日本森林学会誌
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87 巻, 6 号
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  • 小山 敢, 西郡 彩菜, 三森 利昭, 落合 博貴, 奥村 武信, 本田 尚正
    2005 年87 巻6 号 p. 457-464
    発行日: 2005/12/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    Nc値が1.0未満の層を風化花崗岩斜面の表層崩壊すべり面深さに見出し,これを脆弱層と名付けた。表層崩壊現象を理解する鍵になるであろうこの層について,さまざまな土質試験を行った。脆弱層の飽和土の内部摩擦角は11~14°だった。この低角度はせん断試験に先立つ飽和に際してコラプス沈下と呼ばれる構造破壊が起こった結果だと考えられた。吸水過程にある脆弱層の土は飽和に達した時点で急激に沈下した。脆弱層の構造は,空隙率が上下の土層と比較して格段に高いだけではなく,0.85~2.0mmの粗砂の容積率が高く,2.0~4.75mmの空隙の容積率がそれよりさらに高い特性をもっていた。そのため脆弱層の骨格を作る粗砂は容易に空隙中へ転がり込める。飽和化に伴ってそのような粒子の転がり込みが生じることを顕微鏡下で観察した。この現象は,結果的に総体積を減少させコラプス沈下となる。斜面に潜在する脆弱層で起こるコラプス沈下は表層崩壊現象に重要な役割を果たしている。
  • 趙 慧卿, 高橋 邦秀, 渋谷 正人, 斎藤 秀之, 金 鍾眞, 洪 性〓
    2005 年87 巻6 号 p. 465-470
    発行日: 2005/12/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    韓国の固有樹種で絶滅が危惧されているサイシウモミ(Abieskoreana)の天然更新にとって重要な種子の発芽特性を調べるため,発芽に対する低温湿層,温度,乾燥の影響について検討し,天然更新が比較的容易とされるトドマツ(Abies sachalinensis)と比較した。2樹種の種子は30~150日低温湿層処理によって発芽速度,発芽率が上昇した。150日間の低温湿層処理では,10~30°Cの各温度条件における最終発芽率は,無処理種子に比べ,サイシウモミで1.7~8.5倍(42.9~87.8%),トドマツで2.1~9.2倍(72.1~89.8%)まで増加した。しかし,サイシウモミの発芽速度はトドマツに比べ遅く,最終発芽率に達するのに各発芽温度で40日前後を要した。低温湿層処理後の発芽率の増加率は処理日数と温度によって異なっていた。低温湿層処理は,低温での発芽率を著しく増大させたが,サイシウモミではトドマツより長期間の低温湿層処理が必要であった。低温湿層処理後6日間までの無給水処理は発芽率に影響しなかった。しかし,PEG(Polyethylene glycol)6000溶液による乾燥処理によってサイシウモミの発芽率は有意に低下し,-0.4MPaでも無処理種子の50%まで低下した。一方,トドマツでは-0.8MPaでも無処理種子の80%を維持した。サイシウモミ種子はトドマツ種子に比べ,乾燥ストレスに影響されやすいが,発芽期間がトドマツより長く,晩霜害などによる被害を回避しやすいと推察された。
  • 浦川 梨恵子, 戸田 浩人, 生原 喜久雄
    2005 年87 巻6 号 p. 471-478
    発行日: 2005/12/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    高齢のスギ•ヒノキ人工林小流域(99年生)における流域面積の約20%の斜面下部の伐採が,養分動態に与える影響を明らかにするため,伐採の前後で渓流水量および土壌水分量の測定,土壌水,湧水および渓流水の水質分析を行った。伐採後,表層土壌(0~10cm)では土壌水分が減少し,下層(30~60cm)は湿潤状態にあった。また,渓流からの流出水量は年間約100mm増加した。表層土壌水(5cm)のNO3-, Ca2+, Mg2+およびK+濃度は伐採1,2年目の夏季に3~7倍に上昇したが,3年目には伐採前の水準に戻った。渓流水でも夏季にNO3-, Ca2+およびMg2+濃度が,伐採前同時期の約1.5倍に上昇し,分析を行ったすべてのイオンで濃度の季節変動が大きくなった。伐採後の土壌水中のNO3--N量は,30 cm以深における増加が顕著で,伐採3年目でも伐採前の4倍以上を維持していた。伐採後,NO3--N流出量は4.0~5.Okg ha-1 yr-1増加したが,土壌水中のNO3--Nの増加量と比較すると少ないことから,土壌中で生成した無機態窒素のすべてが渓流へ流出するわけではなく,土壌中での窒素の蓄積および消費が示唆された。
  • 吉林省•白河林業局の事例より
    金 玉善, 笠原 義人, 山本 美穂
    2005 年87 巻6 号 p. 479-488
    発行日: 2005/12/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    採取林業を展開してきた中国国有林は,資源保続と地域社会の運営という二つの課題に直面し,国有林多角経営は,これらの課題に直接的に応える要素をもつ。本稿は,その経営が集団経営か家族経営か,国有林区の自然資源由来のものか否かという視点で,国有林多角経営の史的展開を明らかにした。国有林多角経営は,集団経営による失業救済機能を果たし経営本体にも貢献し,1970年代,80年代を通して集団経営を通じた展開が模索された。職工の個別経営部分である家族経営は,文革期の大打撃を経て,1992年の社会主義市場経済体制実施以降に初めて全面的開花の条件が整った。1990年代後半以降の中国林政は,資源の絶対的制約を背景として多角経営に対する注目度を高め,集団•家族多角経営ともに展開方向を模索する段階となっている。国有林経営は,脱林業•多角経営化を志向しつつ,地域社会存続へ果たす役割によって評価を待つことになる
