京都市近郊二次林では遷移が進行し, コジイの優占する森林が広がってきている。本研究は, このような遷移の進行に伴う種構成や種多様性の変化を明らかにするため, アベマキ・コナラが優占する遷移段階中期にあたる落葉広葉樹林と遷移段階後期のコジイ優占林に調査プロットを設けて木本種の種構成と種多様性を調べ, サイズクラスごとに比較した。幹長100 cm以上のサイズクラスでは, 両プロット間で種多様度の差はほとんどみられなかったものの, 種構成が異なっていた。落葉広葉樹林ではコジイ優占林に比べ, 低木, 落葉性, 風散布型樹種の出現率が高くなっていた。これに対し, 小さなサイズクラス (幹長 <100 cm) では, いずれの林分においてもコジイやアラカシといった遷移後期に現れる重力散布型の常緑性の高木種が数多く定着し, 種類似度が高くなり, 種多様度は低下していた。落葉広葉樹林では, 鳥散布型の実生の定着が多くみられ, 種多様度の低下の度合いはコジイ優占林に比べ小さかった。しかしながら, 低木, 落葉性, 風散布型樹種の定着は少なく, このまま放置されれば次第に地域全体としての種多様性が低下していくと考えられた。
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