日本森林学会誌
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94 巻 , 6 号
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論文
  • 千葉 翔, 小山 浩正
    2012 年 94 巻 6 号 p. 261-268
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2013/03/07
    ジャーナル フリー
    ニセアカシアの非休眠種子が更新に貢献する可能性を検証するため, その散布と発芽特性について室内の発芽実験と野外の播種実験を行った。種子散布は9月初旬から12月中旬までの約3カ月におよび, 非休眠種子はその期間を通じて約半数を占めた。室内実験において無処理の非休眠種子は15ºC以上で発芽することが明らかになった。野外の播種においても多くの実生が発生したが, その季節は播種時期によって異なり, 9月と10月の播種では当年の秋に発生したのに対し, それ以降に播種したものは翌年の春に発生した。発芽季節が当年と翌年に分離した原因は, 11月以降の地温が15ºC以下となったので, 非休眠種子は休止状態で積雪下において越冬したためと考えられた。播種翌年の生育期間終了時には, 播種数に対して4.3∼7.1%が生残し, それらの中には高さ1 m以上に到達する個体も現れた。このような大きな個体はほとんどが水平根を形成していた。したがって, 洪水等の攪乱により形成された裸地に散布された非休眠種子は, 当年の秋あるいは翌年の春に発芽し, 当年生のうちから水平根を展開して根萌芽を発生させることで, 素早く新規の群落を形成できると推測された。
  • 當山 啓介, 龍原 哲, 白石 則彦
    2012 年 94 巻 6 号 p. 269-279
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2013/03/07
    ジャーナル フリー
    林業収益に影響を与える多数の条件因子を柔軟に扱える単一林分経営シミュレーターを構築し, 収益性確保のために有利な条件や間伐体系・伐期の探索を行った。伐出作業には車両系作業システム, 対象森林は山形県のスギ人工林を想定した。1%といった低い割引率を想定する際は, ほぼ全ての条件下において計算上の上限である110年を伐期とする場合に最も高い収益性を示した。高い割引率においては, 土地期望価が負となって再造林の動機づけが困難となる場合がほとんどであった。間伐体系については, 利用間伐を1回のみ行うのが最適だとした場合が最も多く, 利用間伐3回が最適となる条件は道の開設維持費を含む伐出条件や補助制度が有利な場合に強く限定された。皆伐を避けて利用間伐を多回数繰り返すという現政策で推進されている森林管理方針は, 費用のかかり増しがあるため収益面で有利といえない状況が多いと考えられる。
特集「森の微生物とその運び屋の知られざる関係」
巻頭言
総説
  • 前原 紀敏
    2012 年 94 巻 6 号 p. 283-291
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2013/03/07
    ジャーナル フリー
    マツ材線虫病の病原体であるマツノザイセンチュウは, マツノマダラカミキリ成虫によってマツ類枯死木から健全木へと伝播される。このマツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリの関係には, 菌類が深く関わっている。すなわち, 材内菌類が枯死木におけるマツノザイセンチュウの密度に影響を及ぼす結果, マツノマダラカミキリがその枯死木から持ち出すマツノザイセンチュウの数が, これらの菌類に大きく左右される。また, 昆虫病原菌がマツノマダラカミキリに感染すると, カミキリムシ虫体から健全木へのマツノザイセンチュウの伝播が影響を受ける。そして, これらのことが最終的に, マツ材線虫病という流行病の動向を左右しうることになる。そのため, 環境への影響が少ない防除法として, 菌類をうまく制御し利用する防除法が, マツノザイセンチュウおよびマツノマダラカミキリに対して開発されつつある。
  • 相川 拓也
    2012 年 94 巻 6 号 p. 292-298
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2013/03/07
    ジャーナル フリー
    昆虫類には体内に微生物を宿し, その微生物と共生関係を築いている種が数多く存在する。ボルバキアは昆虫を含む節足動物や線虫類に広く感染している細胞内共生細菌で, 細胞質不和合, 雄の雌化, 雄殺し, 産雌性単為生殖などの方法で宿主生物の生殖機能を操作し, 自らを効果的かつ急速に宿主個体群中に広めてゆく。これまで, マツ材線虫病の病原体であるマツノザイセンチュウを媒介するマツノマダラカミキリからもこのボルバキアの遺伝子が検出されていたことから, マツノマダラカミキリにもボルバキアが感染していることが示唆されていた。ところが, その後の研究によって, ボルバキアがマツノマダラカミキリに感染しているのではなく, ボルバキアの遺伝子だけがマツノマダラカミキリの常染色体上に転移していることが明らかとなった。この事実は, マツノマダラカミキリに感染していたボルバキアは, 自らのゲノムの一部を宿主に残し, その後, 宿主から消え去ったことを示唆している。本稿ではこれまでの研究で明らかにされたマツノマダラカミキリとボルバキアの間の特異的な関係を詳しく紹介するとともに, それらの知見から導かれる今後の研究の方向性についても議論する。
