日本森林学会誌
Online ISSN : 1882-398X
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108 巻, 6 号
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論文
  • 大岩 胡春, 山根 ゆず, 佐々木 壮規, 中川 卓也, 花岡 創
    原稿種別: 論文
    2026 年108 巻6 号 p. 137-144
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/06/20
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    近年,林業用苗木の安定供給を目的としてコンテナ苗生産が拡大しているが,育苗密度調整の困難さや資材管理に伴う作業負担が課題となっている。本研究では,生分解性の紙筒容器であるペーパーポットの苗生産への実用性検証を目的とし,ペーパーポット育苗によるスギ実生苗の成長特性および苗形質を,同様に密度調整が容易で普及が進んでいるMスターコンテナ苗との比較を通して明らかにした。2024年および2025年の2回の育苗試行において,当年生苗の苗長,根元径,地上部・地下部乾燥重量,地上部・地下部比を評価すると共に,容器内の土壌水分と土壌温度を測定した。さらに,2か所での植栽試験により初期生存率を比較した。その結果,これらの測定形質に育苗容器間の顕著な差は認められず,試行年による変動が相対的に大きかった。一方,ペーパーポットでは夏季の日中における土壌温度の上昇が抑制される傾向が認められた。2か所の試験地で実施した植栽試験では,生存率がいずれの試験地でも88%以上となり,容器間に有意差はなかった。以上より,ペーパーポットは同一の育苗条件においてMスターコンテナ苗と同様の苗が生産可能で,実用性が高いと考えられた。

  • ―神奈川県大磯町の森林環境譲与税による兼業・副業型林業の導入過程―
    佐藤 勇輔, 平原 俊
    原稿種別: 論文
    2026 年108 巻6 号 p. 145-155
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    2010年代以降,都市林管理を生活と結びつけ,生産活動を通して収益を得ていこうとする動きが見られ始めている。本研究では,こうした市民活動の「収益化」の発展に向けて地方公共団体が実施する人材育成事業に着目し,神奈川県大磯町の事例を対象に具体的な過程と効果を検証した。都市林の過少利用問題に直面していた大磯町は,森林環境譲与税の配分を契機として,2019年度以降,兼業・副業型の小規模林業に関する市民向けの研修を開催した。この結果,①薪生産による収益化を志向した都市林の管理活動,②散策路の整備を通して新たな都市林の利用を模索する活動,③町外の非都市地域での林業事業体への就業という3つの動きが団体・個人ベースで市民の間に見られていた。以上のような成果は,譲与税の配分開始,熱意・経験を有する地方公共団体職員の存在,大磯町の森林および地域の特性,小規模林業に関する全国的な潮流によってもたらされたものだと考えられた。一方で,森林管理に関する技術の習熟や行政担当者の熱意・経験への依存などの点については課題も確認された。

  • ―全市町村の決算データ分析―
    大槻 峻介, 山本 一清
    原稿種別: 論文
    2026 年108 巻6 号 p. 156-164
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    国税である森林環境税を財源として,地方自治体に森林環境譲与税(以下,譲与税)が交付されている。譲与税の決算状況は各地方自治体がインターネット等で公開するように義務付けられているものの,全市町村での分析は集計結果が公表されているのみで,詳細な比較研究は行われていない。本研究では,2019~2022年度の全市町村の譲与税の決算状況のデータを用いて,執行率と使途に分けて全体的な傾向の把握と整理を行った。執行率は,林務担当職員が配置されている市町村,都道府県が個別に支援対応を行う県,及び地方森林環境税が導入されている県下の市町村において,それぞれ統計的に有意に高かった。また,使途は多くの市町村で森林整備へ重きがおかれていた。ただし,市町村の使途に関する方針を決算状況から明らかにするためには,より細かな区分を用いて使途区分を用いて把握することが必要であった。本研究では分析要素を単純化しているものの,毎年提供される決算データは,市町村の森林行政を示すひとつの指標として機能するものと考えられる。

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