日本森林学会誌
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95 巻, 6 号
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論文
  • —新疆農業大学と岩手大学における調査事例—
    艾海提江 买买提, 比屋根 哲, 都里昆 啊合买提
    2013 年95 巻6 号 p. 297-304
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    本研究は, 今後の中国の都市緑化のあり方を考えるための基礎的な研究として, 新疆農業大学 (中国) と岩手大学 (日本) の大学生を対象に, 彼らの自然・緑地に対するイメージや評価について把握し, 両者の違いについて検討したものである。調査は, 新疆農業大学の学生206名と岩手大学の学生200名を対象に, 自然の風景を描画させる調査, 緑地景観の写真のイメージを測定するSD法による調査, 写真の印象を尋ねる記述調査, 提示した写真を比較し最も好きな写真を選定させるAHP法による調査を, 教室内で一斉に指示し記入するアンケート調査で実施した。調査の結果, AHP法, SD法, 記述調査のいずれの結果でも, 日本の里山景観が中国の人々にとっても好ましい景観であることがわかった。また, 記述回答の分析の結果, 新疆の学生は農村並木について日本の学生ほど「人工的」との表現を含む回答をしていなかったこと, また描画調査では, 新疆の学生は日本の学生よりも「人」や「道」等の人工物を自然の絵の構成要素として描いている割合が多かったこと等から, 新疆の学生は岩手の学生よりも「人と自然との一体感」が強い可能性があると考えられた。
  • 平岡 裕一郎, 重永 英年, 山川 博美, 岡村 政則, 千吉良 治, 藤澤 義武
    2013 年95 巻6 号 p. 305-311
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    無下刈による雑木からの被圧と除伐を経たスギ挿し木クローンの樹高と根元直径の成長を, 階層ベイズモデルで解析した。モデルは成長式の微分型を基に, 応答変数を年間成長量, 説明変数を期首サイズ, 被圧指数とその係数および除伐後の個体の無被圧個体に対する成長量の割合で構成した。各要因に平均値としての固定効果とクローンの変量効果を含めた。被圧指数は, 対象木から半径R以内かつその樹高に対する相対高β以上の雑木の梢端を見上げる受光角の和とした。偏差情報基準 (DIC) の結果から, Rとβはそれぞれ1.5 mと0.75とした。推定した固定効果から, 根元直径の成長は樹高よりも雑木による被圧を受けやすく, 除伐後の回復が速い傾向がみられた。クローンの変量効果から, 両形質で成長曲線の初期勾配および最大サイズにクローン間差がみられた。樹高成長は落葉樹による被圧に対する反応と解除後の回復の速さにクローン間差がみられたが, 根元直径には認められなかった。クローンごとの初期勾配と成長回復の速さの間に弱い正の相関がみられた。以上から, 下刈り省力化に向くクローンの特性について議論した。
短報
  • 今城 香代子, 江崎 功二郎
    2013 年95 巻6 号 p. 312-314
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    我々は, 樹幹表面に分布するカシノナガキクイムシ (以下, カシナガ) の穿入孔を濡らしたタオルでカバーするだけで, カシナガの成虫を捕獲できることを明らかにした。2012年10∼12月の間, カシナガの穿入木3本の地際部にタオルを設置したところ, 日当り平均13.3頭/m2の成虫が継続して捕獲された。カシナガの坑道が穿入孔からタオル内部に延長され, タオルの回収によってそこに滞在する成虫が捕獲された。成虫の性比は著しくオスに偏り, 12月に捕獲されたオス成虫のうち, 親は24.0%であった。冬前にオス親を除去することで繁殖成功度を下げる効果が期待される。
  • 五名 美江, 蔵治 光一郎
    2013 年95 巻6 号 p. 315-320
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    森林再生の初期段階とその後約60年が経過して森林再生がある程度進んだ段階で, 出水時のピーク流出係数 (fp) が森林再生に伴ってどのように変化したのかを定量的に解析した。東京大学演習林生態水文学研究所穴の宮流域を対象とし, 解析期間を1936∼46年の11年間 (前期) と1990∼2011年の22年間 (後期) として, fpと雨の降り始めからピーク降水量の開始時刻までの降水量 (Pi), 流域の湿潤状態の指標である初期流出量 (Qi) との関係を調べた。森林状態に関係なく, Pi が増加するとfpも増加する関係にあることがわかった。一方, fpQiには明瞭な関係はなかった。同じPiに対するfpの最大値は, Piが0, 25, 50 mmのとき, 後期は前期のそれぞれ53, 45, 42%に減少することがわかった。森林が回復した後期では, 総降水量が401.5 mmの東海豪雨においても, fpは1を大きく下回る0.58にとどまった。
総説
  • —森林管理による蒸散量の変化を評価するために—
    篠原 慶規, 鶴田 健二, 久米 朋宣, 大槻 恭一
    2013 年95 巻6 号 p. 321-331
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    近年, 水源涵養が, 針葉樹人工林の間伐や広葉樹林化, 竹林の伐採といった森林管理の主要な目的の一つとして位置付けられている。しかし, 森林の水資源量を評価する上で必要な蒸発散量の計測例が不足しており, 森林管理に伴う水資源量の変化は十分には評価できていない。そこで本総説では, 蒸発散量の主要要素である蒸散量の計測を促進するために, 蒸散量計測法の一つである樹液流計測法について, 計測原理や計測時の注意点について取りまとめた。まず, 森林管理に伴う蒸散量の変化を把握する上での樹液流計測法の有効性を他の蒸散量計測法と比較することで示した。次に, 樹液流計測法を用いた場合の単木蒸散量の算出方法, 単木蒸散量から林分蒸散量へのスケーリングアップの方法について既往の研究例を基に説明した。最後に, 今後, どのような森林でより計測を行う必要があるかを論じるために, 国内で樹液流計測法を用いて計測された林分蒸散量を取りまとめた。その結果, カラマツ人工林, 広葉樹林, 竹林では, データの蓄積がほとんど進んでいないこと, スギ・ヒノキ人工林では, 林齢60年以上や20年以下のデータ蓄積が望まれることが明らかとなった。
  • 真坂 一彦
    2013 年95 巻6 号 p. 332-341
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    侵略的外来種ニセアカシアについての言説を整理し, 社会心理学的な視点から検討した。ニセアカシアは窒素固定菌と共生することで土壌に窒素をもたらし, 林内に外来の好窒素性植物を繁茂させ, 在来種を駆逐すると説明される。しかし, 報告されている調査事例は因果関係と相関関係の取り違えという試験設計上の問題をかかえ, ニセアカシアの影響を評価できない。一方で, 在来樹種の林内の種多様性と大きな差異がないという報告もある。ロジックに不備がある説明が受け入れられる背景には, 「仮説確証型の情報処理傾向」に基づく「選択的認知」が指摘できる。ニセアカシアの侵略性を紹介する資料の中には明瞭な虚偽記載も認められた。河川敷やクロマツ海岸林への侵入は, 人為的な土地改変や植生管理の停止という影響が大きい。人畜等への毒性については, 事例が限定的なうえに断片的な情報も多く, 「偶然の過大評価」や「証拠隠し」が疑われた。ニセアカシアは養蜂業を通して果樹野菜の花粉交配に貢献している。ニセアカシアの管理においては, 公正な情報に基づいた議論による社会的合意が必要とされる。
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