場所にまき付けたところ,開空度と発芽果実率,苗高,果実当たりの発芽本数および発芽日との間に有意な相関が認められ,開空度の高い明るい場所ほど,発芽の確率が高まり,苗木の成長が良く,果実当たりの発芽本数が多くなり,発芽日も早まることが明らかになった。さらに異なる母樹から得られた果実を同一場所にまき付けた直まき試験を行ったところ,母樹間で果実1個当たりの発芽本数や苗高が有意に異なっていた。以上により,センダンの直まき造林を行う際には,立地条件,光条件および優良系統の選定が重要なことが明らかになった。

短報
  • ―鹿児島県13年生スギ林の事例―
    福本 桂子, 北原 文章, 細田 和男, 芦原 誠一, 加治佐 剛, 寺岡 行雄
    2021 年 103 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル フリー
    電子付録

    下刈りスケジュールの異なる13年生スギ林分を対象に,下刈りスケジュールの違いが雑木量や除伐作業時間に与える影響を明らかにした。また,下刈りと除伐の合計作業時間,スギと雑木の競合状態を下刈りスケジュール別に明らかにした。雑木の幹密度は下刈り回数に,断面積合計と平均樹高は最終下刈り実施からの経過年数に影響を受けていた。除伐作業時間は毎年下刈り区(6年間実施)で最も短く(11.9~12.6 h/ha),植栽後1,2,3年目実施区で毎年下刈り区の約2倍となった(24.5~32.3 h/ha)。一方で,下刈りと除伐の合計作業時間は毎年下刈り区が最も長くなり(155.1~181.3 h/ha),ほとんどの試験区でスギは雑木との競争から抜けていた。これらの結果から,下刈り回数を削減することで除伐作業時間は増加するが,下刈りの回数を削減した方が合計作業時間を短縮でき,状況次第では除伐自体も削減することで初期保育コストの大幅な削減が可能になることが示唆された。

総説
  • ―器官表面でのCO2フラックス測定から内部の呼吸プロセスの理解へ―
    飯尾 淳弘
    2021 年 103 巻 1 号 p. 53-64
    発行日: 2021/02/01
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル フリー

    森林バイオマスの大部分を占める樹木の幹枝の呼吸は,炭素循環の重要な一要素であり,その定量には器官表面で測定されたCO2放出速度(EA)が用いられてきた。しかし,幹や太い枝,粗根など,厚い木部をもつ器官では,内部の温度やO2環境に大きな勾配がある上に,組織による呼吸能力の違いや,CO2の拡散,溶解といった物理的プロセスがEAに影響する。特に最近では,樹液流が辺材内のCO2を輸送するために,EAが呼吸速度と大きく乖離する事例が多数報告されており,器官内部のCO2動態に注目が集まっている。これにともない,温度や器官のサイズなど,器官の外的要素とEAの関係に注目した従来の研究に加え,今後は各組織の呼吸能力や解剖学的特性,生化学的特性など,内的要因との関係にも注目する必要があると考えられる。そこで,本稿ではEAと内的特性の関係の理解を深めることを目的に,幹枝を中心とした非同化器官のEAと呼吸に関するこれまでの知見を整理し,今後の課題について考えた。

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