  • 神崎 菜摘, 竹本 周平
    2012 年 94 巻 6 号 p. 299-306
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2013/03/07
    ジャーナル フリー
    昆虫嗜好性線虫と媒介昆虫との生態的関係の進化に関して, 植物病原性の獲得という観点から考察した。マツノザイセンチュウ近縁種群 (Bursaphelenchus 属 xylophilus グループ) はヒゲナガカミキリ族のカミキリムシ類に便乗して移動分散を行う昆虫便乗性線虫であるが, グループ内では系統的に新しいと考えられるいくつかの種, マツノザイセンチュウ, ニセマツノザイセンチュウ, B. firmae が植物体, 主にマツ属植物に対して, 程度の違いはあるが病原力を有している。一方で, より起源の古いB. doui のように, これらとは非常に近縁でありながらも病原性がないと考えられる種も知られている。このような線虫に関して, 媒介昆虫の生活史特性を比較したところ, 植物病原性のある線虫種を媒介するものは, その生活史において, 樹木の健全な組織に接触する機会が多いということが明らかになった。また, マツノザイセンチュウ近縁種群以外のBursaphelenchus属線虫でも同様に, 植物病原性を持つ種は媒介昆虫により健全な組織に接する機会が多いことが示唆されている。これらのことから, このグループの線虫の病原性は, 健全な植物体に侵入し, そこで生存する能力に由来し, 媒介昆虫の生活史特性に依存して選択されると考えられた。
  • 津田 格
    2012 年 94 巻 6 号 p. 307-315
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2013/03/07
    ジャーナル フリー
    Iotonchium属線虫は担子菌類の子実体 (きのこ) を利用する線虫の一群である。その生活史には子実体を利用する菌食世代とキノコバエ科昆虫に寄生する昆虫寄生世代が存在する。本属の線虫はこれまでに全世界で 11種が報告されているが, その生活史の詳細が明らかになっているものは5種のみであり, そのうちの4種が日本国内から報告されている。Iotonchium ungulatumはヒラタケ白こぶ病の病原体であり, ヒラタケ属菌の子実体のひだに線虫えいを生じさせることで知られているが, それ以外の線虫では宿主菌の子実体に線虫えいを生じさせることはなく, その子実体組織内に棲息する。Iotonchium属線虫はキノコバエ科昆虫と密接な関係を持っていると考えられ, その近縁種と思われる化石種がキノコバエ化石とともに琥珀内から発見されている。本稿ではこれらの生物群が関与する三者間相互関係について詳述するとともに, その進化的関係や今後の研究の課題についても議論する。
  • 升屋 勇人, 山岡 裕一
    2012 年 94 巻 6 号 p. 316-325
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2013/03/07
    ジャーナル フリー
    キクイムシ類には非常に多様な菌類が随伴している。これらの菌類は分散をキクイムシに強く依存することで生存, 繁栄してきた。その中で宿主樹木に対して病原性を有する種類もいくつか知られている。特に Ceratocystis およびOphiostoma属といったオフィオストマトイド菌類は宿主樹体内の健全部位に侵入し, 結果的に宿主組織が破壊される。キクイムシとオフィオストマトイド菌類による樹木の枯死機構には大きく分けて二つのタイプが存在する。一つはマウンテンパインビートルやスプルースビートルに代表される大量穿孔 (マスアタック) により樹体内に菌が持ち込まれ, 枯死するタイプで, もう一つは, ニレ類立枯病のようにキクイムシによる後食加害に伴い菌が樹体内に侵入し, 全身性の萎凋症状が引き起こされるタイプである。両者はキクイムシと随伴菌オフィオストマトイド菌類による樹木の枯死という一見同じシステムであるが, 全く異なるシステムの樹木枯死被害を引き起こしている。
  • 遠藤 力也
    2012 年 94 巻 6 号 p. 326-334
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2013/03/07
    ジャーナル フリー
    森林に棲息する甲虫には多様な酵母が関連している。糸状菌に比べるとあまり注目されてこなかったが, 甲虫の生活史に密接に関連していると考えられる酵母が存在する。そういった酵母は, 森林生態系の「重要だが見過ごされてきた」構成員といえるだろう。本稿では森林に棲息する甲虫のうち9科と1グループ (タマムシ科, ナガシンクイムシ科, カミキリムシ科, ハムシ科, クワガタムシ科, ケシキスイ科, ナガキクイムシ科, オサゾウムシ科, キクイムシ科, キノコムシ類) を取り上げ, それらの関連酵母について紹介するとともに, 酵母-甲虫の共生関係を論じる。昆虫に関連するものを含めて自然界から見出される酵母の研究は, 主に分類・同定や種の記載に終始するきらいがあった。しかし分子生物学的手法の発達や遺伝情報のデータベースの整備によって, 酵母の種の識別は容易になりつつある。こういった背景から, 甲虫やその関連基質から見出される酵母の研究は, 関連生物の相互関係をより包括的に解き明かすものになっていくだろう。
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