日本森林学会誌
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92 巻, 4 号
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論文
  • 市原 孝志, 高野 定雄, 山崎 敏彦, 政岡 尚志, 板井 拓司, 野地 清美, 松岡 良昭, 小畑 篤史, 鈴木 保志, 藤原 新二
    2010 年 92 巻 4 号 p. 191-199
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    木質バイオマスをボイラ燃料として用いるには乾燥が必要である。本研究は長さ2 mのスギ皮付き丸太をアスファルト舗装された土場で, 方形状および三角形状にはえ積みし, 12月から9月までの約9カ月間, 天然乾燥し, その含水率の推移を分析した。その結果, 約9カ月間乾燥することで平均含水率が約140%から40%まで低下した。方形積みと三角積みの積み方の違いは, 含水率の低下に影響を与えなかった。また, 方形積み, 三角積みともに表層部の丸太が乾燥し, 内部と比較すると含水率で2倍以上の違いがあった。表層の丸太内の含水率の偏りは小さかったが, 内部の丸太内の偏りは大きかった。さらに, 丸太の設置環境によっても乾燥後における丸太内の水分分布に偏りができた。そのため, はえ積みの丸太を含水率の偏りなく乾燥させるためには, 表層部の平均乾燥速度が低下する頃に表層部と内部の丸太を積み替える必要がある。
  • 小谷 二郎, 山本 福壽, 谷口 真吾, 橋詰 隼人
    2010 年 92 巻 4 号 p. 200-207
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    鳥取大学付属フィールドサイエンスセンター「三朝の森」の45年生のミズナラやブナを主とする二次林で, 間伐後21年目 (一部, 20年目) の生育状況を調査し, 間伐効果を検討した。間伐は, 上層間伐方式を採用した。胸高断面積合計の年平均成長量および成長率は, 対照区に比べて間伐区や間伐+施肥区で多く (高く) なる傾向があった。しかしながら, 施肥の効果はみられなかった。単木ごとの間伐直後の胸高直径と胸高断面積の年平均成長量や成長率の関係から, 小中径木ほど間伐効果が高い傾向が明らかで, 対照区に比べて間伐区 (間伐+施肥区) で胸高直径25 cm以上の大径木が増加した。間伐時に大きな直径階での間伐割合が高い林分で, 大径木の本数が増加した。樹種別では, ミズナラ, ブナ, ミズメなどで間伐効果がみられたが, コシアブラやミズキでは間伐効果はみられずかえって間伐区で枯死木が多かった。ミズナラの後生枝の平均本数と間伐後21年目の林分材積の関係は, 有意な負の相関を示した。林冠を構成する大きな胸高直径階での均等で高い間伐率は, 単木ごとの肥大成長を促進すると同時に, 林分材積が増加することで後生枝の少ない林分へ誘導するものと考えられる。
  • 金子 智紀, 武田 響一, 野口 正二, 大原 偉樹, 藤枝 基久
    2010 年 92 巻 4 号 p. 208-216
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    スギ人工林の林況および立地環境の違いが流出特性に与える影響を明らかにすることを目的に, 第三紀凝灰岩を地質とする3小流域 (秋田県長坂試験地: 上の沢・中の沢・下の沢) において, 3水年の流量観測と林況および土壌調査を実施した。各小流域は, スギの植栽後およそ40年を経過した林分で, それらの成長や立木密度, 他樹種との混交度合いなどが異なっており, 流域全体の被覆度に差が生じていた。各小流域の年間損失量は724 mm (上の沢), 861 mm (中の沢), 548 mm (下の沢) であり, 流域間で大きく異なっていた。この違いの一部分は, 各流域における蒸発散量の違いによって生じていると考えられた。また, 中の沢流域で観測された年間損失量は, ハモン式から想定される可能蒸発散量 (640 mm) を大きく上回り, 同流域では深部浸透が生じている可能性が示唆された。土壌調査から求めた各流域の保水容量は104 mm (上の沢), 132 mm (中の沢), 121 mm (下の沢) であり, これらの保水容量の大きさは流出解析から求めた各流域の貯留量の大小関係と一致した。また各流域の流況曲線の形状は, 主に蒸発散量や保水容量の違いを反映していると考えられた。
短報
  • —訪花者排除実験と訪花昆虫の観察による推定—
    国武 陽子, 寺田 佐恵子, 馬場 友希, 宮下 直
    2010 年 92 巻 4 号 p. 217-220
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    アオキ (Aucuba japonica) の花粉媒介様式と主要な花粉媒介者を, 網掛けによる訪花者の排除実験と訪花昆虫の観察から推定した。花序当たりの結果率は, 花序に網 (1 mmまたは3 mmメッシュ) を掛けて昆虫の接触を制限すると, 無処理区に比べて著しく低下したが, 網を掛けて人工授粉を施すと無処理区との差はみられなかった。また, 1 mmと3 mmメッシュの網では, 網掛けの効果に有意な差はみられなかった。以上の結果より, アオキの種子生産は主に虫媒依存であることが示唆された。次に訪花昆虫の同定と体サイズの測定より, 花粉媒介者は, ジョウカイボンおよびゾウムシなどのコウチュウ目や, クロバネキノコバエなどの長角亜目であることが推測された。花粉媒介はこれらの昆虫の機会的な訪花に依存していると考えられる。
  • 伊藤 拓弥, 榮澤 純二, 矢野 宣和, 松英 恵吾, 内藤 健司
    2010 年 92 巻 4 号 p. 221-225
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    本研究では, iPhoneにて樹高測定を行うためのソフトウェアを開発した。iPhoneをはじめとするスマートフォンは加速度センサを搭載した機種があり, デバイスの傾きを測定することができる。この加速度センサを使い三角法の原理を応用することで, iPhoneにて樹高測定が可能である。またiPhoneは優れたユーザインタフェースを有するため, 測定データの保存管理, 編集, 集計, 表示ができる。この機能を利用することで, 内業を行うことなく測定データを測定直後の現場にて即座に集計, 表示させることが可能である。またiPhoneは携帯電話回線や無線LANによって測定データを転送することができる。これらの機能によって森林調査の作業効率を大幅に向上させることができると考えられる。
総説
  • —焼畑・人口増加・貧困・道路建設の再考—
    宮本 基杖
    2010 年 92 巻 4 号 p. 226-234
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    本稿では, 熱帯の森林減少の原因に関する近年の研究動向を整理し, とくにこれまでおもな原因として検討されてきた焼畑・人口増加・貧困・道路建設について研究の進展を概括する。「人口増加と貧困を背景に焼畑が拡大して熱帯林が減少した」という広く普及した通説は, 約20年にわたる研究成果により見直しが進んだ。農地拡大がおもな原因であることに変わりはないが, 焼畑原因説は影をひそめ, 代わって商品作物や輸出用農産物の生産拡大の影響が重要視されている。人口増加と貧困の影響については, 多くの実証研究により検証がなされたものの, 賛否両論で議論が分かれている。道路建設の影響は多くの実証研究で裏付けられており, 道路建設が森林減少を加速する仕組みについては生産物の輸送コストの低下による熱帯奥地の土地収益性 (地代) の上昇が指摘される。地代と土地利用の関係を示すチューネン・モデルが森林減少の説明に有効な概念として近年注目されているが, 他の理論で補完すべき課題もある。
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