日本森林学会誌
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88 巻, 1 号
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論文
  • 花田 尚子, 渋谷 正人, 斎藤 秀之, 高橋 邦秀
    2006 年 88 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    北海道石狩低地帯南部の41~51年生のカラマツ人工林において, 林内への広葉樹の侵入過程を明らかにするため, 施業履歴, 林分構造, 広葉樹の樹種構成, 樹齢, 埋土種子の種組成を調べた。広葉樹の密度は, 林床にササが優占する林分で小さく, ササ類は広葉樹の更新に負の影響を与えていると考えられた。広葉樹の更新個体数は, 間伐後に増加する傾向が顕著であり, 間伐は広葉樹の更新契機になっていると考えられた。また広葉樹の樹種数は, 間伐にともなって階段的に増加しており, 特にギャップ種は, 初回の間伐以降に樹種数が増加していた。埋土種子の種構成は, 広葉樹の樹種構成とは類似しておらず, カラマツ人工林内での広葉樹類の更新には, 種子バンクの寄与は小さいと推察されたが, 埋土種子についてはさらなる検討が必要と考えられた。結論として, カラマツ人工林内での広葉樹の更新には, ササが負の影響を与えていること, 間伐は広葉樹の個体数を増加させるだけではなく, 林内の種多様性も高める効果があること, さらに広葉樹の更新時期や樹種構成には更新特性が強く影響することが示唆された。
  • 西園 朋広, 澤田 智志, 粟屋 善雄
    2006 年 88 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    77年間継続調査の行われた秋田地方のスギ天然林において, 成長量と林分構造の推移を調べた。最終調査時の林齢は244年と推定された。調査期間中に2度の間伐が実施された。間伐後10年前後の時点に林分材積定期平均純成長量のピークが存在していた。これは, 高齢級における間伐によって個体の成長量が一時的に増加したことに起因していた。ピークを迎えた後の林分材積定期平均純成長量は大きく減少して, 1回目と2回目の間伐の間で32.2m3ha-1yr-1から6.1m3ha-1yr-1, 2回目の間伐の後で14.9m3ha-1yr-1から3.7m3ha-1yr-1まで低下した。間伐によって林分構造は大きく変化した。もともと上層木とともに多くの下層木が生育する複層林であったが, 間伐によって, 下層木の多くが除去され, 一斉林に近い森林に誘導されていた。各個体の樹高は限界高に近づき, 伸長成長は減退していたが, 肥大成長は, 伸長成長と比べると大きく減退していなかった。高齢級での材積成長は, 伸長成長よりも肥大成長によってもたらされると考えられた。
  • 田村 明, 栗延 晋, 武津 英太郎, 飯塚 和也
    2006 年 88 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    スギ精英樹クローンについて, 幹材中の炭素貯蔵量に関係する樹高, 胸高直径, 容積密度および炭素含有率の改良効果を試算した。樹高と胸高直径の遺伝相関は0.96と高く, 樹高を改良することで胸高直径も十分改良できることが示唆された。容積密度の遺伝率は0.78と高く, 成長形質と同程度の改良効果が望めるが, 炭素含有率は変異が小さいため (変動係数0.3%), 大きな改良効果は期待できないと考えられた。選抜形質に樹高と容積密度の2形質を用い, 各形質の経済的重み付け値を変動させ, 炭素貯蔵量の改良効果が最大になる選抜指数式を求めた結果, 指数式はI=2.8×樹高+18.87×容積密度であった。上位38%のクローンを選抜し, さし木による普及を想定すれば, 樹幹中の炭素貯蔵量は選抜前の集団平均値と比べて21.4%向上することが予測された。選抜されたクローンは, 容積密度よりも樹高に重み付けされる傾向にあった。
  • 日下部 朝子, 都築 勇人, 末田 達彦
    2006 年 88 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    シベリアは世界最大の森林地帯であり, その森林の炭素収支の評価が急がれている。本研究ではシベリアの亜寒帯林を対象に, 炭素収支評価の重要なパラメータである葉面積指数 (leaf area index, LAI) を, 航空レーザー測距法を用いて広域的に推定する方法を提案した。対象域は中央シベリアを流れるエニセイ河流域で, その支流バクタ川沿いに設置した長さ200kmにわたるトランセクトの森林縦断プロフィールを航空レーザー測距法で計測した。このプロフィールの積分が森林蓄積やLAIとアロメトリー関係にあることを利用して現地実測調査により森林縦断プロフィールに対する蓄積とLAIの回帰を決め, これによりトランセクト全域のLAI分布を推定した。大まかな傾向として, 標高の低下に伴う気温の上昇と永久凍土上の活動層の肥厚を反映して, LAIは上流から下流へと増加しているほか, 地形による活動層の厚さに応じて局所的な変動がみられるなど, 永久凍土とその上の活動層が森林特性を大きく規定していることが明らかになった。本研究のトランセクトはわずか200kmでしかないが, より広範な航空レーザー測距を行えばその生育環境と併せたシベリアの森林の特性が明らかになり, 近い将来懸念される気候変動に対する反応の予測も可能となる。
短報
  • 本間 莉恵, 吉井 エリ, 平 英彰
    2006 年 88 巻 1 号 p. 30-32
