日本森林学会誌
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95 巻 , 5 号
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論文
  • 井上 昭夫, 高岡 華子, 溝上 展也, 太田 徹志, 作田 耕太郎, 山本 一清
    2013 年 95 巻 5 号 p. 245-252
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/13
    ジャーナル フリー
    帯状伐採地における光環境の簡単な推定モデルを誘導した。光環境を表す測度として天空率を用いた。モデルを誘導するために, 以下の四つの仮定を設けた。1) 伐採帯の方向は斜面に対して平行である。2) 伐採帯の幅は一定, 長さは無限である。3) 傾斜角は一定である。4) 保残林分の樹高に等しい高さの壁が伐採帯の両側に直立している。天空率の推定に必要な変数は, 帯幅, 保残林分の樹高, 伐採帯内での位置および傾斜角であった。六つの帯状伐採地において, モデルによって推定した天空率と全天空写真によって実測した天空率とを比較した。六つのうち四つの帯状伐採地において, 天空率の推定値と実測値との間に有意な差はみられなかった。しかし, 他の二つの帯状伐採地では過小推定であった。これは保残林分の樹冠を通して伐採帯内に光が入射しないことを仮定したためと考えられた。モデルによるシミュレーションの結果, 帯状伐採地の光環境を推定する上で, 傾斜角は無視できない変数であることがわかった。ここで提案したモデルは, 帯状伐採地における光環境を簡便に推定することを可能にするので, 帯状複層林施業の指針を作成する上で有用である。
  • 金谷 整一, 東 正志, 臼井 陽介, 川口 エリ子, 山川 博美, 秋庭 満輝, 浅野 志穂
    2013 年 95 巻 5 号 p. 253-258
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/13
    ジャーナル フリー
    平成23年1月の新燃岳噴火から1年後の霧島山系におけるアカマツの枯死状況を明らかにするため, 84カ所の調査地点を設置してその枯死率を調査した。また調査地点とその近傍のアカマツ枯死木117個体の周辺における火山灰の堆積深を記録し, それらの枯死木からマツノザイセンチュウの検出を試みた。調査地点の多くは枯死率20%以下で堆積深は20 cm未満であったが, 降灰方向にあたる登山道3地点での堆積深は25 cm以上で枯死率は60∼100%に達した。また, 登山道沿いのどの枯死木からもマツノザイセンチュウは検出されなかった。マツノザイセンチュウが検出された枯死木86個体は, 概ね標高950 m以下に分布し, 火山灰の堆積は浅かった。以上の結果は, 大量の火山灰の堆積がマツ材線虫病とは無関係にアカマツの枯死をもたらすことを示唆する。ただし, 火山灰の堆積被害を受けたアカマツ林の周辺に, マツ材線虫病によって枯死したアカマツ枯死木が分布していた。このことから, 被害を受けたアカマツ林の天然更新による植生回復に向けて, 被害地周辺に残存するアカマツからの種子散布を確保するためマツ材線虫病への適切な対応が急務であると指摘した。
  • 明石 信廣, 藤田 真人, 渡辺 修, 宇野 裕之, 荻原 裕
    2013 年 95 巻 5 号 p. 259-266
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/13
    ジャーナル フリー
    天然林におけるシカの影響を評価するには, 森林の種組成や構造の違い, 剥皮や枝葉の採食など影響の多様な形態を考慮する必要がある。また, 広域の調査には多くの関係者が簡便かつ客観的に評価できる手法が望ましい。そこで, シカの食痕や足跡等に関する簡易なチェックシートを用いた調査を実施した。チェックシートは林野庁北海道森林管理局の森林管理署職員によって記入され, このうち天然林を対象とした1,371件を解析に用いた。シカの食痕等に関する10項目の回答を用いて多重対応分析を行ったところ, 各地点のスコアはシカが多い, 少ない, わからないという三つの方向を含む平面上にプロットされた。第1主成分は狩猟者によるシカ目撃効率 (SPUE) と有意な相関があった。食痕の有無や不嗜好植物の量は「わからない」とする回答が多く, 著者らが同一林小班内で確認した結果と比較したところ, 食痕があるとする回答が少なかったことから, 森林管理署職員の回答には食痕の見落としの可能性が示唆された。第1主成分のスコアをもとに, クリギング法によって推定された北海道全体の森林における評価結果は, 従来の情報と比較して, 妥当なものと考えられた。
