日本森林学会誌
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93 巻 , 5 号
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論文
  • シカの生息地利用特性と樹木個体の特性に基づく分析
    鈴木 牧, 藤原 章雄, 鴨田 重裕, 前原 忠, 齋藤 暖生, 松井 理生, 井口 和信, 梶 幹男, 鎌田 直人
    2011 年 93 巻 5 号 p. 213-219
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/29
    ジャーナル フリー
    シカ類の剥皮を効果的に防除するためには被害発生リスクの分析が不可欠であるが, 天然林における剥皮発生リスク要因の分析は進んでいない。そこで, 北海道富良野地方の天然林施業地においてエゾシカ剥皮害の発生状況ならびに融雪期におけるシカの痕跡の分布状況を調査し, 樹木個体の属性と周囲の環境条件が個体あたりの剥皮発生リスクに及ぼす影響を調べた。幹あたりの剥皮発生確率は樹種により異なるものの, 概して小径木ほど高かった。特異的に被害率の高いオヒョウでは, 低標高, 高日射量, 凸地形, 生育地近傍の補植林分 (択伐後更新不良地) 率の高さが, 他の樹種でも凸地形と生育地近傍の補食林分率の高さが, 剥皮発生確率に正の影響を与えていた。これらの環境条件は, 融雪期にシカの痕跡 (目撃や足跡) が発見されやすかった場所の環境条件とある程度一致した。この結果から, 本調査地の天然林における剥皮発生リスクは, 融雪期にシカが高頻度で利用する場所において高まると考えられた。
  • 小見山 章, 中川 雅人, 加藤 正吾
    2011 年 93 巻 5 号 p. 220-225
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/29
    ジャーナル フリー
    樹形法則を構造的・力学的に解析した既往のパイプモデルと静力学モデルに基づいて, 日本の冷温帯林を構成する樹木について, 様々な場所や樹種に共通して適用できる相対成長関係が存在するかどうかを検討した。岐阜県の冷温帯林2カ所で, 20種81本の樹木 (最大DBH: 61.9 cm) を伐倒して地上部重と, それらを含む12種19本について根系 (最大DBH: 72.3 cm) を掘りあげて根重を調べた。他の研究者が公表した冷温帯樹種における地上部重と根重のデータと比較対照した上で, 地上部重 (22種157本) と根重 (13種33本) を用いて, 2種類の相対成長式を誘導した。幹比重を使用したモデル誘導型の共通式は, その推定値に地上部重で12.59%, 根重で17.67%の相対誤差があった。これら共通式の相対誤差は, 以前から使用されてきた従来型の通常式の相対誤差 (それぞれ18.62%, 22.25%) より小さかった。提案する共通式は, 冷温帯林で現存量や成長量を非破壊的に求める際に, 場所や樹種に対する汎用性, および推定値の再現性を相対的に高める手段になる。
  • 中間 康介, 太田 徹志, 溝上 展也, 吉田 茂二郎
    2011 年 93 巻 5 号 p. 226-234
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/29
    ジャーナル フリー
    主間伐等の施業を行う際, 用材以外に端材, 枝条, 形質不良材, 切り捨て材等の残材が発生する。近年, 化石燃料価格の高騰等の外部環境の変化により, これらのエネルギー資源としての価値が高まってきつつあるが, 未利用残材収集を考慮した場合の林分経営に関する研究は少ない。そこで本研究では未利用残材収集を考慮した場合の最適林分経営を, 動的計画法を用いて検討し, 最適林分経営戦略とその収支の変化を観察した。一般的な九州地方のスギ一斉林における全木・全幹集材施業を想定し, 残材発生量は丸太歩留率の損失分とし, 間伐に関しては全量を残材とする間伐を選択肢に組み込んだ。残材価格を3.0∼9.0円/kgで変化させたシミュレーションの結果, 最適輪伐期や間伐計画に大きな差はみられなかったが, 残材価格の上昇に従い間伐の内容は全量残材向けの間伐へとシフトしていくことがわかった。林業経営体の経営収支に関しては, 残材価格の上昇に従いSEVは増加し, 残材価格6.0円/kgの場合, 残材収集を行わない場合と比較してSEVが約15∼63%増加した。その効果は主に主伐時の残材収集によるものであり, 間伐由来の残材収集が与える影響は比較的小さかった。
短報
  • 和口 美明, 齋藤 愛, 田中 和博
    2011 年 93 巻 5 号 p. 235-238
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/29
    ジャーナル フリー
    地域や流域といった広い範囲を対象に林地生産力の分布を把握することは, 森林資源を持続的かつ有効に利用する上で極めて重要である。広い範囲を対象に林地生産力の分布を把握するためには, 局所ごとに林地生産力を推定する方法と, その推定方法を広い範囲に適用する方法を併せ持つ必要があり, 前者としてはスコア表の, 後者としては地理情報システム (Geographic Information System: GIS) の活用が考えられる。本報告ではスコア表とGISを活用して林地生産力分布図を作成する方法を紹介した。本作成方法は, 1) 作成手順が合理的で理解しやすい, 2) スコア表がいくつもの地域で既に作成されている, 3) それらのスコア表が採用している多くの環境要因において主題図がGISを用いて作成できる, そして4) 主題図の作成に利用できる基盤データが数多く提供され, かつ容易に入手できる, といった特長を有していることから, 多くの地域に適用できる実用的な方法であるといえる。
  • —京都御苑における被害の実態—
    関根 達郎, 高橋 博幸, 今井 昌彦, 中西 甚五郎, 川津 幸枝, 飯田 尚樹, 山本 昌世, 若林 大一
    2011 年 93 巻 5 号 p. 239-243
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/29
    ジャーナル フリー
    市街地に位置する京都御苑において, 2009年から2010年までブナ科樹木の萎凋病の発生状況を調査した。被害は, 外部から侵入したカシノナガキクイムシによるものと考えられ, 342本の樹木が穿入を受け, そのうち71本が枯損した。穿入木は, 苑内に広く分布した。苑内に生育するブナ科13樹種のうち12樹種にカシノナガキクイムシの穿入が確認され, そのうち9樹種に枯損木が発生した。穿入率の高いシリブカガシは, 穿入木に占める枯損木の割合 (以下, 穿入木枯損率) が低かったのに対し, 穿入率の低いマテバシイの穿入木枯損率は高く, 穿入率と穿入木枯損率に相関はなかった。マテバシイ, スダジイ, アラカシで穿入密度が大きくなるほど穿入木枯損率が上がり, 同じ穿入密度レベルではマテバシイが最も枯れやすかった。多くの樹種で大径木ほど枯損する確率が高く, 大径木におけるカシノナガキクイムシの穿入防止対策の必要性が示唆された。
  • 草野 僚一, 松永 孝治, 倉本 哲嗣, 白石 進
    2011 年 93 巻 5 号 p. 244-247
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/29
    ジャーナル フリー
    スギさし木品種シャカインの苗木および採穂木のクローン分析を簡便なDNAマーカーであるMuPS (multiplex-PCR of SCAR markers) を用いて調べた。本品種の主要クローンであり, 材質特性が類似する3クローンは単一のMuPS型を示した。熊本県内の3苗木生産業者から購入した苗木を調べたところ, 2業者の苗木から複数のMuPS型が検出された。また, 3生産業者の採穂源に植栽されている採穂木を調査したところ, すべての採穂源において複数のMuPS型が検出された。今後, シャカイン材の品質均一性を維持するためには, 採穂源におけるクローン管理の必要性が示された。
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