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    スギ雄性不稔の交配家系から不稔個体を選抜する期間を短縮するため, 10月にシャーレで発芽させたスギ種子を, 水苔を詰めたビニールポットに植栽し, 人工気象器で培養した。培養した個体は, 4月上旬に温室に移し育成した。7月上旬, 苗に100ppmの濃度でジベレリン処理をして, 花芽の分化を促進した。12月に育成した苗から雄花を採取し, 花粉の有無を調査するとともに, 樹高, 根元径, 枝張り, 雄花の房数, 雌花数を測定した。苗の形状や雄花の着花特性は1ポットあたりの植栽本数によって異なった。1ポットあたり5本以上の植栽では, 苗が小さく, 雄花の着花しない個体, また, 着花しても可稔を不稔と誤判定する可能性があった。しかし, 1ポットあたり4本以下の植栽では, 正常な雄花が着花することから, 筆者等が開発した育苗方法によって, スギ雄性不稔の交配家系からの不稔個体を選抜する期間を著しく短縮できることが明らかになった。
  • 澤口 勇雄, 前田 朋美, 立川 史郎
    2006 年 88 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    IKONOS高解像度衛星画像を用いて高齢アカマツ大径木の樹勢区分とバントおよび輝度値の関係について解析した。DN値はすべてのバンドにおいて健全な個体グループほど高い値を示した。分散分析の結果からいずれのバンドも樹勢間で有意差が認められ, 樹勢区分のためのバンドの優位性はバンド4>バンド2, 3>バンド1の順であった。各バンドのDN値を変量に判別分析により目視による樹勢区分と比較したところ, 変量が増大するにつれて判別的中率は向上した。最高の判別的中率は樹勢の違いが最も大きい樹勢1と樹勢3の81%, 最低は樹勢1と樹勢2の56%だった。
  • 山野井 克己, 遠藤 八十一
    2006 年 88 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    豪雪山地における低木広葉樹林の林分改良のため, 伐採, 植栽および前生樹を利用した簡易積雪グライド抑制工を併用した施業の有効性を検討した。ボイピラミッドと頭上伐採木の組み合わせによるグライド抑制工によって, 最大積雪深が2m以上で斜面傾斜が38°の厳しい立地条件であるにもかかわらず, 施業後のグライド量を2m程度に抑えることができた。このことから, 本施業の有効性が示唆された。本調査地では, グライド抑制工として利用した樹木は萌芽により再生中であることから, 長期にわたりグライド抑制工としての機能を発揮できる。また, 植栽木の樹高が5年後には最大積雪深を超えていることから, 現在の生存本数と成長速度が維持されればグライド抑制機能を発揮できるようになると考えられる。
  • 伊東 宏樹, 佐久間 大輔, 柳沢 直, 白井 宏尚
    2006 年 88 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    京都府南部・京阪奈丘陵の大阪層群上に成立する二次林において, 林分構造とそれに関わる要因について検討した。27方形区を設定して毎木調査を行い, クラスター分析により類型化を行ったところ, 二つの大きな林分タイプが抽出された。一つはコナラを優占種とするタイプで, もう一つはアカマツおよびソヨゴを優占種とするタイプであった。それぞれの位置する土壌条件について比較すると, 前者は, 後者と比較して土壌硬度が大きい場所, すなわち礫を多く含む場所には存在しないことがわかった。樹齢の比較および既存の知見から, コナラは後から侵入もしくは定着したと考えられ, その後の成長速度が土壌条件に依存したことが分布の違いの原因として考えられた。
  • 津田 城栄
    2006 年 88 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    ホルトノキ萎黄病の防除薬剤として有望視されるオキシテトラサイクリン (OTC) の高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いた葉内濃度定量法について研究を行った。OTCはマキルベン緩衝液により抽出した。HPLCによる分析は, カラムにLuna C18 (2) (長さ150mm×内径4.6mm) を用い, イミダゾール緩衝液-メタノール (80:20) を移動相とし蛍光検出器による検出を行った。OTCを樹幹注入した試験木から試料葉を採取し抽出・分析した結果, OTCは良好に分離・検出された。分析試料の調製過程におけるOTCの回収率は90%前後の値が得られ, 検量線の直線性に関しても問題はみられなかった。これらの結果から, 本研究で用いた手法は, 実用的な葉内OTCの定量法であることが示され, ホルトノキ萎黄病葉においてファイトプラズマに有効なOTC濃度ならびに薬害発生濃度の決定など防除法開発への応用が期待される。
総説
  • 佐藤 弘和
    2006 年 88 巻 1 号 p. 50-59
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    土砂流出抑制機能に配慮した森林整備方法に関する知見を得るために, 森林施業と浮遊土砂に関する過去の研究例を整理した。森林伐採の実施や森林整備が不備な場合には, 浮遊土砂濃度などが増加する例が多い。伐採後に増加した浮遊土砂濃度や流出量は, 年数が経過するにつれて徐々に減少する傾向を示す。林道・作業路・集材路などの林内路網は, しばしば崩壊や侵食を引き起こす要因となる。森林施業にともなう車両走行は, 土壌の圧密を引き起こし, 土壌物理性の低下や植生回復の遅れに繋がる。浮遊土砂流出の増加を抑制する森林管理の方法は, 流路沿いの緩衝林帯の保全, ならびにできるだけ林地を攪乱しない施業を行うことである。
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