日本森林学会誌
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87 巻, 2 号
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  • 井上 友樹, 宮島 淳二, 村上 拓彦, 光田 靖, 吉田 茂二郎, 今田 盛生
    2005 年 87 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2005/04/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    熊本県において実施されている「シカ被害調査」の2000年度および2001年度調査結果と各種GISデータを用いて,人工林剥皮害発生確率予測モデルを構築した。独立変数として地形因子(標高,傾斜),位置的因子(道路からの距離など)および植生因子(林業利用地セル数,耕作地セル数など)を用いた。ロジスティック回帰によるモデルを構築した結果,剥皮害の発生には標高,傾斜および道路からの距離が特に大きく影響していることが明らかとなった。また,樹種および林齢を因子として加えることによってモデルの適合度が向上した。さらに,構築したモデルを用いて熊本県全域の人工林について剥皮害発生確率を予測し,剥皮害発生ポテンシャルマップを作成した。
  • 阿部 聖哉, 梨本 真, 矢竹 一穂, 松木 吏弓, 石井 孝
    2005 年 87 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 2005/04/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    イヌワシの主要な餌動物であるノウサギの生息密度に影響を与える要因を調べるために,糞粒法による生息密度の調査と,森林構造や林床植生の現存量に関する調査を行った。調査の結果,植生繁茂期(7~8月)は生息密度と草本の現存量との間に正の相関が認められたが,積雪期(11~4月)では積雪上の植物の推定現存量との間に相関は認められなかった。また,植生繁茂期,積雪期,展葉期(5~6月)の全ての時期において,生息密度と林冠高との間に正の相関が認められた。以上の結果より,積雪期以外には草本植物現存量がノウサギの生息密度を規定する要因と考えられる。一方,林床植生の現存量を間接的にコントロールし,天敵からのカバー効果も併せ持つ林冠高が生息密度を推定する有効な環境変数であると考えられた。
  • 真板 英一, 鈴木 雅一, 太田 猛彦
    2005 年 87 巻 2 号 p. 124-132
    発行日: 2005/04/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    東京大学千葉演習林袋山沢流域(北緯35°12',東経140°06')において対照流域法による森林皆伐実験が行われた。A流域(0.802 ha)を対照区, B流域(1.087 ha)を処理区とした。地質は新第三紀層に属し,年平均降水量は2,170mm,年平均気温は14.2°Cである。伐採前の植生は両流域ともに約70年生のスギ•ヒノキ人工林で, B流域は1999年春に伐採され,2000年にスギ•ヒノキが植栽された。伐採後3年間のB流域の年流出量は増加した。年増加量は平均で295.9mm/yearであった。また伐採によって基底流出量が増加した。伐採前には寡雨時に流出が停止することがあったが,伐採後には発生しなくなり,流出が途切れなくなった。流況曲線の解析では,豊水•平水•低水•渇水各流出量は伐採後いずれも増加したが,全流出量に占める豊水流出量の割合は低下し,伐採により流出の年間一様性が増す結果となった。
  • 井上 昭夫
    2005 年 87 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 2005/04/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    幹表面積との関連から樹幹形に関する新しい測度を提案した。この測度は,樹幹上でのある位置における樹幹直径と等しい直径をもち,樹高と等しい高さをもつ円柱の側面積に対する幹表面積の比によって与えられる。このことより,提案した測度を「幹表面積に関する形数」と名付けた。スギとヒノキの試料を用いて,これらの形数を求めた。相対高0.4~0.6,0.8および胸高における形数と樹幹サイズ(樹高と胸高直径)との間に有意な相関は認められなかった。相対高0.5,0.6および胸高における形数(κ0.5, κ0.6 および κb)において,スギとヒノキとの問で有意差が認められなかった。κ0.5, κ0.6およびκbの平均値は,それぞれスギで0.903,0.808および0.622,ヒノキで0.902,0.799および0.612であった。これらのことから,提案した測度の中では,κ0.5, κ0.6およびκbが最も有効な測度であろうと考えた。
  • 上村 真由子, 小南 裕志, 金澤 洋一
    2005 年 87 巻 2 号 p. 138-144
    発行日: 2005/04/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    枯死木分解呼吸の環境要因への反応特性を調べるために,呼吸量を自動測定するシステムを開発し,コナラの枯死木呼吸量を2年間連続測定した。日単位の呼吸量は,枯死木表面付近の温度変化に伴い明瞭な日変化を示した。また,降雨による含水率の上昇に伴い呼吸量は急激に減少し,降雨後に徐々に増加する傾向がみられた。呼吸量の季節変動は,温度に対して指数関数的な関係があり,冬期と夏期の呼吸量の差は約8倍であった。同じ温度下における呼吸量のばらつきは主に材の含水率の変化によるものであると考えられ,一降雨から次の降雨までの含水率の変化に対して呼吸量は平均約1.5倍程度の変化をみせた。温度を変数とした指数関数と含水率を変数とした2次式を乗じた関数を用いて日平均呼吸量の推定を行ったところ,呼吸量のばらつきの85%を説明することができ,温度変化に対する呼吸量の季節変化や,含水率の変化に対する呼吸量の短期的な増減の再現が可能であった。このように,枯死木の呼吸量は温度と含水率の時系列変化に伴い,変化幅が約8倍の季節変化と,変化幅が約1.5倍の含水率の変化に伴う短期的な変化と,日変化によって複合的に構成されていることが明らかになった。
