日本森林学会誌
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93 巻, 1 号
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論文
  • 三浦 沙織, 行田 正晃, 山本 格, 五十嵐 正徳, 平 英彰
    2011 年 93 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    四分子期に異常が発生するスギ雄性不稔4系統 (福島不稔1号, 福島不稔2号, 新大不稔11号, 新大不稔12号) の発現過程を明らかにするため, 光学顕微鏡, 蛍光顕微鏡, 走査型電子顕微鏡, 透過型電子顕微鏡を用いてそれらの雄花の内部微細構造の観察を行った。小胞子形成過程において, 4系統はすべて正常個体と同様に四分子を形成した。しかし, カロース分解後小胞子に遊離せず, 花粉飛散期には塊状となって花粉は全く飛散しなかった。これらの雄性不稔では, カロースに囲まれている間に形成される外膜の初期外膜内層が発達せず, 小胞子同士が部分的に癒着していた。カロースの分解後, タペート組織からユービッシュ体の放出は認められず, 半透明の無定型物質が放出されそれが増加していった。4系統のスギ雄性不稔性が発現する原因は, 小胞子細胞質とタペート組織が, 花粉壁の外膜を構成する物質を正常に供給せず, 異常な活動を行うためであると考えられた。
  • 深見 悠矢, 北原 曜, 小野 裕, 藤堂 千景, 山瀬 敬太郎
    2011 年 93 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    森林には土石流緩衝機能があることが知られている。しかし, 土石流発生時の条件を模した状態での力学的評価や林分の造成方法に関する研究は少なく, 森林の土石流緩衝機能は不明な点が多い。そこで本研究では, 三つの立木引き倒し試験を行い, 飽和含水状態の土壌と自然含水状態の土壌, 実生更新木と苗木植栽木, 立木密度の違いによる立木の力学的抵抗性の差異を明らかにすることを目的とした。対象樹種は, 順に, カラマツ, コナラ, カラマツである。いずれの引き倒し試験も, 対象木の根元から1 mの高さにワイヤーをかけて重機ないしチルホールで牽引し, 最大引き倒し抵抗モーメントを算出した。試験の結果, 異なる土壌水分条件下において立木の引き倒し抵抗モーメントに差異はないこと, 実生更新木と苗木植栽木の引き倒し抵抗モーメントに差異はないこと, 立木の引き倒し抵抗モーメントは立木密度と負の相関関係にあることがわかった。
  • 陶山 大志
    2011 年 93 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    2002年3月∼2010年3月の8年間, 松江市城山公園でサクラ類ならたけもどき病の発生経過を調査した。調査期間中に調査木113本の6割に感染を認め, 4割が枯死する激害が生じた。本病が激化した要因の一つとして, 根元周囲に施用された木材チップの影響が考えられた。感染・枯死木から分離した菌株のジェネットを体細胞不和合性に基づき識別し, 公園内における本病菌のジェネット分布を推定した。分離70菌株は10ジェネットに分けられた。9ジェネットはジェネットあたりの感染・枯死木が1∼11本であったが, 1ジェネットは27本で, うち25本が約50×75 mにわたる広範囲に分布した。枯死木近くに補植された幼木のうち11本は植栽後2∼4年の短期間で衰弱・枯死し, 近くの枯死木と同じジェネットの菌株が分離された。これらの結果から, 本病菌は胞子によって伝播すると同時に, 栄養繁殖で伝播することが示唆された。また, 270 m離れた木から飛地的に同ージェネットの菌株が分離され, 調査木間で伝染源が持ち運ばれたことが示唆された。
  • 平山 貴美子, 山田 勝俊, 西村 辰也, 河村 翔太, 高原 光
    2011 年 93 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    京都市近郊二次林では遷移が進行し, コジイの優占する森林が広がってきている。本研究は, このような遷移の進行に伴う種構成や種多様性の変化を明らかにするため, アベマキ・コナラが優占する遷移段階中期にあたる落葉広葉樹林と遷移段階後期のコジイ優占林に調査プロットを設けて木本種の種構成と種多様性を調べ, サイズクラスごとに比較した。幹長100 cm以上のサイズクラスでは, 両プロット間で種多様度の差はほとんどみられなかったものの, 種構成が異なっていた。落葉広葉樹林ではコジイ優占林に比べ, 低木, 落葉性, 風散布型樹種の出現率が高くなっていた。これに対し, 小さなサイズクラス (幹長 <100 cm) では, いずれの林分においてもコジイやアラカシといった遷移後期に現れる重力散布型の常緑性の高木種が数多く定着し, 種類似度が高くなり, 種多様度は低下していた。落葉広葉樹林では, 鳥散布型の実生の定着が多くみられ, 種多様度の低下の度合いはコジイ優占林に比べ小さかった。しかしながら, 低木, 落葉性, 風散布型樹種の定着は少なく, このまま放置されれば次第に地域全体としての種多様性が低下していくと考えられた。
短報
  • 木佐貫 博光, 山科 志帆, 中井 亜理沙, 万木 豊
    2011 年 93 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    ミズナラ堅果における散布前種子食昆虫の脱出孔と発根が散布後種子食昆虫の堅果侵入に及ぼす影響を検討した。孔のタイプ (脱出孔, 人工孔, 孔なし) と発根の状態が異なる堅果を, 2009年5月下旬にモミ・ツガ天然生林のミズナラ樹冠下に播き, 1カ月後に散布後種子食昆虫による堅果への侵入の有無を確認した。キクイムシ類は孔や発根の有無のそれぞれに関係なく堅果に侵入したが, 散布前種子食昆虫の脱出孔があると発根堅果に偏って侵入していた。ガ類の侵入は孔の有無に関係なく発根堅果に偏り, 未発根だと人工孔有堅果に偏った。散布前種子食昆虫の脱出孔は, それだけで散布後種子食昆虫の堅果侵入を促進や抑制することはないが, 堅果の発根はガ類の堅果侵入を促進すると推察される。
  • 直江 将司, 池田 武文
    2011 年 93 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    マツ枯れ被害状況と標高・温量 (MB指数) ・地形・方位との関係を明らかにするために, 京都市全域において445箇所のアカマツ林を対象に, 外観的な被害状況を調査した。標高では500 m以上, MB指数では27以下で被害が大きく減少した。被害状況の指標としてはこれら両者に大きな違いはみられなかった。地形別にみると尾根部の被害は山腹部に比べて少なかった。一方, 方位間では被害に大きな違いは認められなかった。MB指数に比べ標高はより簡便に求めることができるため, 標高に基づいた京都市内のマツ材線虫病被害ハザードマップを作成した。ハザードマップから, 京都市では景観上重要なアカマツ林のほとんどが標高500 m未満に分布しており, アカマツ林を存続させるためには, その地域での徹底した防除が必要であることが明らかになった。
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