長伐期林における陽樹冠管理のための定量的な基準を提示する目的で,吉野林業地の38~210年生の林分において,個体の陽樹冠量(陽樹冠直径,陽樹冠長,陽樹冠表面積)と年平均胸高直径成長量(
ΔDBH)の関係を解析した。陽樹冠直径および陽樹冠表面積と
ΔDBHとの間には良好な回帰直線式が得られた。得られた式の信頼性および測定の簡便性等を検討した結果,特に陽樹冠直径(
Dsc)が残存木選木の指標として有用であると結論できた。また,
Dscと
ΔDBHとの関係は林齢の増加にともなって変化しており,この結果は,単位陽樹冠量当たりの直径の成長効率が林齢に沿って変化することを示していた。したがって幅広い範囲の林齢や個体サイズを対象とする長伐期施業においては,林齢等の違いによる
Dscと
ΔDBHとの関係の変化を考慮することが重要であることが明らかとなった。さらに,
Dscと
ΔDBHの回帰直線式から
ΔDBHが0.25~0.54 cm/年(年輪幅が2 mm前後)となる
Dscの推定範囲を求めることができ,74~88%の精度で
Dscから年輪幅が2 mm前後であるか否かを判定できた。これらの結果から,これまで定性的に行われてきた残存木選木に対して,一定の精度を有する定量的な基準を林齢別に提示したといえる。
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