  • 久留 景吾, 恩田 裕一, 河守 歩, 加藤 弘亮
    2013 年 95 巻 5 号 p. 267-274
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/13
    ジャーナル フリー
    福島第一原子力発電所の事故により放射性物質が降下した福島県内の林相の異なる森林3地点を対象に, 樹冠から林床へ降下するリターを通じた放射性セシウムの移行の特徴を明らかにした。事故後4カ月目から11カ月間, 定期的にリターの134Csおよび137Csの放射能濃度を測定し, 降下量の解析を行った。リターの放射能濃度は総じて落葉広葉樹-アカマツ混交林よりもスギ人工林で高い値を示したのは, 事故発生時に広葉樹が落葉していたために, 飛散した放射性セシウムの多くが広葉樹の樹冠を通過して林床へ降下した結果と考えられる。一方, スギ人工林ではリターに伴う放射性セシウム降下量の累積値が大きく上昇し続けており, 調査終了時でも樹冠に放射性セシウムが相当量残存していることが確認された。2011年10月以降各林分でのリターの放射能濃度が概ね横ばいに推移する中, 放射性セシウム降下量は樹冠からのリター降下量に大きく影響されていることが明らかとなった。今後は降下するリターに加え, 樹冠における生葉の鉛直分布や林床でのリターの平面分布, 林内雨や樹幹流などを含めて総合的に放射性セシウムの移行機構を解明していく必要がある。
短報
  • 石田 仁
    2013 年 95 巻 5 号 p. 275-279
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/13
    ジャーナル フリー
    岐阜県大垣市において林業体験に参加していた小学1年生の女児が, 頭部にスギの落枝 (長さ3.5 m , 重さ5.4 kg) の直撃を受け死亡した。事故原因となった落枝は, こぶ病に罹患した生枝で, 最大瞬間風速約10 m/sの強風下, スギ大径木の地上高23 mの位置で折損したものであった。事故が発生した林分はスギとヒノキの混交する島状の人工林で, スギの大径木 (胸高直径 40 cm以上) の68%がこぶ病に罹患していた。同林分の林床では長さ1.5 mを超える大型の落枝が207本/ha記録された。すべての大型落枝はスギ大径木の5 m以内に落ちており, こぶ病に罹患した大径木の付近に集中分布していた。強風下, スギ大径木の直下では高い地点から大型の枝が折れ, 折損部を下方に向けて落下する可能性があるため非常に危険である。林冠木がこぶ病に罹患している場合, 林床に大型の落枝が多く認められる場合は, さらに警戒が必要といえた。
総説
  • 今木 洋大, 小金澤 正昭, 小池 伸介
    2013 年 95 巻 5 号 p. 280-290
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/13
    ジャーナル フリー
    電子付録
    ツキノワグマによるスギやヒノキ等の植栽木への樹皮剥ぎ被害が各地で問題となっており, 対策が急務である。各地の被害現状調査とこれまでのツキノワグマの生態学的知見から被害発生メカニズムに基づく対策を講じる基盤ができつつある。本論では, 米国太平洋岸北西部における期間限定給餌プログラムを含めた総合的な樹皮剥ぎ被害対策を検証し, 両地域でのクマ類の生態および樹皮剥ぎ被害の比較により, 日本における期間限定給餌プログラムによる被害対策の可能性を議論した。日本でこれまで考えられてきた樹皮剥ぎ被害の各要因を検討したところ, これまでの研究成果および米国での研究成果と考え合わせると, 食物資源説の立場をとることで, 比較的容易に樹皮剥ぎ発生要因を説明することができる。そのため, ツキノワグマの食物環境が劣化する特定の時期に, 人為的にツキノワグマの栄養学的環境を操作する期間限定給餌プログラムは, 米国と同様に日本においても効果を発揮する可能性があると考えられた。ただしプログラムの効果を検証するための研究を先に挙げた仮説に基づき行うこと, 野生動物に対する給餌の社会的是非, 給餌の乱用防止の確認などが事前の作業として必要である。
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