  • ランドサットTMデータと森林調査簿情報を用いた解析
    粟屋 善雄, 西園 朋広
    2005 年87 巻6 号 p. 490-496
    発行日: 2005/12/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    スギの成林への立地環境の影響を理解することを目的に,簡便で汎用性のある方法でスギ人工林での落葉樹混交の実態を解析した。地理情報システム上で調査簿データから森林4クラス(常緑,混交A,混交B,落葉)の分布図(基準データ)を作成した。パターン展開法を用いて1994年6月と1996年9月に観測されたTMデータの地形の影響を除去した後,ISODATA法で25カテゴリに分類し,基準データを参照して森林4クラスを含む7クラスに集約した。さらに森林4クラスを常緑と落葉に統合し,混交率に基づいて小班を常緑,混交と落葉に区分して分類精度を評価するとKHATは0.773だった。常緑と落葉に2区分した分類図は,急斜面ほど落葉樹率が高くて標高800mを越えると落葉樹率が上昇することを示し,斜面での積雪の移動や積雪量と気温がスギの成長を妨げたと考えられた。分類図は混交実態を表すとともに,立地情報を併用すればスギ適地判定などの森林管理に利用可能といえよう。
  • 平田 泰雅
    2005 年87 巻6 号 p. 497-503
    発行日: 2005/12/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    航空機レーザースキャナーによる森林の3次元計測データを用いて,高知県影平市ノ又山国有林ヒノキ人工林における単木樹高と地形因子(尾根からの距離(dr),谷からの距離(df),斜面位置(dr/(dr+df)),斜面傾斜,斜面方位,標高)との関係を調べた。まず,航空機レーザースキャナーデータからの単木樹高の抽出精度を確認するために,0.5haプロットにおいて毎木調査による樹高と航空機レーザースキャナーデータから抽出された樹高を比較した。地上での測定による樹高と抽出された立木の樹高との相関係数は0.94であった。次に,航空機レーザースキャナーデータから研究対象地全体のヒノキの樹高と地形因子を算出した。ここで抽出されたヒノキの樹高を従属変数に,地形因子を独立変数にして重回帰分析を行った。その結果,重相関係数は0.71であり,ヒノキの樹高は,斜面位置と標高に依存することが明らかになった。
  • 吉本 敦, 柳原 宏和, 二宮 嘉行
    2005 年87 巻6 号 p. 504-512
    発行日: 2005/12/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    本研究では,林分の成長を左右する要因探索のための統計的手法を提示した。その方法は,まず,個々の林木の成長データにそれぞれ成長曲線をあてはめ,曲線の係数を推定する。次に,推定された成長曲線の係数値を新たな観測値とし,それらの値を被説明変数,考えられ得る要因を説明変数とした多変量線形モデルを構築する。説明変数の組み合わせを変えることにより,さらに組み合わせの数だけ多変量線形モデルを構築する。最後に,得られるモデル群に対し,交差確認法に基づく情報量規準(CV規準)を用いて,その規準量を最小にするモデルを最適なモデルとして決定し,最終的に成長に影響を与える要因の組み合わせを探求する。この手法の適用事例に,平成15年2月に福岡県八女郡星野村の村有林(無間伐林)で行った林分調査から得られた23年生のスギ(Cryptomeria japonica)30本の胸高直径および樹高の成長データを用いた。分析の結果,胸高直径および樹高の成長に影響を与える要因は,現時点での胸高直径の大きさと半径5m基準円内における周辺林木の距離による重み付き平均胸高直径となった。
  • 伊藤 太一
    2005 年87 巻6 号 p. 513-521
    発行日: 2005/12/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    都市計画手法として展開したゾーニングが,自然地域の計画においても用いられている。だが,保安林やレクリエーションの森指定でも,最近の森林計画における機能区分においても,必ずしも空間条件に限定されないレクリエーションを特定ゾーンに割り振っている。自然公園法では森林などの資源とその管理に関わる保護規制としてゾーニングは用いているが,レクリエーションは土地利用中心のゾーニングにはなじみにくいことを考慮し,2003年の法改正で導入された「立入規制区域」「利用調整地区」があるに過ぎない。このように日本では自然地域レクリエーションのゾーニングは,未発達であることが歴史的分析から明らかになった。一方で,レクリエーション計画のフレームワークであるレクリエーション機会多様性(ROS)概念を検討した結果,利用自体ではなくその機会を提供するセッティングを構成する施設のあり方ならばゾーニングをある程度適用可能であることが示された。この考え方を,アメリカのアディロンダック公園や国立トレイルにおける密度規制やコリドー概念に関わる帯状ゾーニングと併用することによって,歩道や山小屋など施設の配置や規模も管理し,過剰利用問題などに対処することが期待される。
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