  • 稲田 哲治, 前藤 薫, 二宮 生夫
    2005 年 87 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2005/04/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    ニホンキバチのヒノキ生立木への産卵に対する,ヒノキ生立木の生育状態(胸高直径,樹皮厚),ニホンキバチ雌成虫の体サイズおよび昆虫寄生線虫感染の影響を,ニホンキバチの産卵試験によって検証した。線虫の感染によりニホンキバチの蔵卵数は体サイズの小型化によるもの以上に減少し,産卵率も半減した。ヒノキの生育状態とニホンキバチ産卵率との関係は,線虫が感染していないニホンキバチでは相関関係はなかったが,感染したニホンキバチでは負の相関が示唆された。ヒノキの生育状態,ニホンキバチの体サイズおよび線虫感染の有無に対する産卵数と産卵率の重回帰分析の結果,ヒノキの生育状態は産卵数や産卵率の大小に寄与しておらず,線虫感染の有無とニホンキバチの体サイズが産卵に大きく関わっていることが判明した。従って,ヒノキの成長促進によるニホンキバチの産卵回避効果は低いものと考えられる。
  • 黄 発新, 張 変香, 白石 進, S. Shiraishi
    2005 年 87 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2005/04/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    DNA分子マーカーを利用したAcacia mangiumA. auriculiformisの種間雑種の鑑定法を確立した。RAPD分析によりそれぞれの種に特異的なDNAフラグメントをスクリーニングし,その塩基配列情報を基に42個のSCAR(sequence characterized amplified region)マーカーを設計した。これらのマーカーの中に,高い種特異性を有し,異なる表現型(フラグメント長)を示す2個の共優性マーカーが存在した。この2マーカーを利用することにより雑種個体を高い信頼性で鑑定することが可能になった。
  • 黄 発新, A.Y.P.B.C. Widyatmoko, 白石 進
    2005 年 87 巻 2 号 p. 153-156
    発行日: 2005/04/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    Triplex affinity capture法(TAC)を用い,ヒノキゲノムDNA中のCT/GAリピート•マイクロサテライトDNAの濃縮を試みた。TACをpH 5.2の条件下で実施し,得られたDNAフラグメントの塩基配列を基に,濃縮効果を評価した。調べた45フラグメントうち,40個(89%)で3回以上の繰り返し配列が認められ,TACにより高率で濃縮されたことが示唆された。しかし,繰り返し数が10回以上のものは,わずか2クローン(4%強)であった。今後,TAC条件の改良により効率的なマーカー開発が可能であることが示された。
  • 山原 美奈, 河合 昌孝, 大場 広輔
    2005 年 87 巻 2 号 p. 157-160
    発行日: 2005/04/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    コウヤマキのアーバスキュラー菌根の感染形態を明らかにするために,短根の切片を光学顕微鏡で観察した。その結果,宿主の細胞から細胞へと直接伸長する菌糸とコイル状樹枝状体,嚢状体が認められ,Paris-typeの感染形態であることが判明した。比較観察したスギとヒノキの菌根は,それぞれParis-typeとArum-typeであった。
  • 森口 喜成, 後藤 晋, 高橋 誠
    2005 年 87 巻 2 号 p. 161-169
    発行日: 2005/04/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    採種園研究に分子マーカーが利用されることにより,従来技術では制限のあった採種園における構成クローンの同定,園外からの花粉混入率,自殖率,次代に対する各構成クローンの花粉親としての寄与率に関する知見が急速に蓄積されつつある。これらの研究から,数%程度の誤植,30%以上の花粉混入率,5%以下の自殖率が多くの採種園で一般的であることが示された。また,報告された構成クローンの花粉親としての寄与率は,いずれも均等交配から著しく偏っていた。これらの知見から,1)採種園構成クローン以外の混入個体を除去するために,分子マーカーを用いてクローンの配置確認を行う,2)花粉混入率を低下させるために,同樹種の少ない場所に採種園を造成する,着花促進,SMP処理などによって空中花粉中の園内花粉の割合を大きくする,3)自殖率を低下させるために,クローンあたりのラメート数を少なくする,4)均等交配を実現するために,各クローンの雄花着花量を均等化する,開花期の著しく異なるクローンを除去する,といった遺伝的管理が重要だと考えられた。
  • 小松 光, 澤野 真治, 久米 朋宣, 橋本 昌司
    2005 年 87 巻 2 号 p. 170-185
    発行日: 2005/04/01
    公開日: 2008/05/22
    ジャーナル フリー
    森林の特性(広葉樹林/針葉樹林,樹高など)と蒸発散量の関係を明らかにする上で,何が問題なのかを同定し,問題解決のためのプランを作成した。さらに,現在,このプランがどの程度まで達成されているかを明らかにした。森林の特性と蒸発散量の関係を明らかにする上で問題なのは,計測結果の一般性(ある試験地で得られた計測結果と同じものがほかの試験地で得られるかどうか)がわからないということであった。一般性の判断のために,蒸発散量を気象条件とサイト•パラメータの関数として表現したモデルの構築が有効であることを指摘した。そのモデルの具体的構造を示し,モデルの使用に蒸散•遮断蒸発量それぞれについて暖候期の値の検討,季節変化パターンの検討が必要であることを示した。現在までに暖候期の蒸散についての検討が終了し,1)広葉樹林のαは針葉樹林のαより大きい,2)針葉樹林のαは樹高と対応して変化する,という結論が得られていることを示した。
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